獅子吼 防災を学び災害に備える

防災を学び災害に備える

2011年3月11日、東日本大震災が発生。マグニチュード9.0の未曽有の大地震は、広範囲に大きな揺れと大津波による被害をもたらしました。地震翌日の12日朝、建設業を営む私の会社にイオンリテール株式会社から緊急災害出動要請があり、私は社員7人と共に茨城と福島の県境にあるイオングループのスーパーマーケット、マックスバリュへ出動しました。道中では福島原子力発電所の爆発や、橋や高速道路の通行止めもあり、飲めず食えずの時間が続き、SF映画さながらの緊張の連続でした。

こうした体験から、私は翌2012年に社内に「ハーツ安全衛生交流会」を立ち上げ、協力業者と防災勉強会を始めました。お客様も巻き込んで防災活動を推進し、2021年には「一般社団法人DRCT(ダイレクト)災害復興協力チーム」を立ち上げました。同法人はイオンリテール株式会社東海カンパニーと防災協定を締結しました。

2023年に実施した「第3回たのしくマナ防災」

災害大国日本の最大の課題の一つに南海トラフ巨大地震があり、東海地震、東南海地震、南海地震の三つの大地震が連動して発生することが懸念されています。規模が大きく広範囲に被害を及ぼすため、人的救援や物的支援を届けるのは非常に困難です。誰かが助けてくれる、届けてくれるという望みは「ない」と考えて準備をする必要があります。

「心ここに在らざれば、視(み)れども見えず、聴けども聞こえず」
多くの人は、今日と同じ日常が明日も続くと思って暮らしています。しかし地震は突然やってきます。ひとたび災害が起こると、昨日まで当たり前だった生活・風景・常識が一変します。最悪の場合は自分や家族の命が奪われる可能性もあり、人生が一変するかもしれないのです。将来必ず起こるとされる大災害に目を向け理解を深めて、「その時」に備え、準備と行動を起こしましょう。

人は目の前の大きな問題から目を背けがちです。災害時には、「これくらいならまだ大丈夫」と考える「正常性バイアス」や、「皆と一緒だから大丈夫」と考える「同調性バイアス」などの心理が働きます。バイアスとは、「斜め、ゆがみ、偏り、錯覚」といった意味で、合理的な思考を妨げる認知のゆがみです。人はリスク情報を素直に受け取らず、無視したり、排除したりする傾向があります。「多分大丈夫/まだ大丈夫/その時はその時/自分は何とかなる」など、何の根拠もなく危険を楽観的にとらえ、自分を過大評価して危険を犯してしまうのです。

2024年に実施した「第4回たのしくマナ防災」

DRCTの概要をご紹介しましょう。
<理念>
大災害発生時に「人命救助」「被災者の衣食住の確保」「地域産業の復旧・復興」を促して、想定外の災害を想定内にとどめる
<行動指針>
被災者のための「衣・食の供給元」の復旧・復興・早期再開を支援。組織的活動・役割分担で費用対効果を上げ、スピード復興を目指す
<基本活動>
 1. 災害有事出動
 2. 防災啓発活動:「たのしくマナ防災」+社会貢献活動「子供たちの社会見学」
 3. 情報発信:DRCT・SP通信(奇数月1日メール配信)

「たのしくマナ防災」と「子供たちの社会見学」は、次回の準備を進めています。

「第5回たのしくマナ防災2025」
2025年5月18日(日)/会場:名古屋市公会堂・鶴舞公園
大災害(南海トラフ地震)から自分の身を守り、生き残るための体験型防災イベントとして、次の三つを柱とします。
1. 災害を知り=イベントで興味を持ち、災害知識を深め、正しく恐れ、理解して自然を楽しむ
2. 災害に備え=家族で体験し、「対策と準備と備え」の話し合う
3. 災害と闘う=大災害に立ち向かう「自助」から「共助」「公助」へと活動を広げ、早期復興を目指す

そして、たのしくマナ防災の見どころは大きく分けて五つあります。
1. 災害を学ぶエリアでは、災害体験映像・お化け屋敷風サバイバル迷路・災害パネル展示(地球の生い立ち~災害のメカニズム)
2. 災害特殊車両エリアでは、普段あまり目にすることがない自衛隊・警察・消防の特殊車両展示
3. 移動遊園地では、スタンプラリー完走でエアー遊具・ゴーカートを無料で楽しむ
4. 音楽ステージエリアでは、近隣学生の吹奏楽部・消防音楽隊・プロバンドの演奏会
5. キッチンカーエリアでは、ひとり親家庭と児童養護施設200人を招待して昼食券プレゼント
お祭り騒ぎの内容です。昨年、尾張旭市で開催した時の来場者数は1500人でした。今回は3000人を想定しています。毎回約60人のボランティアが参加し、安全に考慮して運営しています。

「第3回子供たちの社会見学」
2024年10月20日(日)/会場:リニア鉄道館(名古屋市港区)
子どもの未来と夢を広げるきっかけ作りとして、ひとり親家庭と児童養護施設の子どもたち200人を年1回招待しています。いろいろな施設に出かけ、お菓子のプレゼントもあり、昼食も共にして、ボランティアを含め私たちも童心に帰って一緒に楽しんでいます。一番の喜びは子どもの笑顔とお礼の手紙で、涙が出てしまいます。

「第2回子供たちの社会見学」では名古屋港水族館を訪れた

ライオンズクラブには「We Serve(われわれは奉仕する)」というモットーがあります。DRCTは「ノブレス・オブリージュ」の精神です。直訳は「高貴な者の義務」。西洋のボランティア活動の基礎になったとされるフランスの騎士道精神では、「裕福で社会的地位のある者は、自己を犠牲にしてでも果たすべき社会的義務がある」という考えがあります。DRCTはその精神を元に、毎週火曜日の炊き出しや、こども食堂支援、社会貢献団体への献金・寄贈活動などを行っています。興味のある方はいつでも見学にいらしてください。クラブ・アクティビティとしての参加も大歓迎です。

(計画・大会委員長/21年入会/69歳)

2024.09更新