奉仕活動贈るだけでは終わらない
ニーズに寄り添う車いす

贈るだけでは終わらない ニーズを満たす車いす

2022年2月に10周年を迎える福井イースト ライオンズクラブ(尾﨑喜代博会長/90人)は、福井県庁と福井市役所、並びに福井県、石川県、富山県にある主要病院の全17カ所へ車いす計55台を寄贈する記念事業を行った。

21年11月17日から寄贈先へ1カ所ずつクラブのメンバーが赴き、直接真新しい車いすを届けたのに加え、新型コロナウイルス感染予防対策として、使用中の車いすの消毒とメンテナンスも行ってきた。12月10日に、17カ所目となる福井大学医学部附属病院(福井県吉田郡永平寺町)を訪れ、予定していた全ての活動を無事完了した。

10周年の記念行事になぜ車いすの事業を選んだのかを、結成10周年記念事業実行委員会の森川直之委員長に伺った。

「発端は、私の知人が入院した際に話していた一言でした。『病院では車いすが足りていない。故障しているものも多い』と。これを、数年前に記念事業で何をしようかと考えていた時に思い出しました」

病院にヒアリングをして実態を確かめると、確かに車いすの台数は足りず、故障車も多いということが分かった。十分なニーズがあるという手応えを感じた森川委員長はクラブ・メンバーと話し合い、車いすの寄贈を軸に事業内容を詰めていった。

通常のクラブ事業であれば地元の病院1カ所ないし数カ所に対して行うケースが多いが、今回は記念すべき10周年の事業。寄贈先を北陸三県に広げることを決めた。資金面では、事業総予算の半分はライオンズクラブ国際財団(LCIF)の人道支援マッチング交付金を活用した。この交付金は大規模な人道奉仕事業を対象とするもので、長期に及ぶメリットをもたらす事業、多数の人々または広範囲に役立つ事業に活用出来る。より多くの車いすを役立ててほしい今回の事業にぴったりと当てはまる交付金だ。

クラブでは実施に先立ち、車いすメーカーを訪問して車いすそのものについて知る機会も設けた。一口に車いすといっても用途によっていろいろなタイプがあり、聞けば聞くほど利用者の体の状況に合わせた細かなカスタマイズが必要なものだと分かった。この経験から、ただ漠然と車いすを寄贈するのではなく「必要とされている」車いすを寄贈したい、という意識が高まった。

とはいえ、病院を始め公共の場で求められる車いすは、多くの人が利用しやすい万能な標準型のニーズが高い。そもそも数が足りていないのだから、まずは比較的安価な標準型を多く用意することが重要だと考えた。一方、事前のヒアリングで明らかになったのが、体が大きな人でも利用出来る大型の車いすが不足していること。多機能型と呼ばれる大型の車いすがないとストレッチャーで代用しなければならず、狭い場所での移動が困難になるという。こうした事情を鑑みて、クラブでは福井県と福井市には多機能型を2台ずつ、各病院へは多機能型1台と標準型2台の計3台を寄贈することに決めた。

病院や公共の場で使われている車いすの中には故障しているものも少なからずあり、気付かずに使用してしまう危険なケースもある。また、修理に出せばその期間中に車いすの台数が足りなくなるため、多少の不具合があっても使わざるを得ない事情があることも分かった。修理に出さずにその場で直すことが出来れば、大きなメリットとなる。中にはネジの締め直しやタイヤの空気調整で済むものもあり、事前の打ち合わせで故障している車いすの状態を確認し、当日現場で直せるものは出来る範囲でメンテナンスを行うことにした。利用者からすれば、そこに車いすがないことが一番の問題。新規の寄贈と、現地での車いす修理は、この事業の両輪を成すものとなった。

福井イースト ライオンズクラブでは2020年11月、えちぜん鉄道の七つの無人駅で手すりやいすなどをアルコール消毒する活動を行った。コロナ禍の中、感染防止対策の徹底が難しい無人駅を安心して利用してほしいと実施したものだ。この時の経験が今回の記念事業に役立った。いすに座っていると、立っている人と話す時に飛沫が上から降り注いでくるリスクがある。飛沫が上から落ちていると仮定し、車いすのシートや手すり、車輪を回すハンドリムなどを念入りにアルコールで消毒した。

車いすの他にも、歩行器やチャイルドシート、入院時の荷物を運ぶカートなど、不特定多数が利用する器具のアルコール消毒も、メンテナンスと並行して行った。

「17カ所目の福井大学医学部附属病院での活動を終え、振り返ってみると、こちらが思っていた以上に車いすが必要とされていたことを改めて実感しました。病院や県や市の方々に喜んでいただけたのも印象的でした。最初は多少手探りでしたが、回を重ねていくにつれ活動も熱を帯び、必要とされている事業をやっているという手応えをクラブ・メンバー一同感じました」

アルコール消毒やメンテナンスは一度で終わるものではなく、今回の活動だけで必要な台数の車いすを提供出来たわけでもない。今後も何かしら車いすに関わる事業を検討していきたいとクラブでは考えている。

2022.01更新(取材・動画/砂山幹博 写真/宮坂恵津子)