奉仕活動夏休み最後の週末は
地元愛育む伝統の体験

夏休み最後の週末は地元愛育む伝統の体験

大府(おおぶ)市にあるJAあぐりタウンげんきの郷の芝生広場で8月27日、「OBUおはやしフェスタ」が開かれた。この催しは、大府ライオンズクラブ(加古丞二会長/60人)が結成50周年記念事業の一つとして開催した。サブタイトルには「大府のおまつり再発見」とあり、地域の伝統的な行事の中から子どもが楽しめそうな要素が数多く盛り込まれている。例えば、市内四つの神社の祭礼などでお囃子(はやし)を奏でる6団体による演奏や、小学生限定の餅まき大会など、秋祭りの雰囲気を楽しみながら地域の文化や歴史に触れられる内容だ。前日まで雨の予報で開催が危ぶまれたが、当日は一度も降られることなく実施された。

会場の複合施設には日本最大級の産地直売所があり、普段から家族連れが多く、特に土日は買い物客などで終日混み合う場所。お囃子や餅まきの他に、祭りにつきものの射的やスーパーボールすくいなども用意され、子どもから大人まで1000人ほどが夏休み最後の週末を楽しんだ。

餅まき用の餅を準備するライオンズ・メンバー

この記念事業は、加古会長が日頃感じていた「どうにか出来ないものか?」という思いから始まった。少子化により全国的に人口が減少する中、大府市は人口増加を続ける数少ない自治体だ。子育て支援や住環境整備など計画的な町づくりを推進してきたことが功を奏し、「住み続けたい自治体」として特に子育て世代の支持を集める。そんな大府市内の神社の祭礼では、餅まき(餅投げ)の風習がある。大人も子どもも入り交じって行われるが、つい本気になった大人が餅を取り合ってぶつかり合ったり、勢い余って転んだりして、子どもが危ない目に遭いそうになることがある。加古会長はそんな場面に出くわすたび、「子どもだけで思う存分餅拾いが出来たらどれほど楽しめることか」と思っていた。

2021年4月に行われた最初の50周年事業実行委員会で、「子どもたちに笑顔を、記憶に残る思い出を」が記念事業のキーワードとなった。個人的な思いだった加古会長の「子どもが安心して楽しめる餅まき」というアイデアは、このキーワードにぴたりとはまった。餅まきのような地元の風習の楽しさを子どものうちに味わってもらえば、将来地元の行事に携わるきっかけにもなる。こうして周年事業は、餅まきを中心に子どもたちに地域の祭りの楽しさを感じてもらう催しに決まった。

夏の暑い時期に餅まきを行うことにはクラブ内で懸念もあったが、どうしても子どもに楽しんでほしいという思いが勝った。会場では早めの消費を呼びかけた

子どもを対象に餅まきを行うと決まると、通常は大人が担う「餅をまく役」も子どもにやってもらおう、ということになった。クラブは市内の全児童数分のチラシを作って小学校へ配布し、餅のまき手120人を募った。全体の2~3%から反応があれば150人近くは集まるだろうという見通しだったが、約2週間で応募数は200を超え、最終的には400人を超えた。まき手の120人は抽選で決め、落選者には「お祭りに来て、餅拾いにご参加ください」と当日の参加を促した。餅拾いには、当日配られる整理券があれば誰でも参加出来るようにした。

餅まきは11時と15時の2部制とし、用意した6000個の中には抽選番号付きの当たり餅も入れた。当たり餅は抽選会のエントリー権とし、当選者には食品や日用品などの賞品を用意。1等賞は、東京ディズニーリゾートのペア入場券。親子一緒に楽しんでほしいとの願いを込めた。

「おはやしフェスタ」というタイトルの通り、会場を盛り上げたのはライオンズの協力要請に応じた六つの囃子方の団体だ。コロナ禍で日頃の成果を披露する場が大幅に減っていた団体にとっても、この催しは良い機会となったようだ。ライオンズからは、参加団体に一つお願いをしていた。

「子どもたちに記憶に残るような思い出を作ってほしかったので、自由に太鼓をたたかせてあげられないかと、各団体に相談しました。普段のお祭りでは関係者しかたたけませんが、きっと子どもたちは『一度はたたいてみたい』と思っているはずですから」(加古会長)

団体側も「子どもに興味を持ってもらえるならば」と惜しみなく協力してくれ、各団体のブースには自由にたたける太鼓が設置された。クラブのもくろみ通り、この企画は子どもたちに大人気。実際にたたいてみて太鼓に興味を持った子どもには、櫓(やぐら)に上がって腕前を披露する機会が与えられた。

さまざまな催しでにぎわう会場では、時折、あちらこちらから子どもの悲鳴が聞こえてきた。悲鳴が上がった場所には必ず赤い顔をした大人形がゆらゆらと立っている。市内の神社の祭礼に福神として登場する「猩々(しょうじょう)」だ。猩々が持つ竹の棒で頭を触られると福と徳を授かると言われ、親は子どもを猩々の元へ連れて行こうとするのだが、子どもは怖がって悲鳴を上げて逃げ回る、というわけだ。市内の神社の猩々が一カ所に集まることはめったにないそうで、このイベントならではの光景だ。

「参加した子どもたちが、一人でも多く地域のお祭りに携わるようになってくれれば、このイベントは成功したと言えます」。加古会長がそう話すように、一日だけですぐに変化が表れるわけではない。クラブではこの日の経験で子どもたちに地域の伝統や文化に興味を持ってもらい、いずれはその担い手に育ってほしいと願っている。

会場では、長草天神社と子安神社の祭りに登場する猩々が練り歩いた。写真は長草天神社のどぶろくまつりの猩々

この周年事業を経験することで、子どもたちよりも先に変化が芽生えたのはライオンズの方だった。これまでクラブ単独で行う活動が多かったが、今回の事業は地域の人たちと手をつながなければ実現出来ないものだった。中でも、市内にある至学館大学の学生ボランティアの活躍は目を見張るものがあった。受付から餅まき用の餅のセッティングなど、運営業務全般を35人の学生たちがサポート。まさに獅子奮迅の大活躍をしてくれた。これまでにもクラブの事業で何度か学生ボランティアに参加してもらったことはあったが、今回は大学に依頼をして学生を派遣してもらった初めてのケース。自ら手を挙げて参加してくれた学生たちだけあって、何事にも意欲的に取り組んでくれた。

「これまでは外部の団体と協力して何かを行うという経験が少なかったこともあり、いろいろと発見の多い周年事業でした。今回得た、周囲を巻き込みながら事業を進めていくというノウハウを、今後のクラブの取り組みに生かしていければと思います」(加古会長)

大府市でも、ライオンズクラブが奉仕団体であることは知られているが、具体的に何をしているのかまではイメージが湧かない人が多いと言う。この日の囃子方の団体や学生ボランティアのように「あのイベントをライオンズさんとやりましたよね」という人が増えていけば、クラブのPRとしても大きな効果があると言えるだろう。

2022.10更新(取材・動画/砂山幹博 写真/宮坂恵津子)