取材リポート 命をつなぐ献血推進活動と
学生ボランティアの支援

命をつなぐ献血推進活動と学生ボランティアの支援

7月18日、岐阜市の長良川国際会議場で第60回献血運動推進全国大会が開催され、日本赤十字社名誉副総裁である秋篠宮妃の紀子さま臨席の下、功労者の表彰や体験発表が行われた。この大会は献血運動の推進を図り、特に若年層に献血の機運を高めることを目的に、毎年7月の「愛の血液助け合い運動」の一環として開かれている。

式典で体験発表をしたのは、岐阜県学生献血ボランティアとして活動する大学4年生の亀山友花さん。亀山さんは発表の中で、高校入学後にライオンズメンバーだった祖父の薦めでボランティアに参加したことや、他の高校や大学から集まった学生たちとの活動にやりがいを感じていることなどを述べ、次のように将来の夢を語った。

「祖父の背中を見てボランティアを始めた私も、来年の3月には大学を卒業します。まだ国家試験が控えていますが、看護師となって病院で働く予定です。早く一人前になって、献血していただいた血液を、安全に患者さんに届ける仕事が出来ることを夢見ています」

献血呼びかけ時に配布する啓発グッズを準備するクラブメンバー

亀山さんの祖父は、4年前に故人となった長谷川正さん。岐阜南ライオンズクラブ(加藤憲会長/106人)の会員として30年以上にわたって献血活動に熱意を注ぎ、毎月1回の活動時には学生ボランティア一人ひとりを気遣いつつ、孫娘と一緒に参加することを楽しみにしていたという。

岐阜南ライオンズクラブは岐阜県赤十字血液センターと連携して1978年から献血推進活動を開始。少子高齢化が進む傍らで若年層の献血が減少していく中、長きにわたり力を入れてきたのが、献血学生ボランティアに対する支援だ。クラブは市内の大学や高校を訪問して参加を募るなどして、ボランティアと共に月1回の活動を続けてきた。現在は市内の大型ショッピングモール・マーサ21で、毎月第3日曜日に献血活動を行っている。

全国の年間の献血者数は、過去20年にわたり500万人前後で推移しているが、年代別に見ると若年層の減少が進んでいる。2022年度の献血者数は501万人。このうち30代以下(16〜39歳)は10年前の361万人から167万人に半減した一方で、40代以上(40〜69歳)は215万人から334万人に増加しており、若年層の献血が減った分を40代以上が支える形になっている。

若い世代の献血が減っている要因の一つには、高校や大学で行われる学内献血の減少があるという。30年ほど前には全国の高校の6割以上で学内献血が行われていたが、近年では2割以下にまで低下。学生時代に献血を経験する機会が少なくなったことが、献血離れにつながったと考えられる。

命をつなぐのに不可欠な血液を将来も安定的に確保するためには、若年層に献血への理解を広めることが急務。そのための取り組みの一つが、全国各地で行われている学生献血ボランティアの活動だ。

この日は学生ボランティアに混じって、メンバーの古田さよ子さんの孫で小学4年生の瑶子さんも献血への協力を呼びかけた

7月21日、岐阜南ライオンズクラブの今年度最初の献血活動が行われた。クラブメンバーは午前8時半にはショッピングモールに集合。強い日差しが照りつける中、駐車場にテントを張ると、配布用のティッシュや絆創膏(ばんそうこう)の準備を手際良く進めていった。真新しいテントは、2年前にクラブ結成65周年を記念して岐阜県赤十字血液センターへ寄贈したもので、学生ボランティアの休憩場所として活用されている。

活動するのは午前9時半から昼休みをはさんで午後4時までで、毎回、高校生と大学生のボランティア10〜20人ほどが参加。クラブは交通費等の補助として、半日参加は500円、1日参加は800円を支給している。また、休憩用に飲み物や菓子などを用意し、メンバーは学生たちの労をねぎらいながら彼らの話に耳を傾ける。冒頭の体験発表を行った亀山さんは、さまざまな年代の人と一緒に活動することが出来て良い経験になっていると話していた。

全国の学生献血ボランティアは毎年8月にサマーキャンペーン、12月にはクリスマスキャンペーンとして、学生の企画による推進活動を展開するが、クラブはこれに必要な資金を提供するなどの支援も行っている。岐阜南ライオンズクラブの可児晃献血推進委員長は、活動を通じて大きな手応えを感じているという。

「学生たちと一緒に市民に献血を呼びかけ、毎回その成果を目にすることで、奉仕団体としての手応えを実感するようになりました。この活動を通じてさまざまなつながりを持てることにも、大きなやりがいを感じています」

この日参加した学生の中に、今回が初めてのボランティア活動という高校3年の女子生徒がいた。看護学校への進学を目指していて、将来の役に立つ経験が出来ないかと調べるうちに献血ボランティアの存在を知ったとのこと。ボランティアに参加する学生には、彼女のように医療系の進路を志す高校生、大学生の他、社会貢献に興味を持つ学生が多い。日赤からはボランティア証明書が交付されるので、進学や就職活動で社会貢献活動の実績をアピール出来るメリットもある。現在、岐阜県赤十字血液センターには、献血学生ボランティアの経験を通じて赤十字の仕事に興味を持ち、就職した職員が2人いるそうだ。

岐阜南ライオンズクラブでは、市民への協力呼びかけに加えて、メンバー企業での団体献血にも取り組んでいる。その他にも、献血事業車両やテントを寄贈するなど岐阜県赤十字血液センターへの支援も続けてきた。そうした貢献が認められ、2000年には厚生労働大臣表彰を受け、活動開始から40年目の2019年にはクラブの活動を通じての献血者数が10万人を突破した。そして今年、岐阜県では48年ぶりの開催となった第60回献血運動推進全国大会では、岐阜南ライオンズクラブを始め岐阜市内で活動する九つのライオンズクラブに日本赤十字社金色有功章が授与された。

2024.08更新(取材・撮影/河村智子)