海外の活動 電気を自給自足する
自然保護キャンプ

電気を自給自足する自然保護キャンプ

ビクトリア州の州都メルボルンから東に約250kmの場所にあるリコラの町で、ライオンズは町の面積の大部分を占めるリコラ自然保護村を運営している。1973年から、特別な支援が必要な子や難民、恵まれない環境にある子ら、8~11歳の子どもたちを対象としたサマーキャンプを実施しているのだ。子どもたちはこのキャンプで1週間、送電網から切り離された生活を送る。そうした経験を通じて、自然環境保護に貢献することに対する誇りが生まれ、自信を深め、新しい友達との楽しい思い出を胸に帰路に就く。

2019年、ライオンズはキャンプで使用する電気をディーゼル発電から太陽光発電に切り替えるために、86万オーストラリアドル(約9000万円)を投入。今では屋外競技場の屋根と丘の斜面に計600枚のソーラーパネルが設置され、大型輸送コンテナ2台に搭載したバッテリーに蓄電されている。リコラは州内で唯一、電気を自給自足し、くみ上げた水を処理して使用し、廃棄物処理まで独自に行う町になった。キャンプでは年間13万5000オーストラリアドル(約1400万円)分もの燃料費の節約になることから、8年間で初期投資を回収出来る見込みだ。しかしそれ以上に重要なのは、地球規模の気候変動の主原因である温室効果ガスの排出量を65%も削減したことだ。

リコラの町はこの半世紀の間に、大きな変化を遂げてきた。かつて、低木が茂るこの土地では製材所が操業していた。現在キャンパーたちの宿泊小屋となっている16棟は、製材所の労働者の住居を改装したものだ。当時は小さな雑貨店や郵便局、ガソリンスタンドが立ち並んでいた。しかし1966年に火事で工場が全焼。一帯は売りに出されたが、なかなか買い手が付かなかった。

これに目を付けたのが、2人のライオンズメンバーだ。自然の美しさとそれによる可能性を見いだし、自分たちのビジョンを仲間に話した。1969年、ライオンズは子どものための自然キャンプ場を作るために、34エーカー(約14ヘクタール)の土地を2万オーストラリアドル(当時のレートで約200万円)で購入。週末ごとにビクトリア州中からライオンズメンバーが集まってキャンプ場を建設し、73年にオープンにこぎ付けた。

現在、ライオンズは交通費を含むキャンプ費用全額を負担して子どもたちを招待している。施設の清掃やメンテナンスには、ビクトリア州の各ライオンズクラブが協力する。新型コロナのパンデミック以降はボランティアが不足しており、キャンプの運営が困難な時もあるが、電力会社の送電網に頼らない、再生可能な電力を自給自足するこのキャンプに対する誇りが揺らぐことはない。キャンパーはディーゼル発電機の稼働音を聞きながら眠りに就くこともなく、鳥のさえずりで目を覚ます。ライオンズメンバーのシンシア・セデリノは言う。
「このキャンプは子どもたちにとって、人生を変え得るものです。それは彼らに、世界に対する信頼を与えるのです」

2024.07更新(国際協会配信)