投稿リポート 震災10周年に花火
追悼と感謝の祈りを込めて

震災10周年に花火 追悼と感謝の祈りを込めて

気仙沼ライオンズクラブ(83人)は3月1日、気仙沼市東日本大震災10年復興記念事業「Remember 3.11 彩れ!未来への架け橋」を開催した。

東日本大震災が発生した2011年にクラブ結成50周年を迎えた我々気仙沼ライオンズクラブは、今年で60周年を迎える。この10年間はさまざまな方面からの支援を受け、その支援をこの地域のためにと、さまざまな奉仕・支援活動につなげてきた。この奉仕・支援活動が継続出来たのも、一日も早い復興を願ってくれる国内外の多くの人がいたからこそと感謝している。

その恩返しになればと、当クラブでは近年、他地域での災害に対しての支援等も行ってきた。が、それは受けた恩の一部でしかなく、いまだに返しきれていないし、これからも返しきれるとは思っていない。どうしたら少しでも恩返しが出来るか? 黙々と復興に励み、ひたすらがんばることもその一つだろう。しかし、そのがんばりだけではなかなか世の中に伝わりにくいと感じた。

そこで節目の10年という全世界が注目するであろうタイミングで、悲しくも震災の犠牲となった方々への追悼の思いと合わせ、気仙沼が力強く復興に向かう姿を発信することが、これまでに頂いた支援への感謝を伝える絶好の機会になると考えた。その方法として、復興のシンボルである開通間近の気仙沼湾横断橋「かなえおおはし」にスポットを当てた。「未来への架け橋」であるこの橋を、ナイアガラ花火と打ち上げ花火で彩るというインパクトのある企画は、必ず全国で話題となり、感謝の思いを伝える効果が高いはずだ。そしてそれは人々が3.11を忘れることなく、今後の支援の継続や発展、更にはこの地域のより大きなにぎわいにもつながるだろう。また気仙沼での復興工事やすばらしいシンボルの建設に長年にわたり携わってきた工事関係者の皆様への慰労と感謝、更に新型コロナウイルス感染症が一日も早く収束することを願い、医療従事者の皆様への感謝の思いも込めた。

開催に当たっては、国が管轄する開通前の橋を使用するため、許可を得るのが簡単ではなかった。が、市が行う橋のライトアップ点灯式に合わせることで市との共催となり、市に国との窓口となってもらって、国土交通省の寛大な理解も得て実現することが出来た。

コロナ禍での対策も講じ、観覧会場は設けずに、「思い思いの場所から同じ夜空を見上げてほしい」とした。コミュニティFM局とも連携し、生放送のラジオ番組から花火に合わせた楽曲を流し、車内のカーステレオでBGMを聞きながら花火を楽しめるように工夫した。また全国、全世界への感謝の発信ということもあり、インターネットでのライブ配信も試みた。そして夜7時、ライトアップされて白く浮かび上がった橋からナイアガラ花火が流れ落ち、続いて橋の上から約400発の花火が打ち上げられて、気仙沼湾の海面を色とりどりの光で染め上げたのである。

事業経費は、気仙沼一丸となって感謝の気持ちを発信するということもあり、市の東日本大震災10年復興記念事業に対する補助金を活用した。また同じ奉仕団体である市内のロータリークラブやソロプチミスト、青年会議所の他、経済団体である商工会議所など、多くの主要団体からも協賛を頂いた。地域が一体となって力を合わせたことで、組織の枠を越えた合同事業が実現出来たと感じている。

この事業は感謝の気持ちを外へ発信したいと始まったものだったが、実施後には大勢の地域の方々から、「元気が出た!」「感動した!」「前向きに生きていける」といった、ありがたい言葉をちょうだいした。このような声を聞くと、感謝の発信のみならず、地域の人々にとっても心の復興の一助にもなったのだと実感する。

協賛、協力を頂いた関係団体各位、思い思いの場所から花火を見上げた市民の皆様、そして気仙沼に気持ちを寄せてくださる大勢の方々に感謝を申し上げる。この力強くにぎわいのある町で、未来を担う子どもたちが地元に誇りを持ち、3.11への思いを忘れず、持続可能な町づくりに欠かせない思いやりのある人間に育ってくれることを願っている。
 
2021.03更新(会長/菅野潔)