取材リポート 街道を彩るヤマザクラ並木
毎月清掃活動を実施

街道を彩るヤマザクラ並木 毎月清掃活動を実施

鹿児島県曽於(そお)郡大崎町と霧島市財部(たからべ)町をつなぐ曽於広域農道は全長47km。鹿児島県内で最も距離が長い農道としても知られ、「そお街道」とも呼ばれている。全国の農道の約6割が幅員4m未満であるが、この曽於広域農道は7.5mほどある。国道10号線と県道2号線をつないでいることもあり、交通量も多く、「農道」という言葉から想像されるものよりもはるかに立派な道路である。

この曽於広域農道には10kmにわたってヤマザクラが植えられている。これは、鹿児島県・財部ライオンズクラブ(前畑浩一会長/22人)が2000年から03年にかけて植樹したものだ。その間、年300本〜350本を植樹しており、合計約1000本のヤマザクラが財部の春に花を添えている。

ただ植樹をして終わり、というのでは単なる自己満足になってしまう。そこで財部ライオンズクラブでは毎月、2回の例会のうち1回をヤマザクラの維持管理と周囲の清掃に充てている。クラブが結成されたのが00年2月23日であるから、約20年間、毎月実施していることになる。

ヤマザクラは広範囲に植わっているため、それぞれの場所で生育速度に差がある。地面が赤土の場所では成長が早い。シラス台地に植わっているものはなかなか育たない上に、根が張りにくく、植えても倒れてしまうものが多かった。そうした木にはロープを張るなど補強をして育てている。このように場所によって管理の仕方が変わるのがなかなか大変だ。

しかし、最初は細かった木々が徐々に育っていくのを感じられるのも、毎月実施しているからこそ。植樹から5年ほどはなかなか花が咲かなかったというが、今では満開になる木も少なくない。それもこれもクラブで毎月丁寧に手入れをしているからだろう。

ヤマザクラが成長するにつれて、新たな問題も起きてきた。曽於広域農道は前述の通り、交通量が多い。バスやトラックといった大型車両も多く通る道である。成長したヤマザクラの枝が道路にまで伸び、車高の高い車に当たるようになってきてしまった。そこでクラブでは14年頃から定期的に剪定も行っている。

今年5月の清掃日は18日。それまで春らしい陽気が続いていた鹿児島県だったが、この日は朝からあいにくの雨。傘がなければすぐにずぶ濡れになってしまうような天気だったが、メンバーは集まって清掃をする。10kmにわたって植樹しているため、一度で全部を清掃することは不可能だ。毎月場所を変えて清掃することになる。

初夏から夏にかけての時期はカズラがヤマザクラに巻きつき、木を枯らしてしまう。そのため、絡んでいるつるを鎌やサバイバルナイフで切っていくことが大切だ。この日もメンバーはびしょ濡れになりながら、木々に絡まっているつるを一つひとつ切っていた。同時にゴミも拾うが、人目につかないところでは多くのゴミが捨てられている。そうしたものを見る度に悲しい気持ちになるとメンバーは語る。

だが、悪いことばかりではない。例えば車道に伸びてしまい、伐採したヤマザクラの枝を地域の小学校に寄贈し、入学式などで飾ってもらったり、ヤマザクラの葉を桜餅の包みに使いたいという申し出に応えたりと、地域の人とつながるきっかけともなっている。

写真提供:財部ライオンズクラブ

植樹から約20年が経ち、枯れてしまう木もある。だが、クラブでは補植を続け、ヤマザクラの咲く道を維持している。11月に行われる曽於市民祭ではクラブで休耕田を借り受けて生産したもち米から作る餅の実演販売を実施。こうして補植のための資金を獲得している。

開花時期が一定ではないところがヤマザクラの難しいところだが、いずれは曽於広域農道を舞台にクラブ主催のイベントを展開出来ないかと考えている。いつか、このヤマザクラ並木が財部の観光名所となるように。クラブの挑戦は続く。

2019.06更新(取材・動画/井原一樹 写真/関根則夫)