トピックス コンプライアンス規程と
その目的

コンプライアンス規程とその目的

コンプラインス規程案作成の経緯
近年、日本国内のライオンズクラブにおいて、会員の退会の原因にもなり得るハラスメント行為や誹謗(ひぼう)中傷、SNSによる誤った情報の一方的な配信、国際本部への直訴などの問題が数多く見受けられます。また、私たちライオンズクラブはロバート議事規則を基本として規則を定めて健全な運営を図っていますが、決められた事項を逸脱したり、法令等規則を遵守する義務が守られないなどの問題も増えてきています。

そうしたことから一般社団法人日本ライオンズでは、2022-23年度に村木秀之理事長から会則委員会へ、複合地区及び準地区に対応したコンプラアインス規程案の作成に取り組むよう付託があり、2023-24年度の田名部智之理事長の元で原案をまとめることが出来ました。そして、2024-25年度をパイロット期間としてこの規定を運用していただけるよう、2024年5月16日付けで複合地区及び準地区にお願いしました。パイロット運用の結果を慎重に検討した上で、2025-26年度からの本格運用に移行することを目指しています。この規程は複合地区や準地区だけでなく各クラブにおいて活用することで、クラブ会員同士の問題解決などに役立つものと思います。

目指すものは
コンプライアンス規程は、ただ単にハラスメント行為を防止するだけでなく、高い倫理観を持って組織運営を行い、CSR(企業の社会的責任)意識を自覚してその責任を果たし、ライオンズの価値向上に貢献するためにあります。現在の社会情勢からしてもコンプライアンス規程は必須であり、会員一人ひとりが社会的責任を果たしつつライオンズクラブの目的実現を図る上で重要なものです。

なぜコンプライアンス規程及び委員会が必要か、その役割は何か
ある会議で、ハラスメントが行われている現場に居合わせました。しかし、私を含めその場にいた人はただ黙って聞いているだけで、ハラスメント行為であることを指摘する人はいませんでした。しばらくして、会議に参加していた会員から話を聞く機会がありました。初参加だったその会員は「恐ろしい所に来てしまった」と感じたそうです。

会議中に名指しで批判された会員は、黙って泣き寝入りするしかないのでしょうか? 声の大きい人、発言力を持っている人が正しいとされることになってはいないでしょうか? ネット上には、元会員のブログなどでハラスメントを受けて退会した経緯をつづっているものが散見されます。これは氷山の一角かもしれません。ライオンズクラブでは多様性を重視していますが、その意味が十分に理解されないまま、これまでとは異なる意見、新しい意見を持つ人が弱い立場に追いやられてはいないでしょうか。

その一方で、ハラスメント行為に対して黙っていない会員もいます。そんな会員は、訴訟を起こしてでも受けた屈辱に対して名誉を回復しようとします。しかし、それで良いのでしょうか。国際協会には、理事会方針書第25章「紛争処理手順」があります。それを否定するものではありません。今回作成した日本のコンプライアンス規程の目的は、国際本部が定めた紛争処理手順の履行に至らないよう、初期段階で会員同士がハラスメント的発言を指摘出来る環境づくりにあります。

ハラスメントをしている本人が、全く悪気なく発言しているということは珍しくありません。しかし他者が客観的に見れば、明らかにハラスメント発言だと気付くものです。これまでは指摘する人がいなかったとしても、規程が出来たことで今後は「それはコンプライアンス規程違反だ」と発言出来るようになります。ハラスメント的言動がないように互いに注意し合うことで、友愛と相互理解の精神が培われていくものと思います。

中には「うちの地区にはそんな争いはない。だから、コンプライアンス規程やコンプライアンス委員会は必要ない」と断言する地区ガバナーもいます。しかし、今はそうだとしても、将来も争いが起こらないと言い切れるでしょうか。このコンプライアンス規程は、悪者を罰するためのものではありません。コンプライアンス委員会は、ハラスメント的言動があった初期段階で対応し、双方が感情的にエスカレートする前に争いに終止符を打てるよう迅速に解決を図ることを目的とするものです。規程と委員会を設けることが、将来の紛争防止に役立つと信じます。

コンプライアンス委員会の人選
委員の人選については特に悩まれるかと思います。参考例として、地区においてはガバナーチームと前地区ガバナー、地区運営委員長、地区会則委員長、更には女性を代表して地区FWTコーディネーターを加えることなどが考えられます。既存の役職者を任命すれば、新たに人選する必要はありません。コンプライアンス委員会で行う懲戒・処分の決定に当たっては、声の大きな人、影響力のある人の発言に左右されることを防ぐため、無記名投票によって採決する重要性を理解してほしいと思います。

最後に、会員のあるべき姿は「ライオンズクラブ国際協会の目的」や「ライオンズ道徳綱領」「ライオンズの誓い」に示されていることが基本です。その精神に照らして、ライオンズクラブにおいて、規則違反や社会倫理に背く行動はあってはならないものです。コンプライアンス規程がそれを抑止あるいは解決することで、健全な組織として更なる飛躍を果たすことを願います。

今年度をパイロット期間として運用するコンプライアンス規定(案)は下記の通りです。次年度の本格運用に向けてより有用な規定に仕上げるため、ぜひ会員の皆さんのご意見、ご提案をお聞かせください。

2024.09更新(2023-24年度会則委員会委員長/松本宰史<千葉県・南房総ライオンズクラブ)