取材リポート 放課後に温かい団らんを
こども食堂開催

放課後に温かい団らんをこども食堂開催

9月6日、宮城県塩竈市にある仙塩丘の上霊園管理事務所で、塩釜ライオンズクラブ(阿部眞喜会長/22人)が主催するこども食堂が開かれた。年間6回程度の開催を目標に、昨年10月から実施している。

塩竈市では2017年度から放課後などに子どもたちがさまざまなことを体験して成長していけるよう、塩竈アフタースクール事業「Shiogamaこども”ほっと”スペースづくり支援プログラム」を推進している。地域の人と協力して子どもたちが参加出来る講演会や勉強会を実施することで、放課後や休日、長期休暇中に子どもたちの居場所を作るためのプロジェクトだ。

その延長線上として各小学校の学区ごとにこども食堂が開催されるよう各地の奉仕団体等に声を掛けている。塩釜ライオンズクラブの開催するこども食堂もこの呼び掛けに応えたもの。市の助成金事業だ。塩釜ライオンズクラブは、児童が300人ほど在籍し、市内でも比較的規模の大きい月見ケ丘小学校エリアを担当している。

クラブには以前から市内の他のこども食堂に食材を提供しているメンバーもいたが、運営に深く関わっていたわけではなく、ノウハウもなかった。そこで、こども食堂を実際に開催するに当たって勉強会を開いた。仙台でこども食堂を開いている方を呼んで、どのような形で開催すれば良いのかなど、経験に基づくアドバイスを受けたのだ。こうして準備を進め、開催場所は月見ケ丘小学校のすぐ近くにあり、メンバーの志賀重信元地区ガバナーが経営する仙塩丘の上霊園管理事務所に決めた。

「こども食堂」と言うと貧困家庭を対象としているイメージが強いが、塩釜ライオンズクラブのこども食堂では「みんなで食べる」ということを重視している。共働きの家庭も多い現代社会において、家で一人で食べる子どもも多い。そうした子どもたちに、みんなで食べる食事の温かみを感じてもらいたいと考えた。また、地域の人や、違う学年の児童とご飯を食べる交流の場にしたいとも思っている。回を重ねることで来てくれる子どもたちの名前と顔が分かれば、普段の生活でもつながりが出来る。子どもにとって知り合いの大人が増えるということは防災、防犯にもつながるとクラブでは考えている。こうして多くの子どもや地域の人に来てもらうことによって、本当に貧困状態にある人も人目を気にせずに来られる環境を作りたいとの思いで開催してきた。

こども食堂のメニューはカレー。今まで5回開催してきたが、今のところメニューは固定されている。作るのは飲食店を営むメンバー。同じカレーだが、毎回少し工夫をしている。今回はバナナを入れて低学年の子どもも食べやすいように甘くした。ほんのり香るバナナに子どもたちも反応。メンバーとの会話も弾む。

クラブでは食中毒やアレルギーなど、食品を扱う上で必要な注意事項に加え、子どもたちが食べ過ぎることのないよう気を配ってもいる。おかわりは自由だが、つい食べ過ぎてお腹を壊してしまう子もいるのだ。また、食事の前の手洗い、皆で「いただきます」「ごちそうさま」と言うことなど食事をとる際の基本的なことも教えている。子どもたちも食器の片付けやテーブル拭きを手伝ってくれている。

何度か開くうちに子どもたちとの距離も近づいてきた。メンバーに話しかける子どもも多い。開催する度に参加してくれる子どもの数も増えており、地域に着実に根付いてきている。一方で実施していく上で今後の課題として考えているのはメニューの問題だ。アレルギーなどの問題が少なく、大量に作りやすいことからカレーを選んでいるが、子どもたちからも他のメニューを求める声が出ている。

規模を拡大していくのは難しい面があるため、まずは確実に継続していくことが目標。現在は塩釜市の助成金があるが、それが出なくなったとしても継続していけるようなシステム作りも視野に入れている。地名度は上がってきた中、こども食堂を必要としている子どもはまだまだいる。そうした子どもを取り残さないよう、クラブではPRの仕方も含めて開催の仕方を模索している最中だ。

2019.10更新(取材・動画/井原一樹 写真/関根則夫)