取材リポート 市民の心を明るくする
駅前イルミネーション

市民の心を明るくする駅前イルミネーション

12月5日、JR川西池田駅前と阪急川西能勢口駅前に「手をつなぐ川西 光の和」と題されたイルミネーションが点灯した。これは、川西市中心市街地イルミネーション事業実行委員会が主催するもの。今回で6回目となる。この川西市中心市街地イルミネーション事業実行委員会の構成団体に川西ライオンズクラブ(古谷茂政会長/49人)と川西中央ライオンズクラブ(宮下健治会長/28人)が入っており、事業の中心的な役割を担っている。

それもそのはず、このイルミネーションは川西、川西中央の両ライオンズクラブによる資金獲得事業として始まったものなのだ。6年前の2015年、両クラブは知的障害を持つ人とその家族を支援しているNPO法人川西市手をつなぐ育成会に車を寄贈しようと考えた。その資金を獲得するために出てきたのが、イルミネーションを点灯し、そのパンフレットに協賛企業名を載せるというアイデアだった。場所は川西能勢口駅前バスターミナルで、多くの企業の協賛があり、ライオンズクラブ国際財団(LCIF)からの交付金も得て無事に車を寄贈することが出来た。

実施してみるとイルミネーションは大好評。市民から継続を望む多くの声が上がってきた。そこで資金獲得事業としてではなく、イルミネーションをメインの事業として継続することにした。川西の中心地である駅周辺を明るく照らすことで、町を活性化させたいという思いから、当初は12月から1月末までだった点灯を2月末まで延長。また、「終バスの時には消えてしまっていて寂しかった」という市民からの声を受けて消灯時間を終バス発車後に変更した。

3年目からは、ソロプチミストや青年会議所など市内の団体に呼び掛けて共同で実施。同じ年から川西能勢口駅2階のペデストリアンデッキ(高架歩道)にもイルミネーションの飾り付けをするようになった。また点灯式では、市内の中学校の吹奏楽部を招いて演奏してもらうなど、川西の冬の風物詩として定着。その翌年の4年目には光るモニュメントが登場し、規模が更に拡大した。5年目に実行委員会制をスタートさせるなど、毎年進化を続けている。

そして6年目の2020年、川西池田駅前のイルミネーションもこの「手をつなぐ川西 光の和」の実行委員会が手掛けることになった。それまで川西池田駅前では他の市民団体がイルミネーションを実施していたが、昨年度の19年で終了。そこで実行委員会で引き継ぐことになったのだ。より市民に楽しんでもらおうと、川西市のゆるキャラ「きんたくん」の像も作成。駅前ロータリーの中心に据えた。

20年は、新型コロナウイルス感染症が猛威を振るった。春には学校が一斉休校になり、多くの飲食店が休業するなど日常生活に大きな影響が出た。4月には新型コロナウイルス感染拡大が続く中、最前線で戦う医療従事者に対して青いライトアップで感謝と応援の気持ちを表そうという「ライト・イット・ブルー」活動が全国的に広がった。川西市ではこの川西市中心市街地イルミネーション事業実行委員会が、「手をつなぐ川西 光の和」イルミネーションのノウハウを生かし、川西能勢口駅前を青いイルミネーションで染め上げた。「今年は特に、イルミネーションで市民が少しでも笑顔になれば、との思いが強いです」と川西ライオンズクラブのメンバーは語る。

毎年、7月に実行委員会が組織され、11月にイルミネーション設置作業を行う。同時期に協賛企業を募り、イルミネーションのための資金を獲得するのが毎年の流れだ。イルミネーションの設置には毎年、市内にある川西緑台高等学校、川西明峰高等学校、川西北陵高等学校の高校生にボランティアを呼び掛けている。この取り組みはボランティア参加者にも好評で、中には2年連続で来てくれる子もいる。自分たちの町を自分の手で盛り上げている、という実感が得られるのが大きいようだ。今年はそれに加え、川西南中学校の2年生にも設置作業に参加してもらった。これも新型コロナウイルスの影響によるものだ。

トライやる・ウィークの様子(写真:川西ライオンズクラブ提供)

兵庫県では98年度から県内の中学2年生を対象に、「トライやる・ウィーク」という地域の体験活動を実施している。官公庁や医療機関、サービス業など多岐にわたる事業所が受け入れ先となって、中学生に職業体験や福祉体験などを提供する行事だ。他の地域の職業体験と比べ、期間が5日間と長いのが特徴。校区内外問わず、さまざまな体験によって自立心を育み、生きる力を得ていくことが目的だ。しかし今年は新型コロナウイルスの影響により、事業所での活動が中止となった。そこで代替として1日だけの地域活動を行うことになり、イルミネーションの設置作業に白羽の矢が立ったのだ。

活動は11月24日に実施。密な状況が発生しないよう、川西池田駅前と川西能勢口駅前ペデストリアンデッキに分かれて行った。なじみのある駅前を自ら彩ることが出来るとあって、皆張り切って作業をしてくれた。

そして12月5日、「手をつなぐ川西 光の和」イルミネーションの点灯式が行われた。感染拡大防止の観点から、やむなく演奏会は中止。大々的な宣伝はせず、その場にいる人に呼び掛けての点灯式だ。18時に川西池田駅前、18時30分に川西能勢口駅前でそれぞれ行い、居合わせた人にクラッカーを渡し、カウントダウンと共に鳴らしてもらった。

両クラブでは今後もイルミネーション事業に携わっていく予定だが、中学生の参加と、その張り切りぶりを見て、市民がもっと参加出来る仕組みづくりをしていこうと考えている。当初は川西市手をつなぐ育成会への寄付のための資金獲得事業だったが、すっかり両クラブのメイン事業に成長した。ライオンズ主催から実行委員会制に移行したように、「自分たちのもの」から「みんなのもの」にすることが次の目標だ。寒空の下で輝く「手をつなぐ川西 光の和」イルミネーション。21年2月末まで、駅を利用する市民の気持ちを明るく照らしている。

2021.01更新(取材・動画/井原一樹 写真/関根則夫)