海外の活動
悲しみを癒やす
犬とライオン
アメリカ・マサチューセッツ州
2020年にスペシャルティクラブとして結成されたマサチューセッツ州のサウスイースタン・マス・ポーズ・オブ・コンフォート ライオンズクラブは、特別な訓練を受けたセラピードッグを連れて学校や老人ホーム、病院を訪問し、つらい経験をした人々の心を癒やしている。
同クラブ結成において中心となったのは、2023-24年度の33-S地区ガバナーを務めたデボラ・ホーナーだ。彼女は長年にわたり、セラピードックと共に精神的な癒しを必要とする人たちを訪問する活動を行っている。ライオンズとしてこの活動に取り組んだのは2019年。ゴールデンレトリバーのフィネガンと一緒に地元の小学校を訪れた。この学校では、自動車事故で一人の児童が亡くなっていた。教室に入ると、フィネガンはすぐにすべきことを理解した。
「フィネガンは教室をぐるぐる回って、特に寄り添う必要がある子どもを見付け出しました。後から知ったことですが、彼が頭をすり寄せた子たちは皆、亡くなった少年の親しい友人だったのです」
ホーナーによると、犬は非常に直感力に優れていて、誰が自分を必要としているのかを察知することは珍しくないそうだ。この経験は、こうした取り組みの必要性を再確認する機会にもなった。そして、奉仕の心を持つライオンズの団結力をよく知るホーナーが思いついたのが、セラピードッグの活動に特化したクラブの立ち上げだった。
もう一人、クラブ結成に大きな役割を担ったのが、犬の訓練士のモニーク・テディーノだ。彼女が犬の癒しの力を実感したのは、2012年にコネチカット州で起きたサンディフック小学校銃乱射事件で亡くなった児童を悼んで造られた運動場の除幕式に参列した時のことだ。ホーナーと共にセラピードッグを伴って訪れたところ、一人の男子児童が温かい犬のおなかに頭を乗せて横たわり、「(亡くなった)兄さんに会いたい」とつぶやくのを聞いた。その後、その子が立ち上がって友達と一緒に遊び始めたのを見て、悲しみの中にいる人に犬が与える影響を目の当たりにし、その力を信じるようになった。テディーノは今、クラブでセラピードッグの主任トレーナーを務めている。
サウスイースタン・マス・ポーズ・オブ・コンフォート ライオンズクラブには現在、29人の会員と17匹の犬がいる。犬好きな人の関心を引いて新会員として迎え、その関心を地域社会とライオンズの奉仕事業の両方に役立てるという方法で、クラブは軌道に乗ることに成功した。同クラブが定期的に訪問する施設の一つが、マサチューセッツ州アトルボロにある病院だ。
「患者もスタッフも、セラピードッグに会えるのをとても楽しみにしています。犬たちは彼らの一日を本当に明るくしてくれます」
と話すのは、同病院のボランティアコーディネーター。ここではセラピードッグのワクチン接種だけでなく、人間のハンドラーにも各種予防接種を義務付けており、そうした面からもライオンズには信頼を置いていると言う。
セラピードッグの評判を広め、新しいメンバーを引き付けるために、クラブは犬をモチーフにしたさまざまなカードを配布している。カードには写真に加えて、「ボールを追いかけるのが大好き」とか「みんなを幸せにするのが好きです」など、それぞれの犬の紹介も掲載されている。また犬のカレンダーを作製して販売し、事業資金を獲得することも計画中だ。
ホーナー元地区ガバナーは、このタイプのスペシャルティクラブが各地で結成されることを期待している。既に複数の問い合わせがあり、それぞれの地域で結成する方法について多くのライオンズメンバーと連絡を取り合ってきた。この活動の主役は犬だが、一生懸命に犬を訓練し、地域社会のためにすばらしい取り組みをしている人間の仲間たちを、彼女は心から誇りに思っている。
2024.11更新(国際協会配信 文/アンネマリー・マニオン)