投稿リポート カンボジアでの
小学校校舎建設事業

カンボジアでの小学校校舎建設事業

青少年育成事業を推進する札幌ポプラ ライオンズクラブ(芳賀由治会長/43人)は、クラブ結成60周年(2023年9月21日式典予定)記念事業の一環として、カンボジア王国北東部に位置するトロペアントレアン村のトロペアントレアン小学校の校舎建て替えを実施。3月18日に行われた校舎の落成式に参列するため、現地を訪問した。本事業が実現するまでの経過と落成式の模様を報告する。

ライオンズクラブとして子どもたちのために何が出来るかを検討する中で、国内だけでなく、国外の子どものために活動しようというアイデアが出たのは、2019年春のことだった。アイデアだけで何の手がかりもない中、『ライオン誌』2018年9・10月号に掲載されていた新潟県・新津ライオンズクラブによるカンボジアでの小学校建設の記事を目にした。そこで早速、新津ライオンズクラブへ電話をかけて、当時の石川幸夫会長から同国での学校建設について手ほどきを受けた。19年7月と21年12月には新津ライオンズクラブを訪問し、建設事業の手順や契約などについて更に理解を深めることが出来た。この事業は、石川元会長を始めとする新津ライオンズクラブの皆さんの知見や経験、人脈がなければ実現出来なかったものと、深く感謝している。

その後当クラブでは、ミャンマーなどカンボジア以外の東南アジアの国々の状況や、事業に協力してもらうNPO、建設会社などについて調査を行った上で、農村部を中心に貧困率が高く、ポルポト政権時代に多くの有識者を失ったカンボジア王国で事業を行うことを決定した。同国での学校選定や校舎建設は、多くのライオンズクラブや日本の大手企業との事業実績のある特定非営利活動法人21世紀のカンボジアを支援する会(根岸恒次理事長)をパートナーとして進めることにした。

海外での青少年育成事業というアイデアが出てから、新型コロナやミャンマー政変などの影響もあり、議論を重ねるうちに3年以上が費やされた。学校選定に当たっては、四つの小学校の校長から厳しい現状を訴える依頼文をいただき、村の規模や小学校の児童数、校舎の状況を検討し選定した。トロペアントレアン村の人口は1856人。小学校は児童326人、教師7人で、トタン屋根の木造校舎は、老朽化により屋根や壁に穴が開き、雨天時には授業が出来ない状況だった。

校舎建設費は5万ドル(2022年9月22日付)で契約したが、急激な円安で、積み立ててきた記念事業の予算額を大幅に超えてしまう事態になった。そこで、チャリティーゴルフやクラウドファンディングなど外部に向けた募金活動で必要な資金を集めた。この募金活動は、クラブの認知向上にもつながったものと思う。建設費の支払いは、2022年10月の着工時、翌年1月の50%建設時、3月の校舎完成時に行い、その都度、現地から進捗(しんちょく)報告の写真が送られてきた。最後に届いた写真には、赤い屋根にクリーム色の壁、3教室を備えた鉄筋コンクリート造りの立派な校舎が写っていて、大変な感動を覚えた。

そして感動を胸に、落成式に出席するためクラブのメンバー10人とその子ども3人の計13人で同小学校へ向かった。日本からカンボジアの首都プノンペンに着くまでに半日以上、そこからミニバスで6時間もかかる長い道のりだった。早朝5時にプノンペンを出たが、悪路のため式典の開始予定時間に1時間以上遅刻してしまった。会場に近付くにつれ、村のど真ん中に建つ写真で見た赤い屋根とクリーム色の壁の校舎が、少しずつ大きく見えてきた。更に、猛暑の中、白いテントの下で多くの幼い児童や村の人々が私たちを待っている姿も見えた。ミニバスを降りた瞬間から、長旅の疲れを忘れるほどの盛大な拍手が延々と鳴りやむことなく続いた。現地の皆さんから伝統模様のスカーフを首に掛けていただいて式典会場へ。落成式では、カンボジア政府公務員省の副大臣、村長、校長、NPOの根岸代表、そして当クラブ代表のあいさつに続いて、テープカット、記念署名などさまざまなセレモニーが行われた。こんなに暑くて疲れないかな?と子どもたちを心配しながら、私はただ、広大な黄色い大地にポツンと建っている校舎と、子どもたちの笑顔を見ているばかりだった。

子どもたちの笑顔を見られたことに感謝しながら、現地滞在は2時間足らずで、プノンペンへの帰路に着くことになった。今までの苦労はこのためだったのかと振り返り、「言葉にならない」とはこういう気持ちのことかと思った。日が暮れて真っ暗になった悪路をミニバスで走る道すがら、これからどのように小学校との関係を継続するか、更なる事業展開はないかと思いを巡らせた。当クラブのこの事業はまだ第一歩を踏み出したばかりだと考えている。

2023.07更新(東南アジア学校建設委員会実行委員長/鏡庄吾)

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