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共に生きる社会を

Be with all  共に生きる社会を
スペシャルオリンピックスが開発したフロアホッケーでは、フェルト製のパックの穴にスティックを差し込んでドリブルやパス、シュートを行う(写真提供:スペシャルオリンピックス日本)

スペシャルオリンピックス(SO)は知的障がいのある人たちにさまざまなスポーツトレーニングとその成果の発表の場である競技会を、年間を通じて提供している国際的なスポーツ組織です。スペシャルオリンピックス日本(SON)は、国内本部組織としてSOの活動の推進に取り組んでいます。

2023年11月、長野市で、第8回スペシャルオリンピックス日本冬季ナショナルゲームとしてフロアホッケーとフロアボール競技を開催しました(今回は2024年2月まで、長野市と北海道名寄市との分散開催となります)。SOではオリンピックと同様に夏季・冬季の世界大会がそれぞれ4年ごとに行われます。その前年に開催されるナショナルゲームは世界大会への日本選手団選考を兼ねています。今回は全国から約200人のアスリートが集結し、日頃の練習の成果を存分に発揮しました。2023年にSON理事長に就任した私にとって初めて大会会長を務める機会となり、開会セレモニーから競技、表彰式まで、全ての場面においてアスリートのひたむきな姿や、それを支えるボランティアやコーチらの思いに胸を打たれました。

開会セレモニー(写真提供:スペシャルオリンピックス日本)

特に表彰はSOの理念が現れていて、その場に居る全ての人が一つになる感動的な瞬間です。SOには「全員表彰」というオリジナルのルールがあり、参加した全てのアスリートが表彰台に上り、順位にかかわらず努力と勇気をたたえ合います。今大会でも全員の胸にメダルとリボンが輝きました。このメダルは、ライオンズクラブ国際財団(LCIF)の支援で製作したものです。メダルを手にしたアスリートは、「コロナ禍で大会が中止になり、練習も出来ず、人にも会えずに不安な時期もあったけれど、それを乗り越えてメダルをもらえてうれしい。このメダルは、がんばってきた自分と支えてくれた周りのみんなの気持ちと同じくらい重くて輝いています。大切にします!」とうれしそうに話してくれました。

メダルを掲げるフロアホッケー競技のアスリートたち(写真提供:スペシャルオリンピックス日本)

SOの活動は、故ジョン・F・ケネディ元アメリカ大統領の妹ユニス・ケネディ・シュライバーがアメリカで始めたもので、今では世界201の国と地域に広まり、約330万人がアスリートとして参加しています。LCIFとSOは2001年にパートナーシップを締結。アスリートの健康チェックの視力部門「オープニングアイズ・プログラム」に対する交付金拠出の他、社会参加を国際的に支援してくださっています。今大会でライオンズクラブには、メダルやリボンの他にも弁当などの物資支援、表彰プレゼンターや会場整理といった人的ボランティアに至るまで多大なご支援を頂きました。

LCIFの支援で製作されたメダル(写真提供:スペシャルオリンピックス日本)

私は2度、柔道でオリンピックに出場しましたが、金メダルという目標には届きませんでした。結果を出すことが自分を肯定出来る唯一の手段と、自らを奮い立たせてきた現役時代。その過程の価値に目を向けることはありませんでした。しかしSOと出会い、自分の目標を持てること、目標達成のために練習出来る環境や成果を発揮する場があることなど、何の疑問もなく享受してきたものが実は当たり前ではなかったことに気付かされました。私たちが人生を歩む上でこうした環境から得られるものは無限にあり、それは障がいの有無にかかわらず誰にも平等にあるべきです。

SOの活動はスポーツを行う環境を提供するだけでなく、スポーツを通して相手を理解しサポートし合うこと、そして互いを知ることで互いの人生を豊かにすることにつながります。こうした理念を実現するためにご支援くださっているLCIFに、心から感謝申し上げます。そしてこれからも支援を続けていただき、SONのスローガンである「Be with all」、誰もが支え合って生きる社会の実現に向けて、共に歩んでいければと切に願っています。

2024.01更新

ひらおか・ひろあき:1985年、広島市生まれ。筑波大学体育系助教。博士(スポーツ医学)。6歳から柔道を始め、インターハイ優勝、全日本選抜柔道体重別選手権大会5連覇、世界選手権銀メダル2回、銅メダル1回、2008年北京オリンピック出場、12年ロンドンオリンピック銀メダルなど活躍。16年SONドリームサポーターとして活動に参加。21年SON理事、23年理事長に就任。