奉仕活動どんぐり山の恵みで楽しむ
どんぐり独楽大会

どんぐり山の恵みで楽しむ どんぐり独楽大会

杜(もり)の都・仙台に秋の訪れを告げるのは、赤紫色の可憐な花を咲かせる県花のミヤギノハギだ。市街地にほど近い大年寺山にある仙台市野草園では、9月中旬に萩(はぎ)まつり、10月上旬には「秋のどんぐり山であそぼう!」の催しが開かれ、多くの市民が爽やかな秋のひと時を楽しむ。仙台エコー ライオンズクラブ(倉林三四郎会長/76人)の協力で開催され、今年36回目を迎えた「どんぐり独楽(こま)大会」も、野草園の秋の風物詩の一つになっている。

仙台が「杜の都」と呼ばれるようになった原点は、藩政時代にある。仙台藩の藩祖・伊達政宗は、家臣に対して食料になる梅や栗、柿などの果樹、用材になる杉、松、竹を植えることを奨励した。そうして出来た屋敷林と寺社の林が、城下町を取り巻く丘陵と相まって、町全体が緑に包まれるような景観を生み出した。その緑豊かな町は仙台空襲で無残な焼け跡へ変わったが、復興の歩みの中で街路や公園での植樹が盛んに行われ、町は「杜の都」の姿を取り戻した。

一方で、急速に進んだ都市化に伴って町中に見られた野草はどんどん姿を消していった。そんな状況を憂えた人々の尽力で、1954年に開園したのが仙台市野草園だ。園内には東北地方の野草を中心に、高山から水辺までさまざまな環境に生える植物が植栽され、市民が身近な自然や植物に親しめる場所になっている。

クラブが苗木を植樹してから間もなく50年、仙台市野草園のどんぐり山はうっそうとした森になっている

野草園の開園から9年後の1963年に結成された仙台エコー ライオンズクラブは、その理念に共感。クラブ結成10周年を迎えると、どんぐりの森を作りたいという当時の園長の希望に応じて、どんぐりの実るコナラなどの苗木111本を植えた。クラブはその後も周年を迎えるごとに石卓や石彫、眺望ベンチなどを寄贈。45周年の時には「萩のトンネル」を車いすでも訪れやすいように配慮して設置した。萩まつりの期間中は多くの市民が満開の萩のトンネルを目当てにやって来る。また、50周年で建てた東屋は芝生広場で遊ぶ家族や、散策を楽しむ人たちの憩いの場になっている。

そうした節目ごとの記念事業だけでなく、クラブは作詩コンクールやどんぐり独楽大会、植物感謝祭の落ち葉たきといった野草園の年中行事にも参加・協力してきた。

どんぐり独楽大会は、83年に仙台エコー ライオンズクラブが20周年記念事業として石卓を寄贈したのをきっかけに始まった。この頃にはクラブが植樹した苗木が大きく成長。その木々から落ちたどんぐりでこまを作り、その回転時間の長さを競う大会だ。普段はゲーム機器で遊ぶことの多い子どもたちも、この大会では自然の中で昔ながらの遊びに夢中になる。

今年の大会は10月10日の日曜日に開かれた。どんぐり山の前に広がる広場には、受付開始の12時前から多くの親子連れが集まり、66人が競技にエントリーした。参加者がまず行うのは、どんぐりのこま作り。使うのはあらかじめ野草園スタッフが拾って選んでおいたクヌギの実だ。錐(きり)で空けた穴にこまの軸になるつまようじを差し、ちょうどよい長さにカットしたら完成。子どもたちは保護者やスタッフの手を借りながら、錐やペンチなどの道具を使って4個のこまを作る。自分のこまが出来たら、次は練習。競技が始まるまでの間、真剣な表情で何度も練習を繰り返し、競技に使うこまを選んでいた。

競技は、未就学児~小学校低学年、中学年、高学年と、中学生以上を対象とした大人の部に分かれて行い、部門ごとにタイムを競う。大きな石卓の上に土俵のように置いた縄の中で、一人3回ずつこまを回す。ライオンズ・メンバーは進行役とタイム計測の担当だ。完全に静止するまでのタイムを競うので、傾いたところで諦めてこまを取ろうとする子には「まだまだ、もう少しいける!」と声をかける。大人の部には保護者やライオンズ・メンバーが出場し、子どもたちの声援を浴びて童心に帰ってこま回しに挑戦。子どもも大人も一緒になって、くるくる回る小さなどんぐりの動きを見守った。

閉会式では各部門の1位から3位になった出場者と、子どもの部で最高記録39.97秒を出してチャンピオン賞に輝いた小学5年生を表彰し、倉林会長から賞品が贈られた。

競技中の子どもたちに大きな声援を送っていた倉林会長は、「参加するお子さんたちはみんな一生懸命で、毎年さまざまなドラマが生まれます。今回は、本番で練習通りにうまく回せなかったのを悔しがって泣き出した子がいました。晴天にも恵まれて、とても楽しい大会になりました」と話していた。昨年の大会ではクラブ・メンバーの子どもが6年越しの念願をかなえてチャンピオン賞を獲得し、大いに盛り上がったという。ちなみに、倉林会長が以前出したタイムは30秒ほどだったが、大会の過去最高記録は第33回大会で小学5年生が出した1分11.82秒。この好記録が破られる日はいつ訪れるのか、気になるところだ。

この日の野草園では、木の実の展示会やどんぐりのクラフト作りも行われ、どんぐり山にはどんぐり拾いを楽しむ親子連れの姿もあった。50年で見上げるほどに成長した木々は、これからも自然の恵みの大切さと喜び、楽しさを多くの市民に教えてくれることだろう。

2021.11更新(取材・動画/河村智子 写真/宮坂恵津子)