取材リポート
世代を超えたチームで
勝利を目指せ!
石川県・金沢中央ライオンズクラブ
#人道支援
人工芝のマットには碁盤の目。そこに並ぶのは碁石ではなく白と黒のボールだ。金沢市立戸板小学校のアリーナで行われているのは「囲碁ボール」。9月9日の日曜日、金沢中央ライオンズクラブ(福田祐一会長/92人)主催の戸板地区ニュースポーツ大会で、地元小学校の児童や高齢者らが共にプレーした。
金沢市の戸板地区は、JR金沢駅から西へ約1kmの住宅地。金沢中央ライオンズクラブは8年前から、この地区の公民館と共に「ニュースポーツ」の大会を開催している。ニュースポーツとは、競うことよりも楽しむことに重点を置いた心にも身体にも優しい生涯スポーツのこと。その趣旨が、子どもから高齢者まで幅広く楽しめる取り組みを模索していたクラブの方針にうまく合致し、大会開催につながった。
数あるニュースポーツ競技の中でも、誰もが参加しやすいということで大会競技に選んだのは、グラウンドゴルフ。ゴルフのようにボールをクラブで打ち、ホールポストにホールインするまでの打数を競う競技だ。毎年、小学校の校庭を使ってこの競技で大会を行ってきたが、雨に見舞われることもある。金沢は「弁当忘れても傘忘れるな」と言われるほど雨の多い町。だから、雨天時でも競技が出来るように、あらかじめ室内競技も用意しておき、天候にかかわらず大会を行える態勢を整えている。そして、今年の大会当日もあいにくの雨。前日のうちにグラウンドゴルフを諦め、室内で楽しめる「囲碁ボール」を行うことに決めた。
縦5m、横2mの人工芝マットには、縦横それぞれ7本の線からなる碁盤の目が描かれ、線が交差する49の目はボールがおさまりやすいようにくぼんでいる。そのくぼみをめがけてスティックでボールを打ち、並んだボールで得点を競い合う。 ゲートボールに囲碁の面白さをプラスし、年齢や性別、体力を問わず誰もが簡単に楽しめるニュースポーツ、それが囲碁ボールだ。
この日参加した人の多くが未経験者とあって、開会式後のルール説明では、子どもも大人も皆、この未知のスポーツの説明に聞き入った。黒、白のチームが交互にボールを打ち、それぞれ10個を打ち終わったところで点数を集計。それを3度繰り返して勝敗を決する。くぼみにボールが収まると「ポイント得点」が加算されるのだが、縦横斜めのいずれかに3個から5個のボールを並べると「ライン得点」と呼ばれる得点になる。いくらポイント得点を稼いでも、勝敗はこのライン得点で決するところがこの競技の醍醐味だ。
ニュースポーツ大会の最大の魅力は、児童と高齢者、そしてライオンズのメンバーが同じチームでプレーし、ゲームの楽しさを分かち合える点にある。戸板地区では、児童向け、高齢者向けの活動はそれぞれあるが、異なる世代が一緒になって何かをする活動はほとんどない。それだけに、年に一度のこの大会は地区の人たちに喜ばれているという。
ライオンズの奉仕活動では、メンバーが場を提供して黒子にまわるケースも多いが、ニュースポーツ大会はさにあらず。この点に関して福田会長は次のように話している。
「ライオンズクラブが何をする団体なのか、市民に知られていないことが多い。大会でメンバーと一緒に競技に参加した児童と高齢者の皆さんには、ライオンズが地域でボランティア活動をしていることを理解してもらえたと思います」
金沢には13のライオンズクラブがあるが、事業数、会員数共に最も多いのが同クラブ。ライオンズのロゴ入りジャンパーを身にまとって市内各所でさまざまな活動を行っているので、大会に参加した人たちがその姿を目にする機会も多いことだろう。
参加者はこの日会場に来てから初めてチームメートとなったわけだが、ゲームが進むにつれて会話が増え、少しずつチームワークが芽生えていく。小学生が「おばあちゃん、ここ狙って」と声を掛けることもあれば、おじいさんやおばあさん、ライオンズ・メンバーが小学生のミスショットを挽回することもある。
「短い時間とはいえ、結構盛り上がりますよ。あまりに一所懸命になり過ぎて、主催者であるクラブのメンバーがグラウンドゴルフの個人戦で優勝してしまったこともありました」(福田会長)
上位3チームへの金銀銅のメダルや、副賞の図書券、その他に飲み物や昼食の弁当などの準備はライオンズクラブが手配するが、当日ライオンズ・メンバーがプレーヤーとして参加出来るのは、共催として関わる公民館や戸板校区少年連盟が全面的に協力してくれるためだ。
あいにくの雨で、グラウンドゴルフが囲碁ボールに変更となったが、この場の盛り上がりを見ている限り、ニュースポーツで地域活性化という目的は大いに達成されたようだ。
2018.10更新(取材・動画/砂山幹博 写真/宮坂恵津子)