取材リポート こどもの国の
ライオンの池清掃

こどもの国のライオンの池清掃

甲府駅から車で10分ほど行った所にある標高423mの愛宕山。甲府の市街地を見下ろす山には、山梨県立博物館と、県立愛宕山こどもの国という公園施設がある。

こどもの国には山腹の自然の地形を利用したアスレチックがたくさん作られており、甲府市内の小学校などでは遠足先の定番になっている。周辺住民の朝の散歩コースになっており、毎日集まってラジオ体操をしている人たちもいる。週末には家族連れが多く訪れるなど、甲府市民なら誰もが一度は行ったことがあると言っても過言ではない。

そんな愛宕山こどもの国の一角にライオンの池がある。これは、1970年に山梨県内のライオンズクラブで構成されるオール山梨の事業として寄贈したものだ。翌年7月に甲府ライオンズクラブから勝俣進地区ガバナーが就任することが決まっており、甲府ライオンズクラブが中心となって寄贈した。

ライオンの池はプールのような施設だ。3月〜6月、9月、10月の土日祝日にはパワーパドラー(子ども用の手漕ぎボート)が楽しめ、暑さのピークである7月、8月には、子どもたちが水遊びをする場所として開放されている。水深が20cmほどなので、小さい子や泳げない子も無理なく遊べる場所になっている。秋以降には水を抜くため、冷たい水に子どもが落ちてしまうようなこともない。近くにはベンチが設置されており、保護者は日陰で休むことが出来る。夏には多くの家族連れが訪れ、テレビなどで取り上げられることもある人気の場所だ。

寄贈してから48年が経つライオンの池。今も奇麗に使われているのは、甲府ライオンズクラブ(小穴昭彦会長/52人)が毎年10月に、ライオンの池と周辺の清掃を実施してきたからだ。

そして、今年も清掃の季節がやってきた。

10月12日、朝6時。まだ周囲が暗い中、愛宕山の駐車場にはライオンズのメンバーが運転する車が続々と入ってくる。毎年、ライオンの池清掃は朝6時スタートの早朝事業として実施しているからだ。この日はあいにくの雨。それでもそれぞれが道具を持参してやってきた。

「雨に負けず、がんばりましょう」

その言葉を合図にメンバーは作業を始める。大量の落ち葉をかき集め、袋に入れていく。
ライオンの池が寄贈された48年前に在籍していたメンバーはもう誰もいない。だが、先輩が連綿と続けてきた事業に対して、メンバーの意識は高い。年に一度ということもあるが、平日の朝6時から清掃をするのはなかなか大変だ。しかも、甲府ライオンズクラブは近年、メンバーの若返りを進めており、ほぼ全員が現役で仕事を抱えている。それでも、多くのメンバーが集まり、清掃をする。

今回の清掃で集まった落ち葉はゴミ袋30袋分。今年はこどもの国の方で、ライオンの池の一部を区切って、落ち葉のプールにする計画がある。今回集めた落ち葉を乾かして使用する予定だ。昨年、試験的に実施したところ、大好評だったと言う。

終わった後は地元の方が行っているラジオ体操の輪に加わり、場所を移して例会を行うのが恒例だ。

毎年、ライオンの池を清掃することで、メンバーが過去にこの池を寄贈したという事実を振り返ることが出来るのも良いと小穴会長は語る。先輩方の思いを伝えていく良い機会であり、今後、新しく入ってくるメンバーにもクラブの歴史の一端を伝える事業となっている。

若いメンバーの中には、かつてライオンの池で遊んだことがある人もおり、小さな子どもがいるメンバーはここで子どもを遊ばせることもある。市民に人気のスポットにライオンズが関わっていることを誇りに思える清掃活動だ。

多くの人が訪れ、笑顔になっているのを見ると、先輩たちがどういう思いで寄贈をしたのか、それが伝わってくる。甲府ライオンズクラブでは、今後もこの清掃事業を継続し、更に、同じように人を笑顔にする、そんな事業を実施していきたいと考えている。

2018.11更新(取材・動画/井原一樹 写真/関根則夫)