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ライオンズクラブ後援の
児童合唱団指導者として
初村則子(静岡県・浜松ひかりLC)
浜松ライオネット児童合唱団は1981年、浜松市内にあった六つのライオンズクラブの後援で誕生しました。「ライオネット」という名前は「ライオンの子」という意味です。以来、ライオンズクラブがずっと変わらずに後援してくださり、現在は市内8ライオンズクラブが後援会組織の母体となり、理事長、副理事長、理事などもライオンズクラブのメンバーが務めてくださっています。この他、ライオンズのメンバーが経営する企業が法人会員として、またメンバー自身や団員の保護者が個人会員となって、合唱団を支えてくださっています。
初代理事長の故・宮澤廣士さん(浜松ホスト ライオンズクラブ)は当時、浜松交響楽団の理事長もされていて、音楽に造詣が深い方だったんですが、他県で開催されたライオンズクラブの大会に参加した際、子どもたちの合唱団が出演し、その演奏を聴いたことが、浜松ライオネット児童合唱団を作るきっかけになったそうです。浜松はヤマハ、カワイ、ローランドを始めとする世界的な楽器メーカーが集中し、古くから「楽器の街」と呼ばれていました。宮澤さんが理事長を務めていた浜松交響楽団は、そんな「楽器の街」から「音楽の街」へという願いから、浜松青年会議所の呼び掛けで誕生したんですが、浜松ライオネット児童合唱団も、それと同じような思いから、市内のライオンズクラブの間で創設構想が持ち上がりました。
現理事長で初代事務局長を務めた久保田進吾さん(浜松南ライオンズクラブ)から、
「ライオネット合唱団は市内ライオンズクラブの賛同を得て、団員130人を集めて創設されました。最初の演奏会で聴いた子どもたちの澄んだ歌声に胸が熱くなったのを覚えています」
と、創設時の話を聞かせて頂いたことがあります。合唱団の理事長は初代の宮澤さんと4代目の久保田さんの間も、故・大貫英一さん(2代目/浜松ホスト ライオンズクラブ)、斉藤守さん(3代目/浜松葵ライオンズクラブ)と、代々ライオンズクラブの方が務めてくれています。
私は87年から合唱団に関わらせて頂いています。合唱団の創設に関わられた故・田村慎一さん(浜松東ライオンズクラブ)からお誘い頂き、子どもも合唱も好きでしたので、喜んでその申し出をお受けしました。子どもたちがとてもかわいいのはもちろんのこと、良きスタッフに恵まれ、ライオンズクラブや保護者の皆様の温かさに支えられて、いつの間にか30年が過ぎました。
浜松ライオネット児童合唱団には、創設当初に定められた団の目標があります。それは、
「美しい心で合唱に励みます」
「楽しい合唱で仲良しになります」
「正しいマナーで和を広げます」
という三つです。
合唱で歌が上手になるだけではなく、合唱を通して子どもたちがすくすくと成長していくことを目指しています。合唱の練習は毎週日曜日に行っていますが、毎回この誓いの言葉を唱和してから練習を始めます。これをベースとして、子どもたちは代々の先輩の行動を見て学び、例えば高校生が園児や小学校低学年の子どもたちの面倒を見るなど、年齢を超えた仲の良さが、この合唱団の特長となっています。
もう一つ、ライオンズクラブが後援していることで恵まれているのが、発表の場です。普通の児童合唱団に比べ、外部での演奏体験が非常に多いんです。ライオンズクラブの例会などに招かれ、皆さんの前で歌う機会を得ています。特にクリスマス・シーズンにはライオンズクラブを始めあちこちからお声掛け頂き、毎日のようにコンサートをしています。
私が所属している浜松ひかりライオンズクラブでは毎年「ひかりチャリティー・コンサート」を開催していますが、これにも出演させてもらっています。これは浜松ゆかりの音楽家によるコンサートで、収益の一部をアイバンクや日本盲導犬協会に寄付したり、被災地のライオンズクラブなどを通じて復興支援金をお届けしたりしています。プロの音楽家と一緒のステージに立つことは、子どもたちにとって大きな刺激になっています。
また、創設に関わった方たちは当初から、海外で公演をするような合唱団を作ろうと考えておられたようで、私が指導者として加わった半年後に初の海外公演をアメリカで行いました。当時はまだ児童合唱団が海外で公演することが珍しい時代でしたが、これもライオンズの方が、アメリカの知人を通じてロサンゼルスの「二世ウィーク日本祭」に出演しないかとの話を持って来られたのがきっかけでした。
当時、団員は110人いたんですが、アメリカ公演には50人が参加し、ロサンゼルスの日系会館で「二世ウィークコンサート」を開きました。この他にも、ロサンゼルスの老人ホームを訪問して歌を披露したり、サンフランシスコにあったトヨタとゼネラルモータースの合弁工場でコンサートを開いたりして、1週間のコンサートツアーを実施しました。
その後も、イタリア、オーストラリア、オーストリア、スイス、チェコ、ドイツ、ポーランド、そして昨年の台湾と、何度も海外公演を経験しています。合唱は言葉を伴う音楽ですが、子どもたちに言葉の壁はありません。人間形成にとって大変貴重な経験となるため、団員として所属している間に一度は海外公演に連れて行ってあげたいと思っています。そのため、5年に1回ぐらいを目標に公演をしています。台北公演の際には、現地のライオンズクラブの方とも交流させて頂くなど、ライオンズクラブが国際組織であることを実感致しました。
合唱団を指導していて一番うれしいのは、子どもたちが生き生きしている姿を見ることです。子どもたちの力は本当にすごいんです。子どもはみんな天才だと思います。目標に向かうと力が何倍にも発揮され、本番が一番良い演奏だったということがよくあります。子どもたちが充実した笑顔で演奏してくれたら最高ですね。
浜松ライオネット児童合唱団は近々、創設40周年を迎えます。2020年4月5日にはその記念コンサートを行いますが、現在オリジナルの曲を作詩家と作曲家に委嘱しており、その場で発表する予定です。これからも美しい心、楽しい合唱、正しいマナーの三つの目標の下、子どもたちの笑顔を引き出せるようがんばっていきたいと思います。
浜松ライオネット児童合唱団公式サイト:http://www.lionet.cc/
2019.09更新(取材・構成/鈴木秀晃)
▼「ものがたりのキセキ」2016年7月17日(アクトシティ浜松 中ホール)
合唱/浜松ライオネット児童合唱団 指揮/初村則子 伴奏/稲垣英子