取材リポート 木工と竹細工の
教室で講師を担当

木工と竹細工の教室で講師を担当

7月23日と24日、高鍋町立高鍋東小学校でサマースクールが開かれた。これは学校が地域の人と協力して夏休みに開催している体験学習で、小学校4年生〜6年生を対象としている。今年は料理教室やボルダリング教室など11の教室が設けられた。

高鍋舞鶴ライオンズクラブ(那須日出夫会長/25人)はその中で木工教室と竹細工教室を担当している。木工教室では本棚を製作。竹細工教室では竹とんぼと水鉄砲を作っている。それぞれクラブ・メンバーが講師として参加。材料を調達し、子どもたちが時間内に作れるように加工するところから実際に教えるところまで担当する。クラブがサマースクールで講師を務めるのは今年で9年目だ。

体験教室でクラブが意識していることは、本棚や水鉄砲をただ作るだけで終わらせてしまうのではなく、関連する知識も教えることだ。

宮崎県はスギの丸太生産量が28年連続で日本一である。特に日南市を中心に生産されている飫肥杉(おびすぎ)は水やシロアリに強い性質を持っており、近年では東アジアを中心に輸出もされている。

しかし、こうしたことを知らない子どもも多い。地元の誇れる産業について知ってもらう機会にしようと、木工教室の前にはこれらの話をしている。木から木材を切り出す方法や、どうして年輪が出来るのか、教室で使用する木材は60年、70年前の人が植えた木であることも解説。物を作るだけでなく、地域を支える産業に興味を持ってもらおうとしている。

また、竹細工教室では竹とんぼがなぜ飛ぶのか、水鉄砲はどうして水を勢いよく発射出来るのか、を解説。自分たちが作っている物の仕組みを理解しながら作業してもらっている。揚力や圧縮力、反発力について、授業で習うよりも実物を提示して説明された方が理解しやすい。クラブでは、これを機に科学に興味を持ち、知識を深めてもらえれば、と考えている。

木工教室では電動糸ノコギリや釘と金づちなどを、竹細工教室ではナイフなどを使う。けがをする可能性もある道具だが、それを使うのも大事な経験。もちろんけがのないように目を光らせているが、あまり口出しをせず、子どもたちには可能な限り自力で作ってもらうようにしている。こうして苦労して作れば、物に愛着がわく。そこから物を大切にする心も育っていく。

竹細工教室では作った玩具で実際に遊ぶ。遊びも立派な文化であり、それを含めて伝えていきたいという思いがある。水鉄砲作りをした24日は最高気温が34度。水鉄砲での撃ち合いにはおあつらえ向きの日だ。作り終えた子どもたちは早速水着に着替えて駆け出していく。水着を用意していないライオンズクラブのメンバーや先生に向かっても撃ってしまい、怒られるほど大はしゃぎだ。

以前はサマースクールの日程が3日間だったため、竹を割ったり木を切ったりするところから子どもたちと一緒に作業していた。しかし今は2日間。スクールの時間内に終わるようにメンバーで材料を加工、準備をしておく。また、どれだけ熱心に教えても、途中で飽きてしまう子もいる。こうした子のモチベーションを上げて、完成まで楽しんで参加出来るようにするのもメンバーの仕事だ。実際、スクールの最中にはメンバーが声を掛け、時には一緒に遊ぶなど、良い雰囲気を作ろうとしている姿が散見された。

作業の内容は毎年ほぼ同じだが、事業が自己満足になってしまっては元も子もないので、毎回試行錯誤しながら教えているという。こうしたクラブ・メンバーの努力は子どもたちにもしっかりと届いているようで、町のお祭りで「先生!」と声を掛けてもらったメンバーもいる。

クラブでは今後もこの事業を継続していく予定だ。しかし同時にこの活動に賛同してくれる人や団体を探し、ゆくゆくは誰かに引き継いでもらうことも考えている。そうすれば、クラブとしてまた新たなことに挑戦出来るからだ。こうして新たな事業を立ち上げ、その基礎を作り、他の人たちに引き継ぐ。そのサイクルを作っていくことが出来れば、助けを必要としている、より多くの人たちに奉仕の手を差し伸べることが出来る。

2019.09更新(取材・動画/井原一樹 写真/関根則夫)