獅子吼
20年の時を超えて
法被がつないだ奇跡
熊宮敏紘 (熊本葵LC)

2月10日から13日、アメリカ・イリノイ州セントチャールズにあるQセンターで開催された第一副地区ガバナー・セミナーに出席しました。世界各国から集まった750人の第一副地区ガバナーが4日間にわたって熱心に研修に励み、最後の夜は安堵(あんど)と別れを惜しむ気持ちが入り混じる中、和やかな懇親会が開かれていました。
その懇親会の最中、私の携帯電話が鳴りました。「337複合地区の人を探している人がいる」というのです。詳しい話を聞くと、20年前の青少年交換(YE/現YCE)で来日した交換生にプレゼントされた法被を持ってきたアメリカの第一副地区ガバナーが、「法被の経緯を知っている人に返したい」と話しているというのです。
私は20年前に地区のYE委員を務めていました。その話を聞いた瞬間、記憶の奥底に眠っていた光景が鮮明によみがえりました。それは、私が来日生に法被をプレゼントした時の光景です。すぐに、その人物に会いに向かいました。そこにいたのは、穏やかな笑顔を浮かべたウィスコンシン州のアン・マディソン第一副地区ガバナーでした。彼女の手には、丁寧に畳まれた見覚えのある法被がありました。
「この法被を、20年前に九州で交換生にプレゼントした方を探しています。このまま私が持っていても、いずれ法被の経緯を知る人がいなくなってしまう。今回のセミナーで必ず日本人に会えると信じて、この法被を持ってきたのです」
彼女はそう話しました。手渡された法被は20年の歳月を感じさせないほど状態が良く、まるで新品のようでした。その様子から、この法被が大切に扱われていたことが一目で分かりました。
「この法被は、私がお渡ししたものです」
私はそう伝えました。彼女は驚きと喜びが入り混じった表情で、私の手を固く握りしめました。
「本当にあなたなのですね! まさか、こんな形でお会い出来るとは!」
彼女は興奮した様子で、20年前の交換生と法被、クラブとの関係について語ってくれました。日本でのホームステイを終えてアメリカに帰国した交換生は、プレゼントされた法被を携えて派遣元のクラブに日本での経験を報告したそうです。クラブはそれを大切に保管し、先輩から後輩へと受け継がれていましたが、いつかプレゼントしてくれた人に返したいと願っていたと言います。
「この法被は、私たちのクラブにとって日本との大切なつながりを象徴するものです。あなたにお返し出来て本当に良かった」
彼女はそう言って、再び私の手を固く握りました。
私たちはこの奇跡的な出会いを祝い、これからの交流を約束しました。20年の時を超えて、法被がつないだ奇跡の絆。それは、国境を越え、世代を超えて、人々の心を結びつける温かい物語です。そして私にとって、法被との再会は人と人とのつながり、そしてYCEのすばらしさを改めて実感する出来事となりました。
2025.03更新(337-E地区第一副地区ガバナー/熊宮敏紘)