投稿リポート
日仏高校生
オンラインで食の国際交流
山口県・長門ライオンズクラブ
#青少年支援
2019年末に発生したコロナ禍がいまだ収まらない22年。渡航制限もあり、日本と外国の青少年を交換しホームステイ等の経験を提供するライオンズクラブのYCE(ユースキャンプ及び交換)事業については、従来通りの活動は断念せざるを得ない状況が続いている。それでも何とかコロナ禍でも実施出来る方法を模索していた長門ライオンズクラブ(43人)の国際YCE委員会は、336-D地区(島根県・山口県)YCE委員会のバックアップを得て、前年度に引き続き日本と海外の高校生がオンラインでつながって英語でコミュニケーションを図りながら一緒に料理を作る、食を通じての国際交流事業を実行することにした。
最初はアジアの近隣諸国でパートナーを探し、その後「やはり英語圏が良いのではないか」という意見から、これまで交流したことがある関係先をたどるも苦戦を強いられる状況が続いた。そうした中、21年末に開かれた委員会で、「伝説の家政婦」と呼ばれるタサン志麻さんが長門市の出身であることに思い至り、会員の中に何とかご本人と連絡の取れる人がいたことから、そのわずかなつてをたどって、志麻さんのご主人のロマンさんと、彼の母国フランスでレストランを経営しているご友人に協力してもらえることになった。
瀧本和宏地区YCE委員長の承認を得て、ゾーンの奉仕事業として進めていたが、一時は新型コロナが再拡大し、委員会の開催もままならず、活動することに敏感にならざるを得ない状況にもなった。それでも地元の英会話教室経営者や生徒の保護者らの協力を得ながら、少しずつ開催のめどが立つようになり、内容が煮詰まっていった。開催日は3月21日。会場は昨年と同じく地元長門のイタリアン・レストラン、リストランテ・アンジェラの厨房(ちゅうぼう)を借りられることになり、オンラインでフランスの高校生と、フランス人シェフ、そして東京のロマンさんの4カ所をZoomでつなぐ。メニューは、フランス・オーヴェルニュ地方のプレシャスール(鶏肉の漁師風煮込み)と、ヴィシソワーズ(ジャガイモの冷製スープ)に決定した。シェフが英語で行う指導に沿って、日本の高校生5人とフランスの高校生2人が同じ料理を同時に作っていく。高校生からシェフへの質問は全て英語。日頃の勉強の成果が試される良い機会だ。
いざ当日になると、Wi-Fi環境に不具合が発生したり、事前にシェフからもらっていたリストにはない食材が必要になったりと、ハプニングも多い本番ではあったが、参加した高校生にとってはそれらも含めて貴重な体験になったようだ。彼女たちは地元公立高校の英語部部員で、海外の人と英語で会話を交わすのは初めてとのこと。最初は少し緊張していたものの、だんだん打ち解けて楽しそうな笑顔が増えてきた。高校生たちは、シェフの英語と身ぶり手ぶりに全神経を集中させて説明を聞く。使うジャガイモの数を英語で質問したり、鶏肉を焼きながら焼き色をシェフに確認したり、手も頭も目も耳もフル稼働であった。
渾身(こんしん)の料理をきれいに皿に盛り付け、オンラインでつないでの試食会。それぞれの感想を述べる場面でも堂々と英語で会話する子どもたちを見て、多くのハードルを乗り越えてこの事業を実施して良かったと実感した。長門という小さな地域からグローバルな世界に飛び出していける人材を育成することの喜びを、心の底から感じた瞬間だった。
2022.05更新(会長/兼澤智俊)