トピックス SONの夏季全国大会を
ライオンズが支援

SONの夏季全国大会をライオンズが支援

スペシャルオリンピックス日本(SON)の夏季全国大会(2022年第8回スペシャルオリンピックス日本夏季ナショナルゲーム・広島)が11月4〜6日に開催され、47都道府県の各地区組織から出場した知的障害のあるアスリート約900人が、日頃のトレーニングの成果を発揮した。

SONは4年に1度の夏季と冬季の世界大会の前年に全国大会を開催しており、今大会は来年の夏季世界大会(ドイツ)の日本選手団選考を兼ねる。4日の開会式に続いて、5日と6日には、陸上競技、サッカー、テニス、バドミントン、フライングディスク、バスケットボール、柔道、ボウリング、卓球、競泳、馬術の11競技と、自転車競技のデモンストレーションが、県内の3市1町、8競技会場で行われた。

開会式であいさつする山田實紘元国際会長

開会式は広島市の県立総合体育館(広島グリーンアリーナ)で行われ、沖縄県を先頭に各都道府県の選手団が入場。有森裕子大会会長はあいさつの中で、4年ぶりの大会に向けた喜びと期待を述べると共に、「本当に大事なのは大会を次の機会につなげること、次に何かを生み出すこと」と述べて、この大会を知的障害者の社会参加や共生社会の実現につなげていくことの重要性を指摘した。有森会長のあいさつの後、室伏広治スポーツ庁長官、湯﨑英彦広島県知事から来賓あいさつがあったのに続いて、SOを支援するライオンズクラブ国際協会を代表して山田實紘元国際会長がスピーチ。「こうしたすばらしい大会を支援させていただけることに感謝しています。(中略)ライオンズクラブとしては、SOの重要な理念である『ミッション・インクルージョン』に賛同し、健常者と知的障害のある方がコミュニティーの中で共生する社会を作るという目標の実現に向けて支援させていただいている」と述べた。

ライオンズクラブ国際財団(LCIF)は2001年からSOとパートナーシップを結び、今大会でも実施された「オープニングアイズ・プログラム」への支援を通じて、アスリートの眼の健康を守っている。また、日本国内では2017年6月に、SONと一般社団法人日本ライオンズが共生社会の実現を共通の目標としてパートナーシップを締結。ライオンズクラブは公式スポンサーとしてナショナルゲームを支援し、18年9月の愛知大会(夏季)では334-A地区(愛知県)、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で直前に中止となった19年2月の北海道大会(冬季)では331-A地区(北海道・道央)が、事前広報事業のトーチランの実施や大会運営の協力に当たった。

今大会で新たに追加された柔道競技の表彰式(写真提供:スペシャルオリンピックス日本)

今回の広島大会への支援には、LCIF交付金30万ドル(4082万9308円)と、国内のライオンズクラブから寄せられた協賛及び支援金約2150万円(うち664万6413円は北海道大会の繰越金)が充てられた。336-C地区(広島県)では2021-22年度に、三島英揮地区ガバナー(当時)を部会長とする第8回スペシャルオリンピックス日本夏季ナショナルゲーム・広島ライオンズ部会を組織。2022-23年度弓場秀俊地区ガバナーの指揮の下、大会ボランティアの動員を行った。また大会役員として336 複合地区の福永栄一2021-22年度協議会議長、三島336-C前地区ガバナー、池原堅2022-23年度協議会議長が大会運営に関わり、開催までの準備期間を含め約1年半にわたりスペシャルオリンピックス広島事務局のサポートに尽力した。

336-C地区では、採火式・分火式を始めとするトーチランの他、大会準備期間を含めた約8000食のケータリング手配や宿泊サポート、各競技会場の表彰準備とプレゼンター役などを担当。採火式を含むトーチランでは150人、各競技会場では3日間で350人、述べ500人のメンバーがボランティアとして大会を支えた。

LCIFの資金提供で実施されているオープニングアイズ・プログラム。ボランティアの検眼士や眼科医が、知的障害のあるアスリートの特性にうまく対応しながら検査を行う

開会式の会場となった県立総合体育館の剣道場では4日と5日の2日間、アスリートの健康増進を目的としたヘルシー・アスリート・プログラム(HAP/ハップ)が行われた。HAPにはオープニングアイズ(眼の健康チェック)、スペシャルスマイルズ(口腔<こうくう>の健康チェック)、ヘルシーヒアリング(耳の健康チェック)、ヘルスプロモーション(栄養・生活習慣のチェック)、ファンフィットネス(筋力・柔軟性・持久力のチェック)、フィットフィート(足の健康チェック)の6部門がある。このうちLCIFがSO国際本部に資金を提供して実施されているのがオープニングアイズだ。

オープニングアイズでは問診、近方視力、立体視、色覚、遠方視力、カバー(斜視)、屈折、眼圧、スリットランプ、眼底の各検査を実施する。検査によって矯正が必要と診断されたアスリートには、眼鏡やスポーツゴーグルなどを無償で提供。ワールド・スポンサーであるアイウェア・メーカーのサフィロ・グループが眼鏡フレーム、光学製品メーカーのエシロールがレンズを提供している。アスリートは検査後にその場でフレームを選んで調整してもらい、後日、レンズが入った眼鏡が届く仕組みだ。眼鏡の処方を受けたアスリート2人の保護者は、次のような話を聞かせてくれた。

「小さい時から視力が低くて眼鏡は持っているが、これまでは日常生活に支障が出るほどではなかった。今回検査を受けて、初めて乱視が進んでいると指摘してもらった」
「眼鏡を作るのは初めて。本人が症状を訴えることはなかったが、書き物をする時に手元に顔を近づけるのが気になっていた。検査項目も機器も人間ドックで受ける検査より充実していて、本当にありがたい」

SONのHAP担当委員長でオープニングアイズ部門のディレクターを務める加藤一幸理事は、今後はナショナルゲームのような大きな大会だけでなく、各地区でもHAPを実施していきたいと話している。
「ナショナルゲームに出場するアスリートは比較的自立性が高いのですが、本当にこのプログラムを必要としているのは、各地区で日常的にプログラムに参加しているアスリートだと思います。これから地区組織にHAPの活動を広げていくために、各地のライオンズクラブの皆さんにご支援をいただければと考えています」

広島大会は11月6日に閉幕し、閉会式では次の開催地へ大会旗が引き渡された。次回の2024年第8回スペシャルオリンピックス日本冬季ナショナルゲーム(仮)は、長野市と北海道名寄市で開催される予定。

2022.11更新(取材・撮影/河村智子)