獅子吼 ふれあい海の祭典

ふれあい海の祭典

7月27日、インドの首都ニューデリーで行われたユネスコの世界遺産委員会の会議で、「佐渡島の金山」を世界文化遺産として登録することが全会一致で決定。多年にわたる悲願が達成された。そして8月、佐渡は稲穂が出そろう出穂期(しゅっすいき)を迎えた。

8月4日、佐渡ライオンズクラブ(髙野宏介会長/47人)は恒例の第27回ふれあい海の祭典を開催した。佐渡島内の福祉施設の利用者や家族の皆さんを招き、共に海での一日を楽しむ催しである。2日に行った準備ではクラブ事務所の隣の倉庫から机やいす、ブルーシート、バーベキュー用の鉄板、鍋、包丁、電源ドラムなどを運び出し、佐渡スポーツ協会からはテントをお借りした。迎えた当日、朝早くから集結した21人のメンバーはテント張りから作業を開始した。午前10時、会場の長石海水浴場には父母などの保護者を含めて51人が集まった。残念ながら、新型コロナ感染者が出たために岩の平園、第二岩の平園の利用者が不参加となった。午前中にもかかわらず、温度計はうなぎ上りで30度を超えていた。

海の祭典は食事と海水浴がメインである。食事係を担当したレストラン味彩のオーナーシェフ、伊藤哲夫さんと、国際佐渡観光ホテル八幡館のオーナー本間東三夫さんは、包丁裁きも軽やかにカレーと夏野菜スープ、それにバーベキューの食材を用意。11時過ぎ、本格的なカレーのにおいが会場に満ちると、「もう一ついいですか?」「僕にもください」とお代わりのリクエストが続いた。暑さも手伝って、レモン、メロン、トロピカルジュースの3種類のシロップをふんだんにかけたかき氷も好評であった。

さて、監視員が水際と海中に配置されると海水浴が始まった。生温かい青い海は白波もなく凪(な)いでいた。緩やかに岸に向かう潮の流れがあり、プールにはない開放感がある。おどけながら仲間と海水をかけ合う児童、親に手ほどきを受けながらクロールに挑戦する男の子、親の手を借りて足をバタつかせながら歓声を上げる人、高齢の親が引く浮き輪に乗ってのんびりする人、それぞれがそれぞれの能力に応じたスタイルで楽しんでいた。休息用のテントの脇では年少者を対象にお菓子がもらえる輪投げゲームも始まった。誰にも拘束されず、遠慮することもない自由な時間がそこにあった。普段の生活では得られない時間だと思えた。

ここ数年は新型コロナ感染拡大で、ふれあい海の祭典はやむなく中止となった。昨年度4年ぶりに復活し、今年で27回を数えるまで継承されてきたのである。海の祭典にはどんな魅力が隠されているのだろうかと常々思っていた。参加者だけではなくメンバーも楽しくなければ、これほど長くは続かない。泳いで来る子を待ち受ける父親の笑顔、子どもと一緒にカレーやスイカを頬張る母親の笑顔があふれていた。誰もが満面の笑みだ。

「そうか、これだったのか」
私は心の中で叫んだ。日常生活の中では見ることの少ない、はじけるような子どもの笑顔、父母はその無邪気な笑顔が見たくて暑い中を参加しているのではないか。子の笑顔につかの間の安らぎを得ているに違いない。そう思えた。海の祭典を通して、父母の笑顔と安らぎの時間も生み出されているのだ。

海の祭典の片付けも終わり陽が西に傾いた。再び集まったメンバーの誰もが日焼けしていて、疲れの色が見てとれた。やや短めの例会に続いて懇親会に移った。333-A地区の第1副地区ガバナーを務める林隆行さんがマイクを握った。
「今日は暑かった。本当に暑かった。大変ご苦労さまでした。海の祭典はどうでしたか? 私は楽しかった。笑顔に包まれた奉仕は楽しい。この感動を、この喜びをもっと多くの人に伝えてほしい。多くのメンバーを募って喜びを分かち合いたい。また、来年もふれあい海の祭典を開催しましょう。皆さん、そうではないですか。では、乾杯します。ウィ・サーブ!」

「ウィ・サーブ!」。参加したメンバーはこの言葉に癒やされた。奉仕の神髄に触れた一日となった。

(会計/2013年入会/68歳)

2024.08更新

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