取材リポート
地元の鏡川を親子で楽しむ
ちびっこハゼ釣り大会
高知鷹城ライオンズクラブ
#青少年支援
高知県の県庁所在地、高知市。県内の人口の約47%を占める、名実共に県の中心地である。高知城やはりまや橋などの観光スポットもあり、県外からの観光客も多い。この高知市の中心を流れているのが鏡川だ。その水面が鏡のようであることから名付けられたが、洪水、渇水で地元の人を悩ませてきた川でもある。市街地を通るため、水位の変化が生活に与える影響が大きいのだ。
高知城の築城に際し、鏡川は外堀に利用されたが、度々氾濫(はんらん)を起こしたと記録されている。1970年や75年など、近年も台風による大雨で水害を引き起こしている。特に76年の台風17号上陸時には約1万7000戸が床上浸水するなど大きな被害をもたらした。
その一方で鏡川は、市民にとって身近で大事な河川でもある。高知市土佐山を水源とした水質は良好で、夏場は川遊びをする人もいる。坂本龍馬が泳いだ川としても知られ、平成の名水百選にも選定されている。毎年8月にはよさこい祭りのオープニングを飾る高知市納涼花火大会が鏡川を舞台に開催されるなど、高知市を語る上でなくてはならない存在だ。
このように鏡川は、高知の歴史と重ねて語ることも出来るほど市の中で重要な位置を占めており、多くの高知市民にとって、故郷の風景として当たり前のように思い浮かべることが出来る河川である。
10月6日、この鏡川で高知鷹城ライオンズクラブ(井上光啓会長/54人)が主催する第12回ちびっこハゼ釣り大会が開催された。市内の親子や、ひとり親家庭の生活を支援するために組織された高知市青蘭会の子どもたちも参加している。参加費は無料だが、大会の後も鏡川で釣りを楽しんでもらいたいという気持ちから、子どもには釣り竿をプレゼントしている。これは効果を上げており、実際、ハゼ釣り大会の翌週に鏡川で竿を垂れる親子も見られるという。今年の参加者は52組。お父さんお母さんと一緒に多くの子どもたちが釣り竿を垂らした。
地元、鏡川を身近に感じてもらうのと、親子の触れ合いの時間を大切にしてもらいたいという思いで開催しているこの事業。鏡川という自然に触れることで環境問題について考えるきっかけになってほしいとも思っている。
今年は10月3日の台風18号によって鏡川が氾濫。天神橋付近で車20台以上が水没した。ちびっこハゼ釣り大会の集合場所はまさに天神橋付近。中止の可能性もあったが、河川の様子を確認し、安全に気を付けて実施する運びになった。
ちびっこハゼ釣り大会の参加者にはライフジャケットを貸与している。万が一のためにライフジャケットの着脱に慣れてもらう目的がある。ただし、今年の実施日、10月6日は30度を超える真夏日となった。日光を遮るものがほとんどない河川敷では熱中症の恐れもあるため、状況によって臨機応変に着脱するようアナウンスをした。また、今回はクラブ結成60周年を迎えることもあり、大会中にメンバーが写真を撮ってクリアファイルを作成して参加者に配る企画を立てている。
高知鷹城ライオンズクラブの歴史をさかのぼると、かつては金銭的な支援を主とするクラブだったという。だが、結成40周年を迎える頃、子どもたちに夢や希望を与える事業を実施していかないか、という意見がクラブ内から多く出てきた。そこで40周年記念事業として子どもたちの夢をかなえる「八つの夢事業」を実施した。これは、子どもたちから、かなえたい夢を募集して、それをクラブの力で実現するという事業。「イルカと触れ合いたい」「熱気球に乗りたい」「雪まつりで雪像を作りたい」といった、子どもたちの夢を実現し、大いに喜んでもらえた。子どもたちの夢をかなえる事業は、クラブの55周年時にも「六つの夢事業」として実施している。
八つの夢事業の成功から、クラブでは子どもたちを対象とした事業に力を入れるようになる。ちびっ子サマーキャンプ、ちびっ子へんろウォーク……子ども向けの事業をさまざまな形で実施してきた。しかし、なかなか定着しなかったという。どれも好評ではあったが、サマーキャンプもへんろウォークも時間が長く、参加者を集めるのに苦労した。また、拘束時間が長くなってしまうため、運営を担当出来るメンバーが少なくなってしまうという問題もあった。
そこで気軽に参加出来る事業にしようと考えたのがハゼ釣り大会だった。3時間で終わり、会場が身近な鏡川。時間が短ければ保護者も一緒に参加しやすい。するとこれが大成功。それまででは考えられないほどたくさんの応募が来た。以来、毎年実施しており、リピーターとなっている親子もいる。かつてお兄さんお姉さんが参加をし、下の子が大きくなったからまた参加するというケースも多い。
今年は台風の名残で水量が多かったため、釣果は例年より少なかったが、参加者は皆楽しそうにしていた。最初はおっかなびっくりエサのゴカイを針につけていた子どもたちも、後半はお手の物。中には釣り具を作ってしまうツワモノまで出現するなど、大盛況の大会となった。
2019.11更新(取材・動画/井原一樹 写真/関根則夫)