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大学生が眼鏡リサイクル

ライオンズの協力で大学生が眼鏡リサイクル

世界中で約22億人が視覚障害を持ち、そのうち10億人は適切な予防措置や治療を受けておらず、8億人以上が眼鏡を入手出来ずにいる(WHO報告)。「眼鏡がないために勉強が出来ず、仕事にも就けずに、生活に困難をきたす人たちのために何か出来ないか」。こう考えて行動を起こした大学生を、ライオンズクラブがそのネットワークと経験を生かしてサポートするプロジェクトが動き出した。兵庫県神戸市にある甲南大学とライオンズクラブの335複合地区グローバル奉仕チーム(GST)がタッグを組んだ「甲南大学メガネリサイクルプロジェクト」だ。その第1弾となる活動で約1600本の中古眼鏡が集まり、1月9日、甲南大学キャンパスで活動報告と眼鏡の梱包作業が行われた。

ライオンズクラブ国際協会の「ライオンズ眼鏡リサイクル・プログラム」では、アメリカ、フランス、オーストラリアなど7カ国にある12のライオンズ眼鏡リサイクル・センターに中古眼鏡を集めて再生し、主に発展途上国で眼鏡を必要とする人たちに配布している。日本には今のところ国際協会公認のセンターはないが、2017年6月に332-C地区(宮城県)が独自に眼鏡リサイクル・センターを開設し、国内のライオンズから寄せられた眼鏡を提携団体などを通してアフリカやアジアへ送っている。甲南大学のプロジェクトは、眼鏡リサイクルに取り組もうと考えた学生たちが、インターネットを通じて国際協会の眼鏡リサイクル・プログラムを知ったことから始まった。

地域の中学校を訪問し、生徒たちに眼鏡リサイクルへの協力を求めるプロジェクトの学生メンバー

甲南大学には、入学した全学部の学生がディスカッションやグループワークを行う「共通基礎演習」がある。2019年春、これに取り組んだ5人のチームがライオンズの眼鏡リサイクルに着目。情報収集や調査を進める中で、必要とする人に眼鏡を届ける活動は、SDGs(持続可能な開発目標)の目標3「すべての人に健康と福祉を」の達成につながると考えた。そこから、地域の小中学校に眼鏡回収ボックスを設置してもらって児童・生徒と共にグローバル社会における課題を学び、回収した眼鏡をライオンズの協力で再生し海外の必要な人へ届ける、というプロジェクトのアイデアが生まれた。

学生たちと335複合地区のライオンズはその後、少しばかり遠回りして出会うことになる。奇遇にも学生の指導を担当していた山本シャーリ特任講師の母がハワイのライオンズクラブのメンバーだったこともあり、まずはアメリカ・イリノイ州にある国際協会本部事務局へコンタクトを取ったのだ。連絡を受けた国際本部は、甲南大学がある関西全域を統括する335複合地区で奉仕事業の推進を担当するGSTへとバトンをつないだ。

しかし、ライオンズとの協力が始まった矢先、新型コロナウイルスの感染が拡大。プロジェクトはたびたび中断を余儀なくされながら20年12月に始動した。学生メンバー30人はライオンズから資材の提供を受けて回収ボックスを製作、児童・生徒向けの説明動画を作成し、準備を進めた。そして、地域の学校15校(幼稚園1校、小学校6校、中学校7校、高校1校)に加えて、大学OBの協力による眼鏡店19店舗と、大学内41カ所に回収ボックスを設置し、1592本の眼鏡を収集した。

学生たちはライオンズの助言を受けながら眼鏡回収用ボックスのデザインや製作を行った

1月9日に行われた報告会には、ライオンズから三宮秀介335複合地区ガバナー協議会議長、江草長史335複合地区GSTコーディネーターらが出席。プロジェクトの学生共同代表を務める駒井伶哉さん(理工学部3年)からプログラム全体の報告があった後、六つのチームに分かれて取り組んだ各学校での活動報告があった。学生たちは朝礼の時間に呼びかけをしたり、ビデオ放送でプロジェクトを説明したりするなど工夫を凝らした。中にはこのプロジェクトを題材にしてSDGsの学習を行った小学校や、生徒会が積極的に動いて全校生徒に働きかけた中学校もあったとの報告から、学生たちの大きな達成感が感じられた。駒井さんは「一つのアイデアを実際に行動に移し、プロジェクトを実現することが出来た。協力してくださった多くの方に感謝したい」と述べると共に、この経験を通じてリーダーの役割を学び、大きな収穫を得たと話していた。

この日は活動報告の後、回収箱から取り出した眼鏡を梱包する作業を実施。これらの眼鏡は335複合地区GSTの手配で332-C地区が運営するライオンズ眼鏡リサイクル・センターが受け入れることになり、学生たちの手でセンターへ発送される。眼鏡の洗浄や度数測定などを担うこのセンターは、障害者の就労支援も兼ねている。作業や海外への発送の費用は眼鏡の受け入れ数に応じた寄付金で賄われており、今回送付する分の寄付金は335複合地区GSTが負担する。

このプロジェクトの準備段階で、学生たちは「自分たちの手で洗浄と度数測定をして、自分たちの手で必要な人々へ届けたい」という希望を持っていた。江草コーディネーターを始めとするライオンズ側はその希望をかなえようと手を尽くしたが、コロナ禍の影響で実現には至らなかった。

「我々としては、自力で洗浄と度数測定をするのは難しいのでリサイクル・センターに送付するようアドバイスをしましたが、学生たちには『自分たちの手で』という強い思いがありました。そこで、ライオンズが費用を出して度数測定器を購入しようと、眼鏡店を経営するメンバーや甲南大学OBに話を持ち掛けていました。また、大学とつながりのあるマレーシア国民大学と連携し、学生が集めた眼鏡をマレーシアへ持参して一緒に活動をする話も進んでいました。現地のライオンズクラブやレオクラブとも連絡を取って合同で進めていく予定でしたが、いずれも断念せざるを得なくなり、最終的には332-C地区のリサイクル・センターに送ることになりました」(江草コーディネーター)

残念ながら今回は実現しなかったが、今後は当初の計画通り学生たちの手でマレーシアへ眼鏡を届けることを目指して事業を継続する予定だ。プロジェクトの次の展開が楽しみだ。

2022.02更新(文/河村智子 取材・写真・動画/団英男〈ライオン誌日本語版委員会委員長〉)