取材リポート
防災への意識を高める
ドローン体験教室
富山神通ライオンズクラブ
#災害支援
#青少年支援
体験教室が始まって1時間弱、「H」(ヘリポート)と記された目標地点にドローンが着陸すると、子どもたちから大きな歓声が上がった。周りでエールを送っていた先生やライオンズメンバーも拍手喝采、子どもたちのミッション成功を喜んだ。
10月18日、富山市水橋地区にある三成(さんじょう)小学校の体育館で行われていたのは、富山神通(じんづう)ライオンズクラブ(西野久美子会長/62人)が企画した「ドローン体験教室&人文字写真撮影」だ。ドローンを介して防災の重要性を学んでもらう教室で、子どもたちは飛行のプログラミングに挑戦した。
2024年元日に発生した能登半島地震で、富山市では震度5強を観測。地震後、県内には津波警報が出され、地区の避難所になっている三成小学校に身を寄せた住民もいたという。
甚大な被害をもたらした地震を機に防災への関心が高まる中、富山神通ライオンズクラブは子どもたちにも意識を高めてもらいたいと考えた。そこで着目したのが、災害現場でも活用が進むドローンだ。
三成小学校がある水橋地区では、情報通信技術(ICT)によって次世代型のスマート農業を目指す「国営農地再編整備事業」が進行中。水田の上を飛び交う農業用ドローンの姿は日常的な光景になっている。クラブでは、身近なところで活用が進むドローンに触れることで、防災について考える教室を企画。それと併せて、三成小学校の全校生徒と地区住民、ライオンズメンバーで作った人文字をドローンで撮影し、防災ポスターを作製することにした。
水橋地区では地区内の小中学校を統合した市内初の義務教育学校(小中一貫校)が開校予定で、三成小学校はあと1年余りで閉校することが決まっている。
「子どもたちや地域の人たちが親しんできた小学校がなくなる前に、思い出に残る体験をしてほしいという考えもありました」
この地区で生まれ育った西野会長は、この事業にひときわ強い思いを持って臨んでいた。
人文字の撮影には、より多くの地域住民の参加を目指しつつ、募集にかかる費用を抑えることに苦心した。地域への告知は回覧板を利用することで印刷費を抑え、申込窓口に専用アプリを使うなど工夫を凝らした。
ドローン体験教室に参加したのは、6年生26人。JMAドローンスクール富山校から招いた3人の講師が指導に当たった。教室ではまず、ドローンで撮影された災害被災地の映像を紹介し、被害状況の調査や支援物資の輸送にドローンが活用されていることなどを説明。続いて3グループに分かれ、プログラミングによるドローンの自動飛行に挑戦した。発着地点から6mほど離れた場所に立てた旗を回って折り返し、元の場所に着地させるミッションだ。グループごとに力を合わせ、プログラミング学習ソフトのスクラッチ(Scratch)を使って、ドローンの動かし方を設定する。
子どもたちはごく簡単な説明を受けただけですぐにプログラミングに熱中していたが、いざドローンを飛ばしてみると、意図したのとは反対の方向に進んだり、距離の設定を誤って旗にぶつかったり、思い通りに動かすのは簡単ではない。各グループは失敗するたびに解決策を話し合い、プログラムに修正を加えて挑戦を繰り返した末、目標地点への着陸に成功した。
試行錯誤する児童の様子を見守っていた若狭茂校長は、「子どもたちは授業でプログラミングを学んでいますが、こうして実際にドローンを動かす体験はとても貴重な機会」と話していた。
体験を終えた子どもたちからは、次のような感想が発表された。
「プログラミングでドローンを飛ばしてみて、未来ではこれが当たり前になるのはすごいと思いました」
「スクラッチは今までやったことなくて、初めはよく分からなかったけど、みんなと修正していったのがすごく楽しかったです」
「今までドローンはただの遊び道具だと思っていましたが、自分の生活にも役に立つものだと分かりました」
ライオンズメンバーからは「みんなが大人になる頃にはもっといろんな場面でドローンが活躍するようになると思います。操作方法を覚えるだけでなく、どんな風に使ったら人の役に立つか、ぜひ考えてみてください」と、子どもたちに呼びかけた。
体験教室の後は、ドローンによる人文字の撮影。校庭には、事前にライオンズメンバーが文字をかたどる白線を引いておき、準備は万端。全校児童170人と先生、一般参加の三郷保育所の園児と校区内住民、ライオンズメンバー、総勢約240人が白線の上に立って描き出したのは「命を守ろう 三成」の文字。上空から撮影するドローンに向かって、みんな笑顔で大きく手を振った。
クラブは撮影した写真と映像で、災害への備えと命を守る大切さを訴えるポスターと動画を製作し、三成小学校と地元の自治振興会に寄贈した。
2024.12更新(取材・撮影/河村智子)
クラブ情報:富山神通ライオンズクラブ
【会員数】62人
【認証年月日】1969年5月10日
【スポンサークラブ】富山セントラル ライオンズクラブ
【クラブの特色】国の重要文化財に指定されている浮田家住宅の清掃を43年、五百羅漢で知られる長慶寺の清掃奉仕を49年にわたり継続。1971年結成の富山神通レオクラブに所属する小中学生とも協力し、環境保全活動に取り組む他、献血活動にも力を注ぐ。ゴルフを愛好する会員が多く、年に2回のゴルフ遠征が恒例になっている。
【例会日時】第1・3木曜日12:15〜13:30
【例会場】カナルパークホテル富山