奉仕活動地域の力を結集し
宝の海の環境を守る

地域の力を結集し 宝の海の環境を守る

愛媛県の最南端、高知県との県境にある愛南町。西は豊後水道、南は太平洋に面して複雑に入り組んだリアス式海岸が連なり、青く美しい海のすぐそばまで緑濃い山々が迫る。そんな豊かな自然の恵みを受けて、愛南町は柑橘の「愛南ゴールド」や、「愛南びやびやかつお」に代表される山海の幸が豊富。カツオは「町の魚」に指定されていて、「びやびや」のネーミングは抜群の新鮮さを表している。カキの養殖も盛ん。山の栄養分がたっぷり流れ込む御荘(みしょう)湾では、夏は肉厚で濃厚な味わいの岩ガキ、冬にはふっくらとして潮の香りが強いマガキが育まれる。

その御荘湾の最奥部に位置する片の浜で、18年前から年2回の清掃を行っているのが、愛南町を拠点に活動する南宇和ライオンズクラブ(岡澤エディ会長/35人)だ。春と秋の清掃活動には、クラブの呼びかけに応えて町内の多くの団体・企業から参加者が集まる。この春は、5月28日に実施した。

午後1時半、岡澤会長は集まった参加者を前に「今日の清掃活動だけでなく、毎日の生活の中でゴミを減らす、Refuse(発生回避)、Redude(排出抑制)、Reuse(再使用)、Recycle(再資源化)の4Rを実行することで、地球温暖化の防止につながります」と話した。フィリピン出身の岡澤会長は「エコロジー」をキーワードに掲げ、地球規模で環境を守るために地域から行動を起こそうと訴えている。会長あいさつに続いて、クラブから作業内容、愛南町環境衛生課の職員からゴミの分別について説明を受け、清掃作業が始まった。

作業開始のかけ声と共にいち早く動いたのは、見るからに屈強そうな一団。護岸ブロックの斜面に打ち上げられた丸太や大きな金属片を次々に運び上げる。障害物が取り除かれたところで、ゴミ袋を手にした参加者が散らばり、木片やペットボトルなどのゴミを拾っていく。護岸ブロックから伸びる突堤の下には低木が茂る草地があり、養殖用のフロートやブイなどが多数散乱していた。丈高く伸びた草地に分け入って漁業資材を拾い集める役割は、主に消防本部の人たちが担当。集めたゴミがある程度まとまると、すぐに軽トラックに積み込んで運び出される。毎年恒例の事業なので、勝手が分かっている参加者が多いのだろう。皆がそれぞれの持ち場で、ひたむきに作業に打ち込んでいた。

深く細く入り込んだ御荘湾。片の浜は写真右端から更に奥に位置する

南宇和ライオンズクラブは2010年7月、愛南町の自然のすばらしさを親子で再認識してもらおうと「どくとるアイアイ環境教室」(『ライオン誌』2010年10月号)を開催した。講師に招いた「どくとるアイアイ」は、動物学者でマダガスカルに生息する猿のアイアイの保護に取り組む島泰三博士。この教室では親子で釣り上げたコダイ、アジ、メジナ、ベラなど種類豊富な魚を観察した後、すり身やフライ作りに挑戦した。後日、実行委員長だった森岡知昭さん宛てに届いた手紙で、島博士は「御荘湾は国の宝です」「御荘湾の特別さと大切さは、どんなに強調してもしすぎることはありません」と力説している。

何がそんなに特別なのか? 幅1km、奥行き6kmの御荘湾には、希少な生物が数多く確認され、中でも干潟に生息するドロアワモチ、シオマネキは、愛媛県レッドデータブックの絶滅危惧I類(絶滅の危機に瀕している種)に指定されている。また、御荘湾の汽水域は環境省の「日本の重要湿地500」に選ばれ、生物多様性を守る上でとても重要な場所なのだ。その汽水域とは、湾の最奥部に流入する僧都川の河口部に広がり、地元では「片の浜」と呼ばれる干潟のことだ。

南宇和ライオンズクラブが5月30日の「ゴミゼロの日」に合わせて清掃活動を始めたのは2002年。片の浜での清掃活動は、その2年後の04年にスタートした。以来、貴重な干潟の環境を守るために、毎年春と秋に清掃を続けている。当初はクラブ・メンバーだけで行っていたが、町内の団体・企業にも協力を呼びかけて次第に参加者が増加。08年春には11団体の71人だったが、近年は200人ほどに増えてきた。

今回は、愛南町役場や土木事務所、消防本部、漁協女性部、町内の銀行や建設会社など、20団体から100人余りが参加した。予定では、御荘中学校からも38人が参加することになっていたが、数日前に町内で新型コロナの陽性者が複数確認されたことから、生徒の安全を最優先に考えた学校側の判断で急きょ取りやめになった。愛南町の豊かな自然を守る大切さを学んでほしいと考えていたクラブにとっては残念な出来事だったが、その他の団体は予定通りに参加し、無事に実施することが出来た。

手際よく進んだ清掃作業は、予定より30分ほど短い1時間半で終了。集まったゴミは、可燃物と不燃物合わせて約750kg、流木や漁業資材などの大型ゴミは約2トンで、2カ所の処理場で処分してもらった。クラブは毎回、町に減免申請を行い、処理費用の免除を受けている。

清掃活動を担当する環境保全・保健福祉・アラート委員会の倉田貴一委員長は、多くの団体が参加してくれるようになったことが、クラブにとってうれしい効果をもたらしていると話す。
「清掃活動を通じてたくさんの団体との結び付きが出来たことで、スポーツ大会や献血などクラブが実施する他の活動にも協力してもらえるようになりました」

この日の活動も、清掃だけにとどまらない。作業開始前には、愛南町消防本部防災対策課の危機管理専門官から、津波を始めとする自然災害への備えについて講話があり、解散時には参加者に乾パンや缶詰などの非常食が配られた。過去には非常食の試食会を行ったこともあり、毎回、防災意識を高めるための呼びかけを行っている。片の浜のある御荘地区は、南海トラフ地震による最大津波高が約9mと想定され、大きな浸水被害を受ける恐れがある。海の環境を守る清掃と併せて、命を守る防災の啓発活動にも一役買っているのだ。

地域の力を集めて海の環境を守るこの活動が高く評価され、南宇和ライオンズクラブは2021年7月、海上保安庁長官の表彰を受けた。

2022.07更新(取材・動画/河村智子 写真/宮坂恵津子)