投稿リポート 大学生対象のライオンズ
クエスト・ワークショップ

大学生対象のライオンズクエスト・ワークショップ

宮城県内におけるいじめや不登校等の問題は、学校の手厚い指導にもかかわらず減少にはつながっていないのが現状だ。これら子どもたちを取り巻く課題解決のためには、何かきっかけが必要であると感じていたところ、ライオンズクエスト・プログラムを紹介されてセミナーに参加し、「このプログラムは教育者を志す大学生の指導に絶対に役立つ」と感じた。これをきっかけに、私が教授を務める東北福祉大学教育学部で、3年前からライフスキル教育ワークショップを開催している。

2020年1月、332-C地区(宮城県)の支援により東北福祉大学で初めてのワークショップが開かれた。参加した学生の反応は大変良く、「子どもの指導にこのノウハウを生かすことが出来る」「筋道を立てて考えを整理する方法が分かった」という話が学生の間に広がり、「また行ってほしい」「昨年度参加した先輩からそのすばらしさを聞いた。私も参加したい」などの声が寄せられた。それ以降、ワークショップを開催するたびに多くの学生が参加している。2021年は2回、2022年は4回、2023年は3回とこれまでに10回開催し、参加者は約330人に上っている。

緊張をほぐし元気を出す「エネジャイザー」として行った、四つのボールを同時にパスするゲーム

コロナ禍で学生同士の対面によるコミュニケーションの機会が激減していた時期でもあり、学生たちはワークショップを通じて、話し合いや討論によってこそ学べる大切なものや、相手の動きや発言から直接学べるものがあることを再認識していた。2020年4月に入学した学生の一人は「大学で丸2日間過ごしたのも、教室で一緒に弁当を食べたのも、異なる学年の学生と話をしたのも、この10カ月で初めてのことでした」と話していた。

今年9月4日、5日に開かれたワークショップでは、講師から「自身のライフスキルを向上させない限り、子どものライフスキル教育は行えない」という話があり、学生たちは改めて学ぶことの大切さを実感していた。また、活動した後に行う「ふり返り」の大切さを体感することも出来た。

共同作業で課題解決のための方法を探る

現在、学校現場では「アクティブラーニング」(主体的・対話的で深い学び)による授業改善が求められている。ライオンズクエスト・プログラムによるライフスキル学習は座学ではなく、自ら考え、他者と話し合い、「正解」よりも「最適解」を見いだしていくという手法を取る。答えそのものを求めるのではなく、答えの求め方を他者と一緒に協働して探すことは、まさに先の見えない時代を生き抜いていくために必要な「生きる力」の習得につながるものだ。

大学生を対象にしたライフスキル教育は、すぐに成果が出るものではない。彼らが今後、教員や保護者となって多くの子どもたちにかかわり、ライフスキルの種をまいていくことが、子どもたちの明るい将来を開くことになると信じている。

2023.09更新(332-C地区ライオンズクエスト・薬物乱用防止委員会委員/大西孝志<石巻日和LC>)