投稿リポート 体験を通じて知る
小学校での盲導犬授業

体験を通じて知る 小学校での盲導犬授業

東広島ウエスト ライオンズクラブ(沖康仁会長/38人)は2014年から青少年健全育成の一環として、東広島市内の小学校の3・4年生を対象に、視覚障害者への理解を深めることを目的とした盲導犬授業を行っている。市内には全校児童数1000人以上のマンモス校から人口減少が顕著な地域の100人以下の学校まで33の公立小学校がある。そのうち授業を希望する小学校から年間6校を選出し、公益財団法人日本盲導犬協会 島根あさひ訓練センターから講師と盲導犬(PR犬)を派遣してもらって行う体験型の授業である。今年度もコロナ禍中であったが、子どもたちの学びを守るために学校、盲導犬協会、ライオンズが力を合わせて感染拡大防止対策を講じ開催することが出来た。

厚生労働省によると、盲導犬との生活を希望する視覚障害者は全国で約3000人と推定される(厚生労働省)が、盲導犬実働数は861頭、広島県ではわずか18頭(2021年10月時点)である。人口約19万人の東広島市には、盲導犬ユーザーは一人もいない。そのため子どもたちは盲導犬については机上で学ぶだけで、実際に街の中で出会うことは極めて少ない。アイマスクを着けて視覚障害を疑似体験したり、白杖や手引き歩行をする他、盲導犬の必要性も学習する盲導犬授業は、貴重な経験だ。視力を失った時に死にたいとすら思った中途視力障害者が、盲導犬との出会いを通じて生きる喜びや楽しみを取り戻すことが出来たという話も聞く。盲導犬は生活の補助だけでなく、心にも寄り添うことが出来るのだ。

授業後、児童が書いた感想文が当クラブへ届く。毎回とても素直な感想に心打たれ、私たち会員にとって大変うれしく、励みにもなるものだ。11月9日に実施した市立三永小学校からは、「街頭募金をしている盲導犬しか見たことがなかったので、授業を受けて視覚障害者への思いやりやお手伝い出来ることへの関心が深まり、家族を交えての会話となりました」という感想が届いた。更に、同校は今期の指標で「自分たちで考えて行動する」というテーマを掲げているということで、授業後、子どもたちは「自分たちに何か出来ることはないか」を話し合い、募金活動と盲導犬についてPRする活動をしたのだという。手紙と共に届けられた貴重な募金1万3733円と児童の熱い思いを受け取り、盲導犬協会に届けることが出来た。協会の盲導犬育成費用は約90%が寄付で支えられているが、コロナ禍で募金額は減少しているという。子どもたちからの発案で実現した活動は、校長や担任教諭を始めとする学校関係者や保護者にも感動をもたらす出来事だった。

盲導犬育成には大変な時間とお金がかかる。候補となる子犬は生後2カ月齢から1歳前後までパピーウォーカーの家族の一員として自由に楽しく暮らしながら人間との信頼関係を築き、2年目からセンターでの訓練に入る。盲導犬の訓練には大きな愛情と優しさ、そして根気が重要だ。一つの動作を覚えるまでに毎日毎日同じことを繰り返し教え、小さなことでも成功した時には心から褒める。「グッドグッド」と褒める。それでも訓練終了後、盲導犬となるためのテストに合格するのは、10頭のうち3頭ほどだそうだ。私たちの盲導犬授業や街頭募金などで活躍しているPR犬は残念ながらテストでは不合格だった犬たちだが、とても利口でどこへ行ってもトレーナーの指示があるまで何時間でも静かに伏せて待つことが出来る。そして彼らの少し垂れ目で愛くるしい表情は、私たちに癒やしを与えてくれる。

未来に羽ばたく子どもたちに、この授業を通して人や動物に接する時に思いやりを持つこと、そして全ての出来事に感謝の気持ちを忘れずにいることを学んでほしいと願っている。
 
2022.02更新(保久早苗)