国際財団 はしかの流行を食い止める
ブラジル
新型コロナウイルス感染症の大流行で私たちの生活は大きな打撃を受けた。その中で、都市封鎖などの影響ではしかのワクチン接種が滞り、何百万人もの子どもが罹患(りかん)や命を落とすリスクにさらされている。実は、はしかの患者数は2019年に過去23年間で最多の感染者数を記録していた。その危機にコロナ禍が追い打ちをかけているのだ。
ブラジルでは首都ブラジリアを除く地域ではしかが流行し、深刻な状況を呈している。2020年10月、ライオンズクラブ国際財団(LCIF)の支援を受けた汎米保健機構(PAHO)は、現地にチームを派遣。はしか患者数増加の流れを食い止めるために、緊急大量予防接種キャンペーンを実施した。10月5~29日のキャンペーン期間中に、1170万人以上の子どもがはしか、おたふくかぜ、風しんの新三種混合ワクチン接種を受けた。これはまだ対象人口の13%に過ぎないが、それでも問題の解決に向けた有意義なスタートである。ブラジルのライオンズは通常ならば実際に集まってさまざまな形での呼びかけを行うところだが、今回はコロナの影響であらゆる行動が制限される中で、ソーシャルメディア上で予防接種の認知度向上に取り組んだ。
予防接種会場に娘を連れてきたある夫妻は「今まで予防接種をしなかったのは、コロナに感染しないために外出を避けていたからなんです」と話した。また、生活のためにロックダウン中も共働きを続けざるを得なかった別の夫妻は、娘を感染から守るために妻の母親に預けていた。キャンペーンがなければ予防接種は受けず、預けたままでいただろうと言った。緊急キャンペーンは、さまざまな事情を抱える人たちにとって、子どもに予防接種を受けさせるきっかけとなった。
新型コロナの影響で、命にも関わる予防接種を受ける機会を逃している子どもたちが大勢いる。国連児童基金(UNICEF/ユニセフ)と世界保健機関(WHO)は2020年11月、予防接種の中断によりはしか・ポリオが世界的に流行する恐れがあるとし、これを回避するための緊急行動を呼びかけた。
いかなる障壁があっても、全ての子に予防接種を届けなければならない。LCIFが支援したブラジルの緊急予防接種キャンペーンのような活動が、状況を改善し、迫りくる国際保健上の危機を食い止め、子どもたちの命を救うことにつながる。はしかは非常に感染力が強く、山火事のように猛烈な速度で広がるが、ワクチン接種という安全で安価な方法で予防出来る病気でもある。私たちは今すぐに立ち上がり、この病気を抑え込まなければならない。
2021.05更新(文/レイチェル・ブリッジス 写真提供/カリーナ・ザンブラ_PAHO)