取材リポート 県民に歩く習慣を
ウォーキング大会開催

県民に歩く習慣を ウォーキング大会開催

ウォーキングは誰もが気軽に出来る運動だ。コロナ禍で運動不足を感じている人も多く、野外で単独で出来ることから人気を集めている。諸説はあるが、1日に8000〜1万歩を歩くことで生活習慣病を予防し、糖尿病や高血圧などの予防・改善に効果があるという。

もともと、『東海道中膝栗毛』に代表されるように、人間にとって歩くことは移動手段だった。そんな中で1909年、歩くこと自体を目的に、オランダで4日間のウォーキング大会が開催される。今も続くこの大会はナイメーヘン国際フォーデーマーチという名で、4万人以上が参加する世界最大のウォーキング大会として知られている。1日当たり30〜50kmの道のりを4日間歩き、棄権者も出る競技性の高い大会だ。日本では1964年に東京で設立された「歩け歩けの会」が、全国に歩け歩け運動を提唱。現在は日本ウオーキング協会となり、世界2位の規模の大会となっている日本スリーデーマーチの開催などウォーキングの普及・実践に努めている。

現在、「ウォーキング立県」を目指して県民に歩くことを推奨している県がある。それが鳥取県だ。鳥取県は軽自動車普及率1位(2012年)になるなど、自動車での移動が県民の生活の中心になっている。一方で県民の1日当たりの平均歩数は低かった。厚生労働省の調べによると、12年の男性平均歩数は5634歩で全国最下位。女性は5285歩で下から3番目だ。こうした状況を改善しようと県を挙げて県民にウォーキングを推奨しているのである。

県の取り組みに賛同し、活動しているのが鳥取いなばライオンズクラブ(池田康利会長/78人)だ。同クラブでは13年から森林浴ウォーキング大会を開催している。今年も5月9日に森林公園とっとり出合いの森で開催。第8回となる今大会では約250人がそれぞれのペースでコースを歩いた。

もともとこの事業はクラブ結成45周年の記念事業として実施したもの。その後、継続事業として毎年春に開催するようになった。しかし昨年はコロナの影響で開催を断念。チラシも刷り、準備を進めていたが、全国への緊急事態宣言発出により中止した。今年も中止すべきか検討していたが、毎年参加してくれている方からの問い合わせもあり、クラブでは2年連続での中止は避けたいと考えていた。

実施出来るかは分からなかったが、実行委員会では昨年11月頃から、どういう形であれば開催可能かの検討を始めた。同時に、いつ中止になっても仕方ないという思いを抱えながらの準備だった。野外の開催であり、感染対策を十分にすれば実施可能ではないかと考えたが、県から自粛要請があれば中止しようと腹をくくった。県に問い合わせたところ、感染対策を万全にしていれば実施は問題ないという回答があった。加えて会場となるとっとり出合いの森からも、イベントが軒並み中止になっており、出来る限りの協力をしたいと言ってもらえた。

こうして、規模を縮小して実施することを決めた。以前は350人ほどが参加していたが、今回は定員を150人にして募集。基本的に県内からの参加に限った。するとわずか1週間で応募は100人を超え、その後もどんどん申し込みが増えていった。すぐに定員に達してしまうと考えたクラブでは、感染対策マニュアルなどを参考に定員を増やした場合をシミュレーション。250人までは受け入れ可能と試算し、増員に踏み切った。それでも応募は止まらず、定員を超えても応募があった数十人を断わらざるを得なかったという。

当日は検温と消毒、更に受け付け前に問診を実施。これを通過した人が一目で分かるよう、リストバンドを着けた。また、受け付けの列を複数に分けて密にならないように配慮。マスクをしたままウォーキングすると熱中症の危険があるため、マウスシールドを配布した。

コースは3.5kmの初心者コースと、6kmのトレッキングコース(ウォーキングに慣れた人向け)の2種類を用意。コース内で間違いやすい分岐点などは事前に下見をして洗い出し、分かりにくいところにはメンバーが立って誘導することにした。公園にはクラブが10年以上前から植樹や遊歩道の整備といった維持・管理を続けてきた「いなばの森」という一角がある。近隣のクラブと共に寄贈した藤棚もあり、それらもコースに含めた。

途中で体調不良の人が出た時に対応出来るよう、メンバーも一緒に歩く。今年はコロナの影響で家にこもりがちになり体力が落ちている人が多いと想定し、出発前の開会式でウォーミングアップを行ったところ、やはり運動不足の人が多く、例年よりも体調不良を訴える人が多かったという。それでも久しぶりのイベントに参加者の表情は明るかった。公園内のコースを自分のペースで歩けるとあって、家族連れの参加も目立った。

例年実施してきた屋台村も感染対策をして実施。現地では調理を行わず、テイクアウトの弁当やスイーツに多くの人が集まっていた。出店者には通常より安い価格で提供し、収益の10%をクラブに寄付してもらっている。また、今年は初めての試みとして地元ケーブルテレビである日本海ケーブルネットワークによる生中継番組が放映された。90分にわたり、会場のさまざまな場所から中継され、インタビューを受けた参加者もうれしそうに感想を語っていた。

今年、実施が出来るか不透明な中でも前を向いて準備を続けてきたことは、クラブにとってプラスになっているという。奉仕活動が出来る喜びをかみ締め、今後もウォーキング大会を発展させていきたいと考えている。

2021.06更新(取材・動画/井原一樹 写真/田中勝明)