奉仕活動市の中心を流れる内川を
整備するアダプト事業

市の中心を流れる内川を整備するアダプト事業

山形県鶴岡市は庄内地方の南部に位置する東北地方で最も広い面積を持つ市だ。古くは庄内藩の藩庁であった鶴ヶ岡城の城下町として発展してきた。明治時代に取り壊された城の跡は鶴岡公園として整備され、現在も多くの人が訪れる観光名所となっている。1990年には日本さくら名所100選にも選ばれた。

鶴ヶ岡城の歴史と共に変化を遂げてきたのが、市の中心部を流れる内川だ。山形一帯を治めていた最上義光(よしあき)が鶴ヶ岡城を居城にしていた慶長年間に、現在の流れに作り替えられた。内川の一部は外堀の役割を担ったとも言われている。城の解体後は生活用水として利用され、8月の旧盆には灯籠(とうろう)流しが行われるなど市民に親しまれてきた。藤沢周平が73年に直木賞を受賞した『暗殺の年輪』に登場する五間(ごけん)川は内川がモデルとされている。この内川の一部を維持管理しているのが、鶴岡ナイスフェロー ライオンズクラブ(佐々木一広会長/6人)だ。山形県ふるさとの川愛護活動支援事業の一環として、クラブが県の委託を受けて実施している「アダプト事業」である。

アダプト事業は市民と行政が協同して行うプログラムだ。85年にテキサス州で高速道路(ハイウェー)を整備することを目的に始められた。市民が「里親」のような存在となり、高速道路を「養子(アダプト)」に見立てて世話をすることから「アダプト・ア・ハイウェー」と名付けられた。この事業は急速に広がり、今では全米で行われている。日本では98年に徳島県神山町で四つの民間団体によって初めて行われた。神山町でのアダプト事業は国道、県道のゴミ拾い活動で、これは全国に広まり、各地で同じような事業を行う団体が増えた。更に他の分野にも波及し、現在は河川を対象としたアダプト事業も各地で行われている。

鶴岡ナイスフェロー ライオンズクラブが参加する山形県ふるさとの川愛護活動支援事業は、2002年から山形県河川アダプト導入モデル事業という形で試験的に始められた。05年から山形県ふるさとの川アダプト事業として正式に動き出し、15年に現在の山形県ふるさとの川愛護活動支援事業という名になった。内川をメインの対象として活動している庄内ブロックに加え、村山、最上、置賜(おきたま)にもブロックが設定されている。20年度は県全体で500を超える団体が登録され、それぞれが河川や海岸の美化活動を行っている。

庄内ブロックは1965年に結成された「内川を美しくする会」を中心に、内川の川べりを整備している。鶴岡ナイスフェロー ライオンズクラブなど諸団体は、それぞれ割り当てられた担当区域で美化活動に努める。クラブが担当しているのは大泉橋から昭和橋を挟んで禅中橋までの約500mの区間。大泉橋のたもとにはかつて酒田行きの船着き場があり、松尾芭蕉がここから乗船したと言われている。内川に架かる橋の中では最も古い。当初は荒町橋と呼ばれていたが、1876年に架け替えられた際に大泉橋という名になった。それから10数年後にオランダ人の設計で石造りのアーチ橋になったが、馬車の事故が頻発したため1931年に現在のコンクリート製になったという。当時のデザインを残した作りになっており、隠れた人気観光スポットになっている。

内川では毎年7月第1日曜日の県民河川愛護デーに一斉清掃活動が行われ、8月第1日曜日には小学生を対象に内川舟下りが実施されるなど、地域密着の活動が行われてきた。しかし昨年と今年は新型コロナウイルス感染症のまん延に伴い、一斉清掃活動、内川舟下りは休止された。

新型コロナは鶴岡ナイスフェロー ライオンズクラブの活動にも影響を与えている。一時期は例会なども開催出来なくなった。しかし、この河川アダプト事業については整備し続けなければ担当区域がどんどん荒れてしまう。活動を止めるわけにはいかないため、今年も5月から始動。例年は11月まで月2回程度活動しているが、雑草の伸びが早く、苦労する。花壇を作って植えた花は雑草に負けてしまい定着が悪かったため、昨年からはヤマザクラを植える試みを始めた。冬を越せるか心配していたが、無事今年の春に花を咲かせた。

6月26日朝6時から実施した際は雑草の刈り取りに加え、土留めの修復を行った。10年以上前に設置したため、木が腐ってしまっていたのだ。古い木を取り除き、新しいものと入れ替える。スコップを用いて花壇の区域を整備。その土が遊歩道に出てこないように板で押さえ、横に打った杭にネジで留めて固定した。遊歩道を歩く人に花壇をより楽しんでもらえるようにする今年度のアダプト事業の基礎となる作業だ。

2005年から活動を続けてきた鶴岡ナイスフェロー ライオンズクラブ。人口減少の影響もあり、クラブ・メンバーも少人数になってしまった。だが逆境に負けず絆を深め、会員一丸となって活動を続けている。鶴岡の中心を流れ、市民の生活の一部になっている内川をより美しく、より身近なものにすべく、クラブの活動は続いていく。昨年から始めたヤマザクラの植樹に加え、土留めが新しくなった花壇で花の植栽も再挑戦する予定だ。

2021.08更新(取材・動画/井原一樹 写真/関根則夫)