編集室 甍の波
ライオン誌日本語版委員 三枝久夫
ライオン誌日本語版はウェブマガジン、印刷版共に、大変充実した内容で発行されています。今年度、ライオン誌日本語版委員となり、初めての経験で至らぬ点が多々あるかと思いますが、精いっぱい務めてまいります。
ライオンズクラブの活動に関する情報をメンバーが共有するだけでなく、会員以外の方々へ広報することは非常に重要です。クラブ、地区、そして日本全体で、広く市民に向けた広報活動を大きく展開することが必要だと感じています。
さて、私のなりわいは「屋根屋」です。外壁や樋(とい)などの外装を行っていますが、メインは屋根になります。皆さんもよく知るギリシャのパルテノン神殿は、今では列柱のみになっていますが、往事は木造の小屋組みがあり、大理石を使った瓦の屋根が乗っていました。
日本においては、『日本書紀』に「百済(くだら)から4人の瓦博士が渡来した」との記述があり、日本最古の仏教寺院である奈良・飛鳥寺の屋根が日本で最初の瓦屋根だと伝えられています。その後、都のあった近畿地方を中心に瓦が用いられ、やがて地方へと広まっていきました。西暦694年には藤原京の造営で初めて宮殿に瓦が葺(ふ)かれ、平城京、長岡京、平安京でも使われました。桃山時代以降は戦国武将が城に瓦を採用するなど、主に寺社仏閣や宮殿、城で使用されるようになります。そして、江戸時代に軽量化した「桟瓦」が発明されたことで、次第に一般の家屋にも普及していきました。
「甍(いらか)の波と雲の波♬」
おなじみ、童謡「こいのぼり」の歌詞です。「甍」は瓦屋根のことと言われ、間違いではないのですが、「甍瓦」というのがあります。大棟(屋根の一番てっぺん)の中に軒瓦を入れるという施工方法で、その軒瓦を「甍瓦」と呼び、今では見かけることが少なくなってきています。我々の業界用語に「鴈足(がんあし)がそろっている」という言葉があります。瓦の斜めの線が、きれいにそろっていることを表します。この鴈足がそろっていると、屋根や建物は美しく、見栄えが良くなります。建物を見る時、特に屋根も注意して見ていただけると、また違った印象になるかと思います。住宅を建てる時、改築する時は、ぜひ、美しい日本の瓦屋根を採用していただきたいものです。
ライオン誌も、人目を引き付ける見栄えの良さと、充実した内容で、たくさんの人にライオンズクラブの奉仕活動を伝えていけるよう努力してまいります。
2023.11更新(ライオン誌日本語版委員/三枝久夫<栃木県・佐野西ライオンズクラブ>)