取材リポート ライオンズが植え守る
桜の名所・東日本編

ライオンズが植え守る桜の名所・東日本編

今年も桜の季節が巡ってきた。全国各地でライオンズクラブが植樹したり、手入れしたりしてきた桜の花々が、見る人を笑顔にしていることだろう。今回は、過去にライオン誌で取り上げた中から、桜の名所とそれに関わる地元ライオンズクラブの活動を紹介する特別企画。東日本からは宮城、福島、栃木の三つのクラブを紹介する。

●宮城県大河原町:白石川堤/大河原ライオンズクラブ

宮城県南部の大河原町を流れる白石川の堤に、約8kmにわたって続くソメイヨシノの桜並木。残雪を頂く蔵王連峰を背景に、一斉に咲き誇る桜は「一目千本桜」と呼ばれる。「さくらの名所百選」「遊歩百選」などに選ばれた名所は、地元出身の実業家・高山開治郎氏が、1923年(大正12)に700本、27年に500本を植えたことに始まる。高山氏の功績をたたえる桜樹碑には、次の一文が刻まれている。
「愛郷奉仕ノ念止ミ難ク桜樹一千余本時価四千円ヲ本町ニ寄付栽植ス」

そんな郷土への愛と奉仕の志を受け継ぎ、桜並木の維持に一役買ったのが大河原ライオンズクラブ(渋口通会長/15人)だ。樹齢を重ねた桜並木は見応えがあるが、一般にソメイヨシノの寿命は60年と言われ、毎年枯れたり倒れたりする木がある。景観を守るためには手入れと補植が欠かせない。大河原ライオンズクラブは1979年に結成されて以来、町のシンボルである白石川堤に桜の苗木を植え続け、小中学校、公園への植樹にも取り組んだ。

大河原町ではライオンズクラブの他、高山氏が植樹を手掛けた当時から保護活動に関わってきた柴田農林高校や、調査研究やPR活動にも取り組む大河原町さくらの会が中心となって一目千本桜を守ってきた。毎年4月上旬に開かれる「おおがわら桜まつり」(22年は中止)の前には、町民総出で河川敷の清掃が行われる。

□大川原町観光物産協会 さくら名所百選の地「一目千本桜」
https://www.oogawara.or.jp/tourism/sakura/

撮影/田中勝明

●福島県石川町:いしかわ桜谷/石川ライオンズクラブ

石川町は福島県南部、阿武隈山地の西にあり、町の中央を今出川と北須川が緩やかに流れている。春にはその水面を覆うように、川の両岸にピンクの桜が咲き誇る。昭和20年代に町役場の有志が今出川沿いにソメイヨシノ200本を植え、その後も町や町民が植樹を続けた結果、両川沿いは約2000本の桜が並ぶ名所になった。谷あいの川に幾重にも重なるような景観から「桜谷」と呼ばれ、今では近県だけでなく遠方からも桜観光のバスが訪れる。

1974(昭和49)年から桜の植樹に取り組み始めた石川ライオンズクラブ(緑川泰由会長/50人)の功績も大きい。同クラブは74年5月に野木沢地区公民館の落成を祝し、ソメイヨシノ30本を公民館周辺に記念植樹した。2年後、石尊山にもソメイヨシノ200本、北須川堤防にヒガンザクラ10本などを植え、その3年後にも約200本の桜を植樹。その後も継続事業として取り組み、クラブが植えた桜の苗木は実に2000本以上、種類も豊富で、ソメイヨシノ、エドヒガン、彼岸一重、彼岸八重、沖縄寒緋桜、御衣黄(ぎょいこう)、仙台紅しだれ一重、仙台紅しだれ八重、関山ぼたん、普賢象(ふげんぞう)など10種類以上に及ぶ。

クラブでは現在も、桜の木の下刈りや剪(せん)定、支柱の整備、桜まつり後の町内清掃活動などを行っている。今年は3年ぶりの「いしかわ桜まつり」が4月13、14日に開催される予定で、河川敷やクラブが建立した石碑のあるあさひ公園などの清掃を行うことにしている。

□福島県石川町 いしかわ桜めぐり
https://www.town.ishikawa.fukushima.jp/sakura/index.php

撮影/田中勝明

●栃木県真岡市:根本山公園/真岡ライオンズクラブ

真岡市の中心部から4km程東に離れた根本山公園には、山の入り口付近から山道の両側に沿って約1000本の桜が並ぶ。植えられているのはソメイヨシノだが、樹高が高く周囲の雑木林になじむスラッとした姿だ。その桜並木の奥にひっそりと「千本桜の碑」が建っている。真岡ライオンズクラブ(髙橋昇会長/55人)が2000年に建立した記念碑だ。

真岡ライオンズクラブは1970年、結成記念事業の一つとして桜の植樹を行った。公園の桜の木は年を追うごとに成長し、多くの市民が集う花見の名所になった一方で、ライオンズが桜を植えたことは忘れられていった。当のクラブでさえ、結成から30年が経つ頃には結成当初のメンバーは一人もいなくなり、記録も残っていない状況だったが、先人が植えたという話は伝わっていた。そこでクラブは、30周年記念事業として碑を建立しようと計画。役所に残る古い文書を調べた結果、クラブの寄贈であることが判明し、無事クラブの功績を伝える碑を建てることが出来た。

真岡では根本山や行屋川沿いなど市内各所で約1万本の桜が咲き、「一万本桜まつり」が開かれる。根本山の桜並木には夜にはぼんぼりが灯され、多くの市民が夜桜を堪能する(22年はイベント中止、ぼんぼり点灯のみ)。

□栃木市 根本山自然観察センター
https://www.city.moka.lg.jp/toppage/kosodate_kyoiku_manabi/5052.html

2022.04更新

*特に記載のない写真は『ライオン誌』2009年3月号特集「桜とライオンズ」で取り上げた当時に撮影