海外の活動 多様性を推進し
独自の才能を生かす

多様性を推進し独自の才能を生かす

カナダにあるスペシャルティクラブ、モントリオール・オーティズム・コミュニティー ライオンズクラブ(MACLC)は、インクルージョンの推進に特に力を入れている。クラブには30人以上のメンバーが所属しており、その多くはニューロダイバーシティー*の特性を持つ。自閉症の息子がおり、自閉者の権利擁護活動に携わるロリ・アン・ゼマノビッチ(後にクラブ会長に就任)が、地域のニューロダイバーシティーの当事者やその生活支援をしている人の中に可能性を見いだし、2021年にMACLCを結成した。同クラブではそれぞれが自分らしくあることをたたえると共に、社会の意識を高め受容を促すことで、メンバーが抱いていた孤独を団結に変えることに成功した。
*ニューロダイバーシティー:ニューロ(脳・神経)とダイバーシティ(多様性)を組み合わせた造語で、「脳や神経、それに由来する個人レベルでのさまざまな特性の違いを多様性と捉えて相互に尊重し、それらの違いを社会の中で生かしていこう」という考え方

「私たちが重きを置いているのは、単に障がいのある人々の逆境や課題についての啓発や擁護を行うことではありません。社会に貢献するメンバーとして彼らを迎え入れることです。メンバーはその才能を役立てて他者を助け、自身のリーダーシップスキルを養い、社会に奉仕しているのです」とゼマノビッチ会長。

クラブの年間最大の奉仕事業の一つは、困難な状況にあるモントリオール地域の学生300人に学用品を寄付する活動だ。募金活動で6000カナダドル(約63万円)以上の資金を集める。他にも、MACLCは毎年1万5000カナダドルの資金獲得を行い、インクルーシブプログラムや特別支援プログラム、自閉症と芸術的表現、そしてライオンズ・インターナショナルの重点奉仕分野でもある小児がんや災害援助、視力保護、食料支援などに取り組んでいる。ゼマノビッチ会長は言う。
「与えることで、私たちも大きなものを得られます。困っている人々に奉仕することで、私たちはその人の生活を豊かにするだけでなく、私たち自身の生活を豊かにするのです」

ライオンズの奉仕はプロジェクトだけではない。時には、クラブの一員であること自体が奉仕であり、メンバーは前向きになり、仲間に受け入れられていると感じる。自閉症のメンバー、ザカリー・ハザン・デクルーズが経験したのはまさにそれだ。彼はクラブ主催のプロジェクトに参加した後、MACLCに入会した。彼はクラブで、奉仕の精神を養うリーダーシップ・トレーニング・プログラムも勧められた。

「MACLCのメンバーであることは、私にとって全てを意味します。コミュニティーやリーダーシップの意識から、すばらしい活動の一員であることまで。私は常にこの仲間と共にあり成長出来るのだと、心の底から感じています。人生で誰もが経験する困難に直面した時も、みんなが支えてくれます」とデクルーズは語った。ニューロダイバーシティーの当事者は、学校を卒業すると慣れ親しんだクラスメートや教師と交流する日々がなくなり、社会との接点を失ってしまうことがある。そこで、自分をサポートしてくれ、連帯出来る共同体を持つことは、そうした若者にとって非常に重要だ。住む家や仕事、何らかの活動を見付けるといった次のステップを踏み出すための、強力な足がかりにもなる。

MACLCは、ニューロダイバーシティーの特性がある人々が他者に奉仕し、有意義な関係を築くことに加え、包括性と多様性が人生を豊かにすることを世界中の人々に理解してもらおうとしている。マイナス面に目を向けるのではなく、その独自の能力と貢献が評価されることを望む。MACLCは結成以来、カナダ全土、またフランス、ポルトガル、ナイジェリアなどでも同様のクラブの設立を支援している。

2025.03更新(国際協会配信 文/ハンナ・クルゼミンスキー)