奉仕活動演奏出来る喜びと
努力の大切さ知る晴れ舞台

演奏出来る喜びと 努力の大切さ知る晴れ舞台

6月5日、東京都足立区の西新井文化ホールで「あだちけいおんフェスタ ライオンズカップ2022」が開催された。東京足立ライオンズクラブ(渡辺隆之会長/28人)が主催、東京足立中央ライオンズクラブと足立区教育委員会が共催し、高校の軽音楽部が出場する大会だ。2013年に第1回を開催し、今年で10回目を迎えた。

始まりは十数年前、東京足立ライオンズクラブで同フェスタの実行委員長を務める髙橋秀樹さんが、足立区内にある母校の文化祭を訪れた時にさかのぼる。自身もかつて在籍していた軽音楽部の部員の保護者から、こんな話を聞いた。
「軽音楽部の子どもたちには、多くの人に演奏を聞いてもらう場がない」

確かに、同じ音楽の部活動である吹奏楽部には地区大会や全国大会へとつながる大きな大会があるのに、軽音楽部が舞台で演奏する機会はせいぜい文化祭くらいしかない。大勢の人に演奏を披露することが出来る「晴れ舞台」があれば、生徒はどんなに喜ぶことか、という話であった。今でこそ、軽音楽部の大会が盛んに開かれているが、髙橋さんがこの話を聞いた十数年前は、ようやく全国大会が開かれるようになった黎明(れいめい)期。出場しようにも、演奏が相当うまくなければ音源のみによる予備審査で落選してしまうので、「晴れ舞台での演奏」は夢のまた夢であった。

「真剣にバンド活動に取り組む高校生たちに、大きな舞台で演奏する楽しさを知ってほしい」
そう考えた髙橋さんは、母校の軽音楽部だけではなく、足立区内の高校生バンドのためにひのき舞台を用意しようと思い立った。もともと足立区は、小学校は金管バンド、中学校では吹奏楽が盛んな区。目指す場があれば、音楽を通じてより充実した高校生活を送れるだろうし、目標に向かって努力することの大切さを学ぶことも出来る。まさに、ライオンズクラブが目指す青少年健全育成にふさわしい事業となるはずだ。

それからの行動は素早かった。区内にある高校の先生が都の軽音楽部連盟の立ち上げに携わっていたことを知り、早速ヒアリング。大会運営のひな形に沿って1年半がかりで準備を進めた。そして、区内の全ての高校に大会実施の案内を出したところ、ほとんどの高校が参加を表明した。「演奏を聞いてもらう場がない」というのは、どの高校にも共通の思いであったことが改めて明らかになった。

第1回の「あだちけいおんフェスタ ライオンズカップ」は、9校が出場して開催された。各校代表のバンド1組が出場し、持ち時間10分でパフォーマンスを行って、優勝、準優勝と特別賞を競う。演奏する楽曲は、著作権の問題があるのでオリジナル曲を推奨している。審査項目は、個人の技術及びバンドとしてのまとまりを評価する「演奏技術」、楽曲の出来を評価する「作詞・作曲・アレンジ力」(コピー及びカバー曲の場合はその完成度)、自分の思いや情熱をどれだけ表現出来たかを評価する「表現力」、聴き手にどれだけ感動を与えることが出来たかを評価する「魅力」の4項目。項目ごとに審査員が採点し、合計点で受賞者を決める。

最初は、普段からつながりのある足立中央ライオンズクラブと共に手探りで始めた大会だったが、やがて足立区教育委員会が共催に加わり、理解を示す協賛企業も徐々に増えていった。更に、東京都公立高等学校PTA連合会東部北地区の協力により、足立区内だけではなく、台東区や荒川区など近隣区の高校からの参加も増えてきた。

回を重ねるごとに運営も洗練され、多い時で15校が出場する大会へと成長したが、2020年はコロナ禍で中止に。21年は無観客で開催し、動画共有サイトの生配信を利用したリモートでの実施となった。出場したバンドの演奏からは、全体練習が出来ずに苦労している様子も感じられたという。生配信は、3年ぶりに有観客で実施した今大会でも行い、会場に来られない人たちにも視聴してもらった。

第9回となった今回の出場校は6校と少なかったが、クラブではコロナ禍による一時的なものと見ている。というのも、この大会には学校側も期待を寄せているからだ。優勝を目標に掲げて年間計画を設けている学校もある。一校につき一つのバンドしか出場出来ないため、出場権をかけて学内でも競い合い、生徒たちの練習に熱が入るようになったという。そのためか、年を追うごとに出場するバンドのレベルが上がっていると、ライオンズ・メンバーは口をそろえる。過去の出場者の中には、メジャー・デビューを果たした人もいる。今大会で演奏を披露してくれたゲスト・バンド2組にも、出場経験のあるOB・OGが在籍していた。

成果は他にもある。あだちけいおんフェスタがきっかけとなって学校間で軽音楽部の交流が生まれ、合同ライブを行うという動きにも発展している。また、この大会で受賞した実績は内申書の特記事項に記入出来るので、就職や進学の際に有利になる可能性があると、学校側の評価も高いのだ。

「結果が良ければうれし涙、悪ければ悔し涙と、大会の中で涙を流す高校生を目にする機会が増えています。それだけ一生懸命取り組んできたのだと、我々メンバーももらい泣きすることがあります」(髙橋さん)

ライオンズクラブによる単独の大会なので、優勝校にその先の大会の出場権が与えられるわけではない。が、そうしたニーズがあることは間違いない。より広く参加を募れば、手を挙げる高校があるのも確かだ。しかし、キャパシティーの問題もあり、大会の規模をこれ以上大きくするのは難しいという。例えば、ライオンズによる「東京都大会」「全国大会」が出来れば、ライオンズクラブの知名度も上がり、ひいては会員増加にもつながるのではないか。クラブはこの事業にそんな可能性の広がりを感じている。

2022.07更新(取材・動画/砂山幹博 写真/関根則夫)