取材リポート 環境意識を育む
天白川水質調査

環境意識を育む天白川水質調査

1964年、河川法が制定された。これは国内の水系を一級河川(水系)と二級河川に分けて国や地方自治体が管理するための法律である。その前から河川に関する法律はあったが、ダムなど新しい水の活用法の出現に加え、上水道、工業用水道の需要が高まり、国として河川を管理する上で新たな法律の必要が生じたのだ。大きな河川の多くは複数の自治体をまたいで流れているため、行政管轄を分けることなく一貫管理をするためにも必要な法律である。一級河川、二級河川共に「公共の利害に重要な関係がある水系」が指定される。一級河川は原則として国土交通大臣が指定、管理を行い、二級河川は都道府県知事が指定する。

日本には河川法の適用、準用を受ける河川が3万以上ある。一級よりも二級河川の数が多いだろうと思われるかもしれないが、実は河川法で指定されている一級河川は約1万4000あり、二級河川のおよそ2倍存在している。意外なところでは滋賀県の琵琶湖や茨城県の霞ケ浦といった湖も、河川法上では一級河川に指定されている。

河川法は第1条で「河川が適正に利用され、流水の正常な機能が維持され、及び河川の整備と保全がされるようにこれを総合的に管理することにより、国土の保全と開発に寄与し、もって公共の安全を保持し、かつ、公共の福祉を増進することを目的とする」と定めている。各自治体はこれに準じて河川の管理を行う。そこで、川底の泥を取り除くなどの浄化対策、工場などから河川への流入物の指導、調整、水質の監視などによって水質を管理している。

愛知中央ライオンズクラブ(堀場修二会長/34人)は天白(てんぱく)川の環境調査を行っている。天白川は愛知県日進市から名古屋市を流れ、伊勢湾に注ぐ二級河川だ。河川敷には桜並木が多く、サイクリングコースなどもあり、市民に親しまれ、小中学生のブラスバンド演奏などイベントも行われてきた。この調査は愛知県が1985年から各自治体を通して実施しているもの。これに愛知中央ライオンズクラブが協力し、日進市環境課と共に取り組み始めた。正確な開始時期については記録が残っていないが、県の調査開始から数年以内だという。以後、毎年8月の初旬に行っている。

クラブでは環境保全としての活動に加え、青少年健全育成の一環として、子どもたちに川に入って一緒に調査してもらう。以前はボーイスカウトや日進市子ども会連絡協議会の子どもたちが参加したこともあるが、現在は市の広報誌に掲載して参加者を募集している。今年は市内の小学生を中心に51人が参加した。今年の実施日となったのは8月5日。新型コロナウイルスの影響もあり、消毒、マスク着用など考えられる限りの感染対策と、熱中症対策をしての実施である。

この環境調査は主に水生生物採集による水質調査だ。川の中にすむ生物の種類は水中溶存酸素の濃度と深い関係がある。川の水温や汚染具合によって酸素がどれだけ溶けるかが決まる。水温が低ければ、より多くの酸素が水に溶けるが、高ければその量は減ってしまう。また、汚れによって細菌などが多くすみ着いていると、酸素が多く消費されることになる。酸素の量が少なくなるときれいな水に生息する生物がいなくなるため、どの生物が見られるかによって水質が調査出来るのだ。加えて水の色やにおい、水流の速度も調査する。

この調査を子どもたちが環境問題を考えるきっかけにしたいと、クラブは講師を招いて解説してもらっている。子どもたちは実際に川に入り、タモを使って生物を捕まえる。水質を調べるのが目的だが、子どもたちにとっては日常生活ではあまり馴染みのない生物ばかり。ザリガニを捕まえて大喜びしたり、小さな魚を真剣に追ったりと目をキラキラさせて参加している。子どもたちにとっては夏休みの思い出になり、同時に地元の川に対する愛着も育まれる。まさに一石二鳥の事業だ。調査によって集められたデータは日進市環境課を通じて愛知県で管理、活用される。

この環境調査事業から発展して愛知中央ライオンズクラブでは天白川の清掃活動や、上流部でホタルの幼虫の放流会なども行ってきた。2002年から10年ほど放流してきたホタルは今や天白川の上流に定着し、多くの市民の目を楽しませている。

長年にわたり、天白川の環境調査やホタルの生育などを行ってきた愛知中央ライオンズクラブ。「歴代の会長が環境問題に熱心に取り組んできた。その灯を消さないよう継続していきたい」と堀場会長は語る。天白川をより身近に感じてもらい、自分たちで守っていくのだという環境意識を子どもたちに持ってもらうべく、クラブの挑戦は続いていく。

2021.09更新(取材/井原一樹 写真・動画提供/愛知中央ライオンズクラブ)