獅子吼
地域における
こども食堂の役割と活動
大屋充(北海道・美幌LC)
私は2015年12月に美幌ライオンズクラブに入会して以来、クラブのさまざまな奉仕活動などに参加しています。本業は農業ですが、NPO法人美幌えくぼ福祉会の副理事長として微力ながら地域の障がい者(精神・知的・身体)への支援活動も行ってきました。
ライオンズに入会し、学校のPTA役員になり、それらの活動の中で地域の子どもたちの現状を見聞きするようになると、都会だけでなく田舎町の美幌でも「1日の食事が給食のみ」といった小・中・高校生の貧困や、孤食、育児放棄(ネグレクト)があることを知り、地元でのこども食堂の必要性を感じました。「誰かつくらないのかな」と町内の動向を見ていましたが、いつまで経ってもそのような動きがありません。「ならば自分で立ち上げるしかない」と思い、町内の有志と共に「地域の子どもは、地域が育てる」「地域コミュニティーの再構築」をスローガンにして、2018年4月に任意団体「美幌こども食堂」を設立。8月から食事の提供を開始しました。当初は町内2カ所の集会場で月2回ずつ開催、18歳以下の高校生まで無料、それ以上の大人は200円としました。翌年度には町内の元喫茶店を改装し、団体の拠点となる「茶来楽(チャクラ)」を整備しました。以来月5回(三つの小学校区域でそれぞれ1~2回)の開催となり、現在に至ります。
こども食堂を始めた頃は、炊飯器3台を一度に使うと施設のブレーカーが落ちたり、予想を超える120人以上の利用者が集まり途中で料理がなくなったり、開催日にボランティアの人数が不足したりと、いろいろなトラブルが発生しました。また、新型コロナによる緊急事態宣言・まん延防止等重点措置の制限下で、休止せざるを得ない時期もありました。
全国のこども食堂にはいろいろな形態があります。美幌こども食堂はスローガンに「地域コミュニティーの再構築」をうたっているので、地域の子どもはもちろん、働くお母さんや独居高齢者、障がい者の他、全町民対象の地域共生型こども食堂として毎回開催しています。この形態については、「なぜ一般町民も対象にするのか?」「こども食堂なのだから対象は子どもだけでいい」といった声を聞くこともあります。しかし門戸を広げることで誰でも来やすくなり、そうした中で貧困や孤食、地域からの孤立の解消が図られ、住民同士の地域の見守りに通じ、コミュニティーの再構築につないでいければと考えています。
私はこの活動を通して、恵まれた環境だと思われてきたこの地域でも、子ども、独居高齢者、障がい者の貧困や孤食の問題があることを再認識し、こども食堂という社会インフラの必要性を改めて実感しました。働くお母さんからは、「週に1回でも夕食の支度をせずに、仕事帰りに子どもと向かい合って食事を取ってだんらんし、帰宅したらお風呂に入って寝ることが出来るのはありがたい」といった声を聞きます。利用する子どもの中には、家庭内の状況を話してくれる子も増え、深刻な問題を民生委員や行政につなぐことが出来たケースもありました。一人暮らしの高齢者が連れ立ってこども食堂に来て、食後にお茶を飲みながらおしゃべりしている姿もあり、高齢者のサロンにもなっています。更に、利用者だった母親がボランティアとして参加してくれたり、「僕も将来、こども食堂を手伝いたい」と言ってくれる中学生がいたりします。
このように地域におけるこども食堂の役割は食事の提供にとどまらず、貧困・孤食対策はもちろん、働くお母さんの支援や高齢者対策、児童虐待の防止、障がい者支援、弱者の見守りや安否確認、新規ボランティア養成、地産地消の食育など、多岐にわたっています。
NPO法人全国こども食堂支援センターむすびえによると、全国には7363カ所のこども食堂があるそうです(2023年2月確定値)。美幌こども食堂の運営は、美幌ライオンズクラブ及びそのメンバーを始め、多くの方々の寄付や支援物資で成り立っています。国や地域行政の支援はまだまだ限定的で、各こども食堂は運営難にあえいでいるのが現状です。全国のライオンズ・メンバーの皆様、ぜひとも地域のこども食堂に、温かいご支援・ご協力をよろしくお願いいたします。
(15年入会/47歳)
2023.03更新