取材リポート
ライオンズが植え守る
桜の名所・西日本編
西日本
#環境保全
過去にライオン誌で取り上げた中から、桜の名所とそれに関わるライオンズクラブの活動を紹介する特別企画。西日本からは石川、京都、山口の三つのクラブを紹介する。目に見えないウイルスに翻弄(ほんろう)される日々が長く続き、理不尽な戦争の悲劇を目の当たりにしている今、1日も早く、誰もが心穏やかに花を愛(め)でられる日が訪れてほしい。
●石川県輪島市:一本松公園など市内一円/輪島ライオンズクラブ
長く厳しい冬が去り、奥能登の輪島で桜が花開くのは4月半ば。市内にある一本松公園ではソメイヨシノに加え、シダレザクラ、ヤマザクラなど1000本近い桜が次々に満開を迎え、多くの市民が花見を楽しむ。その中には、輪島ライオンズクラブ(高森健一会長/48人)が植えた桜も数多く含まれる。
輪島ライオンズクラブは結成当初から、輪島を緑にあふれた町にしようと活動を続けてきた。最初に実施したのは結成2年目の1971年で、この時は市に苗木1000本を寄贈。その後も市内一円で繰り返し植樹を行ってきた。90年には一本松公園の中に「ライオンズの森」を設定し、シダレザクラ30本を植樹。その後もさまざまな種類の桜、更にはツバキや市の花であるミズバショウなども植えた。園内にあるゲートボール場もクラブが整備したものだ。そして、クラブ結成50周年を迎えた2020年には、一本松公園に35本、輪島港にあるみなとオアシス輪島マリンタウンの周辺に35本、更に市内の中学校3校にそれぞれ10本ずつ桜の苗木を寄贈して、合わせて100本の桜を植えた。
クラブの活動はただ植えただけで終わらない。苗木が順調に育つようにメンテナンスも欠かせない。かつては輪島塗の産地らしく、病害虫予防のため消毒殺菌力のある漆を切り口に塗ったこともある。その日はあいにく強風で、はけに取った漆が糸を引いて会員の顔や服に付着して難儀した。現在は定期的に、50周年に植えた桜の補植や剪(せん)定、草刈りなどを行い、成長を見守っている。
□公益社団法人石川県観光連盟
https://www.hot-ishikawa.jp/spot/4682
●京都市:半木の道/京都鴨川ライオンズクラブ
京都市街を流れる鴨川は、下鴨神社付近より上流では「賀茂川」に表記が変わる。その賀茂川をさかのぼって北大路大橋を過ぎると、左岸の土手の上にベニシダレザクラの並木道がある。京都鴨川ライオンズクラブ(関口智子会長/61人)が半世紀近く前に整備した「半木(なからぎ)の道」だ。
1962年に結成された京都鴨川ライオンズクラブは、チャーター・ナイト記念で河畔にケヤキを植樹したのを手始めに、「子孫に緑を残そう」という初代会長のスローガンの下、鴨川にまつわる活動に取り組んできた。当時の川は汚れ、魚も姿を消していた。2年後、市民の手で「鴨川を美しくする会」が発足すると多くの会員が加わり、クラブと連携して多彩な活動を展開していく。
そして、クラブ結成10周年の記念事業として実施したのが、ベニシダレザクラの植樹だ。賀茂川の左岸、北山大橋から北大路橋までの約800mに、10年をかけて77本を植樹。76年4月に開通した桜の遊歩道は、当時の蜷川虎三府知事によって「半木の道」と命名された。以来、枝を支える棚を作り、灌(かん)水装置を設置して、害虫駆除、施肥など桜の維持管理に努め、現在も75本を育て守っている。2019年には台風21号で4本が倒木するなど大きな被害を受けたが、クラブで補植や棚の整備を行った。
毎年桜が満開となる4月上旬には、鴨川を美しくする会と共に「鴨川茶店」を開く。花見だんごや、琴と尺八の演奏と共に花見を楽しんでもらいながら、川を守り美しくする活動を広げようという催しだ。新型コロナの影響により2年連続で中止になったが、今年は4月9日と10日に開催の予定だ。
□JR東海「そうだ 京都、行こう。」
https://souda-kyoto.jp/guide/spot/nakaraginomichi.html
●山口県下関市:深坂自然の森/下関響灘ライオンズクラブ
下関市郊外にある深坂自然の森は、大正時代に灌漑(かんがい)用水池として作られた深坂ため池を中心に、約250ヘクタールの広さがある。1999年、下関響灘ライオンズクラブ(星本武志会長/21人)はこの森を桜で彩ろうと、市民から桜のオーナーを募集して植樹を実施。2013年までに約1500本を植えた。オーナーは子どもや初孫の誕生、結婚、就職、還暦など人生の慶事を記念して応募した人が多く、桜の苗木にはそれぞれの思いを記したネームプレートが付いている。
植樹を始めて数年後、台風の被害で約50本が倒れたことがあった。オーナーが思いを込めた桜を救おうと、下関響灘ライオンズクラブのメンバーは数日をかけて引き起こし作業を行った。その後、クラブの力だけで桜を管理することは困難との判断から、06年に桜のオーナーに呼びかけて桜の手入れを行う任意団体を結成。09年にはNPO法人下関深坂さくら友の会を立ち上げ、現在も一緒に深坂自然の森の桜を守っている。
第1期の植樹から20年以上を経て大きく成長した桜の手入れは、年間を通じて行われる。1月から3月初旬は主にテング巣病に感染した枝の切除、5月から9月にかけては草刈り、8月には毛虫駆除、そして10月から12月には枝打ちとごみ拾いだ。クラブはまた、オーナー制度を始めた翌年の2000年に深坂自然の森に向かう県道沿いに桜とツツジを植樹しており、ここでは毎年秋、知的障がい者授産施設・安岡苑の利用者と職員と共に清掃活動を実施している。
□深坂自然の森
https://www.city.shimonoseki.lg.jp/soshiki/61/3206.html
2022.04更新
*特に記載のない写真は『ライオン誌』2009年3月号特集「桜とライオンズ」で取り上げた当時に撮影