獅子吼 大丈夫 ひとりじゃないよ

大丈夫 ひとりじゃないよ

私たち人間は、自らの経験からさまざまなことを選択して生きていくものです。経験のないことや身近では起きていないことに心から興味を持つのは難しくもありますが、新しく視野を広げるという意味で学びにもなります。

福岡県の最西部に位置する糸島市に、私が理事長を務める「糸島ハートの会」という会があります。任意団体を経てNPO法人となり、発足から8年目を迎えました。会員皆でタオル帽子(ケア帽子)を製作し、がん拠点病院を始め全国のがん患者さんへ無償でお届けする活動をしています。その数は累計で3200点を超えました。抗がん剤治療の副作用で髪の毛が抜けてしまった方々へ、敏感になった頭皮に少しでも優しいものを、という気持ちで一枚一枚手縫いで作っています。

会を立ち上げるきっかけとなったのは、9年前に私自身が乳がんを経験したことです。つらかった病気の経験を生かして、「恩送り」として何か出来たら。そう考えてこの活動を始めたことで、私の人生は生まれ変わったようなすばらしいものになりました。今では、がん経験者やそのご家族、またがんの経験はないけれども思いを伝え続けるうちに応援してくださるようになった方々に恵まれて活動を続けています。

小児がんの子どもたち、そして親御さんに少しでも力と応援を届けたいと、お子さん用のタオル帽子やカテーテルバッグ、ガーゼハンカチなどを製作しています。SNSでつながる全国のがん患者さんたちは私たちの思いを受け取って、心を込めて作った帽子やこれに添えた「大丈夫 ひとりじゃないよ」というカードをお守り代わりにしてくださったり、「とても落ち込んでいたけれど、勇気とパワーを頂きました」「自分も元気になったら誰かのお役に立てることがしたい」と伝えてくださったりします。そして私たちもまた、患者さんのメッセージやお気持ちに大きな力を頂いているのです。

こうした活動を続けていくうちに、昨年は福岡中央ライオンズクラブから声をかけていただいて、福岡ハートの会クラブ支部としてスタートすることが出来ました。大変ありがたく思っています。これからも、経験したからこそ心の通じる活動をしていきたい。生かされている感謝をいつも胸に、皆様の心の居場所になれるよう、進んでいきたい。病気を経験した人にもそうでない人にも、「大丈夫 ひとりじゃないよ」というメッセージを、今この社会に伝え続けていきたいと思っています。
 
(支部会長/23年入会/53歳)

2024.03更新