トピックス 日本のライオンズには
成長の可能性がある

日本のライオンズには成長の可能性がある
12月13日、ミッション1.5セミナーで講演するシン国際第1副会長

12月11〜14日、A・P・シン国際第1副会長(インド)と、国際協会の女性及び若手会員開発特別委員会委員長を務めるサンギータ・ジャティア元国際理事が来日し、東京都内でミッション1.5に関するセミナーや会議が行われた。日本のGATリーダーとの会議の他、12日には一般社団法人日本ライオンズの社員総会後に行われたミッション1.5報告会に出席。13日には各地区の第1副地区ガバナー、次期幹事とGATコーディネーターを対象にミッション1.5セミナーが開かれた。

以下は、12日に日本ライオンズ事務所で収録したシン第1副会長へのインタビュー。

Q. 初来日はいつ、どんな目的でしたか?
 日本は私が初めて訪れた外国です。1970年、9歳の時に学校の旅行で14日間滞在し、大阪で開かれていた日本万国博覧会(大阪万博)を見学しました。父の薦めで参加したのですが、私は参加者80人の中で最年少でした。その次の2回目の訪日はライオンズクラブの関係でした。

Q. 今回の来日のミッションは何でしょう?
 GAT会則地域リーダーである山田實紘元国際会長を始め、国際理事や複合地区ガバナー協議会議長、地区ガバナー、第1副地区ガバナーなど、日本のライオンズリーダーの皆さんにお会いして、会員増強の現状を把握し、これから何をすべきかを見いだすこと。それが今回の日本訪問のミッションです。

12月13日午前中の日本GATとの会議では、ミッション1.5の目標達成に向けた戦略を検討

Q. シン副会長はグローバル会員増強チーム(GMT)発足時から会員動静データを分析されてきたエキスパートですが、データを見る際に重視するポイントは何でしょう?
 何を重要視するかは、どの会則地域のデータを見るかによって異なります。例えば、結成クラブが多いものの、解散クラブも非常に多い地域があります。こうした地域では、いかにして解散クラブを減らすかという点に注目します。一方で、新クラブの結成がほとんどない地域では、クラブを作るために何をすべきかという視点で分析します。
 しかし、全ての会則地域において注視する二つの重要なデータがあります。それは、女性会員と若い会員の数で、私にとって重要なのは多様性に関するデータです。ただ、それら二つの比率が低いから悪い、という見方はしません。そこには成長するための絶好のチャンス、伸びしろがあると捉えます。他には、クラブの会員数の平均値にも注目します。1クラブ当たりの平均会員数が大きく落ち込んでいる地域もありますが、そうしたクラブが会員を増やして成長を遂げるのは非常に困難です。データというものはさまざまな視点から見る必要があり、ある一つの要素は他の要素と関連していくので、そこを考慮に入れる必要があります。

Q. 女性会員と若い会員のデータからすると、日本には伸びしろがある、ということになるのでしょうか。
 100%その通り。日本のライオンズには大きな成長の可能性があります。

Q. 日本のデータに関して、他に注目している点はありますか?
 まず気になる点は、新結成クラブの少なさです。各地区はもっと多くのクラブを結成する必要があります。それが、日本が真っ先に取り組むべきことだと考えています。会員数の純増とクラブ数の純増には明らかな相関関係があります。全ての地区ガバナーは1年の在任期間を終える時までに、クラブを増やし、会員を増やせるよう地区を導かねばなりません。地区ガバナーには、自らが任された時よりも地区を強化して次に引き継ぐ義務があります。より多くの会員、より多くのクラブが、より多くの奉仕につながるということ、それがこの協会をより強くするということを信じて取り組んでください。

Q. ミッション1.5によって新たに加わった会員を定着させる取り組みが、今後必要になってきます。シン副会長はウェブベースの指導力開発プラットフォーム開発や、会員を活動に引き込むための大規模オンラインイベントの企画を主導されてきました。そうした事例についてお聞かせください。
 我々は変化することで機能しています。特にコロナ禍の間には多くの変化に対処してきました。コロナ禍中にはいくつかのエリアフォーラムがオンラインで行われ、国際大会もバーチャル開催されました。今日では多くの会議やビジネスがオンラインで行われ、ライオンズクラブ国際財団(LCIF)の理事会もオンラインで会議を行っています。オンライン会議には多くの利点があり、旅行費用の削減や時間の節約はもちろん、重要なポイントに絞って短期間で議論することも出来ます。
 例えば、地区やリジョン、ゾーン、クラブの役員が出席するような地区会議であれば、仕事を終えた夕方の45分間でオンライン会議を設定すれば、移動にかかる費用や時間を使うことなく、短時間でしっかり議論することが出来ます。私自身、エリアフォーラムや、複合地区、地区の年次大会をオンラインで行うことに直接関与して、いずれも成功を収めました。対面を無くして全ての会議がオンラインになればよいというわけではなく、適度にミックスさせるのがよいと私は考えています。それをバランス良くやることは、特に時間的な制約の多い若い人たちにとって、大きなメリットがあります。

