トピックス 普段の準備の重要性を知る
アラートセミナー

普段の準備の重要性を知るアラートセミナー

11月11日、兵庫県姫路市の姫路商工会議所大ホールで、335複合地区アラートセミナーが開催された。今回は334、336、337複合地区からもアラート関係者が集い、約150人が参加した。セミナーでは地区及びクラブの災害支援の事例発表とパネル・ディスカッションを行い、各クラブのアラートの取り組みの一助となることを目指した。

事例発表では、337-B地区(大分県・宮崎県)の前地区ガバナーである佐藤哲章地区アラート委員長(宮崎県・高千穂ライオンズクラブ)が、今年9月の台風14号で大きな被害の出た宮崎県の被害状況と社会福祉協議会との連携協定について説明。佐藤委員長は2019年に広島で開かれた東洋・東南アジア・ライオンズ(OSEAL)フォーラムでのアラートセミナー参加をきっかけに、地区のアラート対応の準備を進めていたことが迅速な活動につながったと発表し、今後は地区からクラブへと浸透させることが課題だと締めくくった。

次に静岡ライオンズクラブの杉山節雄さん、横川泰之さんから、同じく9月に発生した台風15号で被害を受けた静岡市清水区の状況と活動についての報告があった。静岡ライオンズクラブでは支援活動と並行して、他地区からの支援の受け入れにも当たった。同クラブでは、18年の西日本豪雨災害の際に支援に奔走した336-B地区(岡山県・鳥取県)の藤井信英第1副地区ガバナー(岡山みらいライオンズクラブ)ら、アラート活動の経験者に対してSNSなどを通じて支援を呼びかけた。それにより多くのクラブから応援を受けられたとの報告は、今後の参考になるだろう。

最後に、2021年10月に発生した和歌山市内を流れる紀の川に架かる六十谷水管橋の崩落事故に際しての支援活動の事例を、当時、335-B地区(大阪府・和歌山県)のリジョン・チェアパーソンを務めていた太田勉さん(和歌山伏虎ライオンズクラブ)が報告。被災地のリジョン及びゾーンでの活動では、当時の正岡章335-B地区ガバナーと津田勝之第1副地区ガバナー(現地区ガバナー)の指揮による迅速な初動の下、必要とする家庭に和歌山伏虎ライオンズクラブが備蓄していたウォータータンクを配布して高い評価を受けたとの発表があった。

今回のセミナーのテーマは「Be Prepared! 普段の準備がいかに大切かをみんなで知ろう!」。事例発表の後のパネル・ディスカッションは私が進行役を務め、いくつかのアジェンダ(討論のテーマ)で議論を行った。今までアラート活動に取り組んでいなかったクラブのメンバーからは、実際に災害が発生した時になって非常に苦労したという話もあり、平時の準備の大切さを参加者全員が共有した。発災した時に備蓄物資があるのと一から集めるのとでは、支援活動のスピードに雲泥の差が出る。迅速な支援のためにはクラブによる援助資金の積み立てと共に、タオルやポリタンクなどを備蓄しておくことが重要だ。また支援物資の調達について、地元業者とメンバーの役割分担を明確にしておく必要もあると感じた。

パネル・ディスカッションでは会場の参加者にも意見を求め、前述の藤井第1副地区ガバナーの他、日本ライオンズ・アラート委員会の坂本惠市アドバイザー(大阪府・松原ライオンズクラブ)、長年アラート主体の活動を続けている兵庫県・明石魚住ライオンズクラブの橋本維久夫幹事から、それぞれの体験を聞くことが出来た。

近い将来と予測されている南海トラフ巨大地震では、最悪の場合で30万人以上の死者が出ると想定されている。地震による津波の高さは最大40mに達するとの予測もある。甚大な被害の中で、ライオンズ・メンバーは被災者でありながら、支援に動かなければならなくなることが予想される。

自然災害はいつ、どこで起こるか分からないが、一つはっきりしていることは、その規模が以前に比べて甚大になっていることだ。そうした災害への備えとして、参加者の一人、335-C地区(京都府・滋賀県・奈良県)の神﨑守元地区ガバナー(京都やわたライオンズクラブ)からは、日本に古くからあった知恵が今も有効ではないかとの示唆があった。かつて「向こう三軒両隣」と言われたように、どこに、どんな人が住んでいるかを知っていれば、一分一秒を争うような災害でも確実な救援が出来る。更に、災害時に欠かせない水の確保には井戸が有効であると指摘。その水の運搬用には病院で廃棄されるポリタンクを集めて洗浄して各家庭に配布してはどうか、また、井戸水が飲料として適応しているか定期的に調査することもライオンズの活動として出来るのではないか、というアイデアも提示された。

今回のアラートセミナーでは、次に起こるかもしれない災害にどう対応するか、参加者は大きなヒントを得たと確信している。発表した全員が、平時の準備の重要性を熱く語ったことが印象的だった。今回のセミナーでアラート活動に携わるメンバーの絆が更に強まり、災害時にライオンズクラブの組織力が発揮されることを期待したい。

2022.11更新(335複合地区アラート委員長/団英男)