永久欠番のガバナー
久慈勝範 (岩手県・水沢LC)

当クラブに40年間在籍され、2012-2013年度には332-B地区ガバナーを務められた千葉龍二郎氏が退会されました。結成65年の当クラブが輩出した2人目の地区ガバナーであり、クラブの精神的支柱として活躍されてきた方です。奥様の介助に専念したいという強い意志による苦渋の決断であると十分理解しつつも、私を含め周囲が受けた衝撃は非常に大きなものでした。千葉ガバナーは永久欠番の選手のごとく唯一無二の存在で、現役として後進の指導を続けてくださるという「思い込み」がありました。ですからクラブ全体が、還暦を過ぎてもいまだ悟りを得ず、千葉元地区ガバナーの鷹揚(おうよう)な人柄に甘え、まさに父母のすねをかじる子どものような「甘えの構造」に支配されていたと、この衝撃によってようやく気付かされることになりました。
2月26日、クラブメンバーの退会としては異例の「お疲れ様会」が、メンバーの経営するホテルでにぎやかに開催されました。会員数46人の当クラブで、例会でさえ出席者20人程度のこともある中で、有志の会という設定ながら37人が参集しました。当日は千葉ガバナーご夫妻を囲んで、2012年度当時の地区キャビネット役員を始め、元地区ガバナーを慕う面々が懐かしい話で大いに盛り上がりました。最後はライオンズローアの雄叫(おたけ)びを上げ、「また会う日まで」を参加者全員で輪になって大合唱してお開きとなりました。
お疲れ様会では、古参会員は「ガバナーが出たあの頃はキャビネットの役職を受け、クラブが一丸となってがむしゃらにがんばっていたなあ」と懐かしがり、若手会員は近年のクラブの有り様とは一味違う歴史を知ることになりました。人は目標があると一生懸命にがんばれますが、それを達成した瞬間から徐々にダラダラとして緊張が緩んでしまうもの。それが「人の性(さが)」という訳です。「火宅のたとえ」のごとく、火事の危険が迫っているのにそのことに気付かず遊びに興じて走り回る子どもたちのように、私たちは知らず知らずのうちに緊張感を欠くことが多くなっていたかもしれません。「いざという時に頼れる親が、いつまでも居てくれるわけではない」ということを、かみしめる会でもありました。
私たちは大きく温かい親の庇護(ひご)から卒業し、自分で考え行動しなければなりません。私はゾーンチェアパーソンの役職に就きゾーン内の姉妹クラブを訪問した際、結成当初は同じ根から枝葉を広げているにもかかわらず、クラブ運営とそこに流れる空気感の違いに新鮮な驚きを感じたことがあります。また、会員数が多い大所帯のクラブで、それぞれの会員の顔が見えにくく一人ひとりにかかる期待度と責任感が薄れてしまい、全員を同じ方向に導くことが容易ではなさそうに思えたこと、一方、小規模クラブでは会員一人ひとりの顔が見え、運営上の苦労はあるにしてもやりようによってはクラブが一体となって事業を行える素地が備わっているとも思えたこともあります。つまり、「伝統」とか「会員数」そのものにはさほどの意味はなく、そこに所属する会員の意識の在りどころが最も重要であると考えます。
自分を律することすら出来ない意志薄弱な私が、観念的にあたかも悟りを得たように振る舞うこと自体、思いあがりと誹(そし)りを受けることかもしれません。しかし今こそ、残された私たちの意識が「目覚め」、少しずつでも成長を続けていくことを期待するものです。
千葉龍二郎元地区ガバナー、40年間のライオンズ生活、本当にお疲れさまでした。これからも私たちが心の中で、あなたを「永久欠番のガバナー」として標榜(ひょうぼう)することをお許しください。
(テールツイスター/99年入会/66歳)
2025.04更新