海外の活動 ダンスは人生の楽しみ
アメリカ・ニュージャージー州
ニュージャージー州にあるハドンフィールド ライオンズクラブは早春と早秋にそれぞれ10週間、視覚障がいのある大人のための社交ダンスクラスを開催している。ワルツやフォックストロット、タンゴ、メレンゲなどのレッスンだ。
事業の発案者は、自称ダンス狂のライオンズメンバー、ジョー・マーフィー。クラブ例会のゲストスピーカーとして招いた女性が「視覚障がいのある2人の息子には、人生を楽しみながら成長していってほしい」と話すのを聞いて思い付いた。ジョーはクラブに入会したばかりだったが、「ライオンズについてはまだ何も知らないけど、ダンスのことならちょっとは詳しい。人生を楽しむならダンスに勝るものはない」と、仲間のメンバーにアイデアを話した。
事業のPRには、視覚障がい者に職業訓練や雇用支援を提供している非営利団体の協力を得た。多くの個人や組織からも支援が寄せられ、グレース聖公会教会はダンスに最適な木の床のスペースを提供し、多くのライオンズメンバーを含む25~30人のボランティアが生徒の送迎を引き受けてくれた。大学でダンスを教えているジーン・ラピエール教授は、無償でダンス講師を申し出た。34年間プロのダンサーとしても活動してきた彼は、2015年に特別なニーズを持つ人が社交ダンスを楽しむための非営利団体を設立していた。ジョーとラピエール教授は、インストラクターが視覚障害者への指導方法を学ぶワークショップも開催。多くの参加者が集まり、毎週3人がアシスタントとしてクラスに参加するようになった。
2023年5月にスタートした時7人だった生徒数は、1年で15人を超えた。ダンスクラスは毎回、全員が手をつなぎ輪になって踊ることから始まる。ラピエール教授は「この友情の輪によって、目標を共有し、社交スキルを身に着け、心と体の協調性を高めることが出来る」と言う。また他者の動きを感じ取り、曲のビートを捉え、口頭での指示を聞いて体を動かすための助けにもなる。レッスンはその後、ペアを組んでの練習に移る。
ダンスは、記憶力の発達、うつの軽減、ストレスの緩和など、健康面で効果を発揮するだけではない。初めてのことに挑戦し、新しい人に出会い、仲間意識を育み、居心地の良い自分の殻を割って飛び出すことが出来る。ジョーによると、ハドンフィールド ライオンズクラブは最初から自分たちの地域だけにとどまらない活動を見据えている。
「私たちは、他のライオンズクラブでも再現出来るプログラムを目指しています。より多くの視覚障がい者に健康的な娯楽を楽しんでもらいたいのです」
2024.10更新(国際協会配信 文/ジョーン・ケーリー)