テーマ
子どもたちの未来のため
地区挙げて子ども食堂支援
333-C地区(千葉県)
#食料支援
2021年12月、クリスマスを1週間後に控えた17日から19日にかけて、千葉県内各地の子ども食堂にサンタクロースがやってきた。真っ赤なイチゴが乗ったクリスマスケーキのプレゼントに、子どもたちは明るい笑顔を見せた。サンタクロースに扮したのは、ライオンズクラブのメンバーたち。「ライオンズのサンタさん」と名付けられたこの活動は、333-C地区(千葉県/藤原宏髙地区ガバナー)が地区内クラブに呼びかけて実施したもので、子ども食堂や学童クラブなど107カ所に約1万4000個のショートケーキが届けられた。
ライオンズクラブ国際協会は「食料支援」をグローバル重点分野の一つに掲げ、地域で支援を必要とする人が栄養ある食べ物を手に入れられるよう、世界各地のライオンズクラブが活動している。日本国内でもコロナ禍によって日々の生活に困る人が増える中、333-C地区は今年度、地区を挙げて子ども食堂の支援に取り組んでいる。
子ども食堂の活動が始まったのは2012年頃。東京都内にある八百屋が食事の偏りがちな子どもたちのために店の一角で開いた「こども食堂」が、この名称を用いた最初だと言われる。同じ年に厚生労働省が実施した国民生活基礎調査では、貧困状態にある18歳未満の子どもが過去最悪の16.3%に上り、中でもひとり親世帯の子どもの貧困率が先進国の中で突出して高いことが明らかになった。そうした家庭の子に無料で食事や学習支援を提供する場も子ども食堂と呼ばれるようになり、その活動は全国へ広がっていった。
子ども食堂やフードバンクによる食の支援に対する社会的な注目度は、新型コロナウイルス感染拡大を機に一気に高まることになった。認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえが行った調査によれば、子ども食堂の数は2020年の4960カ所から翌21年には6007カ所に増加している。コロナ禍によってひとり親世帯を始めとする弱い立場の人たちが苦境に陥り、支援の動きが活発化。全国のライオンズクラブでも、支援に乗り出すクラブが相次いだ。
2019-20年度の第2副地区ガバナーだった藤原ガバナーは、既に支援を手がけていた松戸中央ライオンズクラブのメンバーを介して子ども食堂の運営者から直接その活動について話を聞き、ライオンズとして取り組むべき支援の大きなニーズがあると考えた。自身が所属する船橋中央ライオンズクラブでも同じ4リジョンのクラブと合同でフードバンクや子ども食堂への支援に着手。12月には地域の子ども食堂にクリスマスケーキ2000個を配る事業に取り組んだ。4リジョンでは活動を進めながら、ライオンズの支援と子ども食堂の役割を紹介するPR動画も作成した。子ども食堂やフードバンクという言葉はよく耳にするものの、実際にどういう活動をしているのかはあまり理解されていないと考えたからだ。今年度地区幹事の脊尾尚志さんは、撮影のために各地の子ども食堂を訪問するうち、単に食事を提供するだけでなく、子どもから高齢者まで幅広い世代の交流の場として地域で重要な役割を担っていることに気付いたという。
そうした一連の流れの中で、2021-22年度の地区ガバナー基本方針として子ども食堂支援に取り組む構想がまとまっていった。
そしてスタートした2021-22年度、333-C地区は子ども食堂支援委員会を設置。地区ガバナー方針の中で子ども食堂支援の手引きを示し、子ども食堂の開催場所の確保や食材提供、財政支援など、各クラブにそれぞれが出来る支援に取り組むよう呼びかけた。地区内クラブに子ども食堂への理解を深めてもらうには、4リジョンが作成したPR動画が役立った。更に10月には、子ども食堂研修会を会場集合とZoomを併用して開催。千葉県子ども食堂連絡会の髙橋亮代表による基調講演や、支援に取り組むクラブの活動事例の発表を通じて、子ども食堂支援の具体的な方法を共有した。
そして12月、子ども食堂にクリスマスケーキを届ける「ライオンズのサンタさん」には、地区内114クラブのうち77クラブが参加。子どもたちにプレゼントするショートケーキは、この事業の趣旨に賛同した山崎製パン株式会社が1万3600個を原価で提供してくれた。配布当日は各クラブが千葉市と松戸市にある山崎製パンにケーキを引き取りに行った他、工場から離れた地域のクラブの分は山崎製パン側の配送ルートで近くのコンビニまで運搬する便宜も図ってくれた。ケーキの購入費用はLCIF地区シェアリング交付金を活用するなどして地区が負担したが、中には独自に追加購入して配ったクラブもあった。
「ライオンズのサンタさん」の模様は、NHK総合の首都圏ニュースを始めとするテレビや新聞各社で報じられて大きな反響を呼び、参加した各クラブには子どもたちから感謝のメッセージが届けられた。この事業によって各クラブと地域の子ども食堂が連携したことで、次の奉仕につながる下地づくりにもなった。栗田秀美333-C地区GSTコーディネーターは、「久々に奉仕することの喜びや楽しさ、やりがいを感じられるアクティビティだった」と述べ、多くの人にライオンズの活動を知ってもらうことが出来たと手応えを感じている。
333-C地区は更に活動を一歩進め、県内の子ども食堂、フードバンクの活動を支援することを目的に「千葉県ライオンズクラブ子ども食堂支援基金」を設立した。ライオンズクラブだけでなく、企業などにも広く寄付を呼びかけている。近く千葉県と同基金との連携協定を結ぶ準備を進めており、これによって社会貢献活動に取り組む企業からの協力が増えることを期待している。
2022.04更新(取材/河村智子 写真提供/333-C地区)
●333-C地区 子ども食堂支援「子どもたちの未来のために」
●子ども食堂「 ライオンズのサンタさん 」