取材リポート たこ揚げを
我が町の風物詩に

たこ揚げを我が町の風物詩に

1月15日午後1時。前日の冷え込みがうそのような陽気に恵まれ、白井ライオンズクラブ(ひらた新子会長/17人)と白井あすなろライオンズクラブ(佐藤信嗣会長/15人)が合同で主催する「第5回しろい・たこあげまつり」が白井総合公園で開催された。ライオンズクラブの主な活動分野の一つである青少年健全育成の取り組みで、白井市の冬の風物詩にしようと2017年から行われている。

広い公園で親子そろってたこ揚げを楽しめるとあって、1400人以上が参加する人気イベントになりつつあったが、昨年は新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、直前になって中止を余儀なくされた。今年も第6波の猛威が懸念された状況での開催となった。屋外での催しではあるが、密にならないように気を付け、感染リスクを最小限に抑えるようクラブは努力を重ねて開催を判断。何よりも「今年こそは子どもたちの喜ぶ顔を見たい」というクラブ・メンバーの総意も後押しし、感染予防対策を取っての2年ぶりの実施となった。

この「しろい・たこあげまつり」は、一般に開放されている公園で各自が持参したたこを揚げるという実にシンプルな催しだが、多くの人出でにぎわう。その秘密は、たこ揚げ以外のイベントが目白押しだから。招福踊りや獅子舞、白井太鼓倶楽部による演奏など「和」の要素が盛り込まれ、子どもたちにたこ揚げと共に日本の伝統芸能に触れる機会を与えたいというライオンズの思いが反映されている。

例年は午前10時からの開催で、会場には飲食ブースがいくつも立ち並ぶのだが、こうした飲食の出店を取りやめたのも感染予防の一環。飛沫拡散防止の観点から昼食を済ませてから来場してもらうよう、開催時間を13時から15時30分に設定した。また、開催に向けてのライオンズ・メンバー同士の打ち合わせは全て非対面のリモート会議で行われ、当日も公園内の目立つ場所に三密防止のビラを何枚も貼って注意喚起を促した。

白井総合公園を会場とする以前から、白井ライオンズクラブと白井あすなろライオンズクラブでは、たこ揚げのイベントを行っていた。ただ、白井市内にはたこ揚げが出来るような、電線がなく広い場所がほとんどなかったため、隣の市にある広場などで、地元のライオンズクラブと共同で行ってきた。

転機となったのは2014年、白井市役所に隣接する未整備だった土地に白井総合公園が出来た。以後、この公園で白井市内の三つのライオンズクラブが合同で「しろい・たこあげまつり」を開催するようになった。昨年、残念ながら1クラブが解散してしまったため、今回初めて2クラブでの開催となった。

サプライズ・ゲストも駆けつけてくれた。白井市出身で、東京2020オリンピック女子重量挙げ59Kg級で銅メダルを獲得した安藤美希子選手だ。本番2週間前の練習中に120kgのバーベルが右膝を直撃し負傷。怪我を乗り越えてのメダル獲得となったことは記憶に新しいが、その銅メダルを胸に輝かせて開会式に登場。「2年後のパリ大会に向けて、既に始動しています。次は銅メダル以上を目指して、喜びをみんなと分かち合いたい。白井から世界を目指すお子さんたちが出てくることを願っている」とあいさつした。

「和の文化に触れる」がテーマだったこともあり、笠井喜久雄市長を始めとする来賓と安藤選手、特産の自然薯にちなんだ白井市非公認キャラクター「じねんじゃー」には、自作の短歌を披露してもらった。また、安藤選手が用意してくれたサイン入り色紙50枚を来場者に手渡しする機会も設けられた。オリンピアンと触れ合えるまたとないチャンスとあって、一緒に写真を撮ろうと親子が列を成した。要望に応じて、快く銅メダルを触らせてあげていたのが印象的で、その重さに多くの人が驚いていた。

「オリンピックのメダリストとの触れ合いはきっと良い思い出となるはず。子どもたちが目標を持ってがんばることにつながれば、ライオンズの青少年育成活動としての役割も果たせたのではないかと思います」と白井ライオンズクラブのひらた会長は話している。

この催しではたこを揚げる機会を提供することと同じくらい、今年見送られた飲食ブースの出店は重要な要素だ。1店舗につき3000円の出店料を徴収し、その収益を教育委員会に寄付。寄付金は市内の中学校吹奏楽部の楽器修理代や、コンクール会場への移動費などに充てられる。出店のない今回は、寄付金の贈呈がないことを事前に市へ説明したが、市からは例年通り全面的な協力を受けることが出来た。

例えば、開会式の後に行われた「白井なし坊体操」もその一つ。梨の産地でもある白井市のオリジナル体操で、梨の栽培から食べられるまでの歌詞に合わせて体操のポーズがつけられている。梨の枝を剪(せん)定するところでは、腕を上げて指をチョキにして横に体を倒して脇を伸ばす、といった具合だ。この体操のことを知っている人も知らない人も一緒に楽しんでもらえるようにと、市の健康課所属の保健師からレクチャーを受けてから親子みんなでこの体操を楽しんだ。閉会後にはライオンズ・メンバー全員でトイレを含む公園清掃を行うが、ごみ処理では環境課がバックアップ。市とライオンズが手を携えることで成り立っている取り組みであることがよく分かる。

木に引っかかったたこを、脚立や長い棒を使って救出するのもライオンズ・メンバーの役目。忙しく会場を走り回ってたこを回収していた。また毎年、市内にある槙の木レオクラブがスタッフとして参加してくれている。若いレオのメンバーは広い公園内を駆け回って大活躍してくれた。

ひらた会長は「3クラブから2クラブになっての初めての開催で、メンバーの人手が足りない点が懸念されたが、店舗の出店がない分今年は何とか乗り切ることが出来た。レオのメンバーが奮闘してくれているが、今後また飲食店ブースが復活した時にこの点は検討する必要があるだろう」と話す。

日の傾きが感じられ、いよいよたこあげまつりも終盤。白井ライオンズクラブのメンバーで演歌歌手の髙城(たかじょう)靖雄さんが、自身が作詞作曲し、各地のライオンズクラブでも歌われている「ライオンズ ウィ・サーブ」を軽快に歌い上げ、楽しい一時もフィナーレを迎えた。コロナ禍の中ではあったが感染対策を徹底したこともあり、参加者は元気よくたこ揚げや各種催しを楽しんでいた。オミクロン株の流行が本格化する前に実施した本事業。来場者にとってはこの冬の貴重な思い出になったようだ。好評の声が両クラブに数多く届いている。来年こそは例年通りのたこあげまつりが開催出来ることを、両クラブ・メンバーは祈っている。

2022.02更新(取材・動画/砂山幹博 写真/宮坂恵津子)