ミッション1.5セミナーでは第1副地区ガバナーに対し、次年度地区ガバナー就任と同時に会員増強の目標に向けて全力を発揮すべく、準備を進めるよう訴えた

Q. デジタル化によるコスト削減のお話がありましたが、シン副会長は20年前の国際理事在任中、国際協会の財政改革に手腕を発揮されたとうかがっています。今後の協会運営についてどのようにお考えでしょうか。
 私はデジタル化やさまざまなテクノロジーの活用が、コスト削減に大きく貢献するものと考えています。テクノロジーの導入には初期投資が必要ですが、それがいったん軌道に乗れば業務は円滑に進んでいきます。例えば、国際協会の公式版である『ライオン誌』もデジタル版に移行していますし、今は印刷されている『Vital Information』という名簿もデジタル版になります。過去数年間で、国際理事会の全ての文書やコミュニケーションツールがデジタル化されました。今年から始まった第2副地区ガバナー研修は全てオンライン研修ですし、第1副地区ガバナーの研修も、大部分がオンラインで行われています。この傾向は今後もどんどん進み、国際協会の運営において重要な部分を占めていくものと思います。あらゆるものの物価が高騰する中で、国際会費をあまり上げることなく維持していくには、コスト削減は不可欠です。会員の皆さんが納めた会費を責任を持って支出し、何事も効果的に、かつコストを抑えて行わなくてはなりません。

Q. 国際協会の公式プロフィールに、シン副会長はインドでのマイクロファイナンス・プログラムの設立に尽力されたとあります。このプログラムについてお聞かせください。
 マイクロファイナンスの概念は世界中で広く知られているもので、社会の底辺で生きる人たちを支援するものです。インド・コルカタでライオンズが取り組むプログラムでは、貧困層の女性を対象に融資をしています。200ドル、300ドルといった少額の融資でも、女性が家庭内で小規模な事業を始めるための資金になります。こうした女性たちには銀行口座がなく、職歴もないので、銀行でローンを組むことなど到底出来ません。しかし世界的に見て、マイクロファイナンスによる融資を受けた女性の98%が返済をすることが分かっています。とても残念なことですが、同じ境遇にある男性が資金を借りた場合には、酒など他のものに費やしてしまうのですが、女性はしっかりと返済します。一度借りた資金を完済すれば、更に融資を受けることも出来ます。融資を受けた女性たちが小さなビジネスを始めると、その子どもたちは学校に通い始め、電気がなかった家に電灯がともり、テレビを購入出来るようになります。中には、事業を成功させ、2〜3人の従業員を雇えるようになる女性もいます。彼女たちの仕事は、衣類に刺繍をしたり、小物類を作ったり、小さな喫茶店を開いたりとごくシンプルなものですが、それを懸命に、誠実にやっています。
 ライオンズは既にマイクロファイナンス事業を展開している大きな組織と提携しています。その組織には80〜100の支部があり、そのうちの二つの支部をライオンズが運営しています。支部のスタッフは毎月、女性たちの元を訪ね、ローンの返済を受けます。マイクロファイナンスは世界各地で成果を上げており、私は貧困と闘うための最善の方法だと考えています。このプログラムによって、我々は貧しい人に魚を与えるのではなく、魚の釣り方を教えています。これは能力開発、女性のエンパワーメントであり、貧困から脱する機会を提供するすばらしい方法です。

2025.02更新(取材・撮影/河村智子)

●A・P・シン国際第1副会長
1984年にカルカッタ・ヴィカス ライオンズクラブ入会。2004〜06年国際理事、06年度及び07年度国際理事会アポインティーを務め、2022年にカナダ・モントリオールで開催された第104回国際大会で国際第3副会長に選出された。GMT国際コーディネーターを4年間務めた他、国際協会、LCIFの多くの役職を歴任している。