取材リポート
親子で
ペットボトルロケット製作
栃木県・葛生ライオンズクラブ
#青少年支援
佐野市は東京から約80km、関東平野の北端にあり四季を通じて温暖な気候に恵まれている。が、国内の最高気温が更新された7月23日には栃木県でも各地で気温が上昇。佐野市では午後1時48分に県内観測史上最高の39.2度を記録した。その前日、22日もまた、暑い日だった。
この日、旧葛生町を中心として活動している葛生ライオンズクラブ(萱原元会長/44人)の親子で作るペットボトル製作打ち上げ大会が開催された。場所は葛生あくとプラザ。小ホールでペットボトルロケットを作成し、隣の河川敷で飛ばすのが毎年の恒例になっている。
担当委員長を中心に、メンバーが準備から片付けまで実施するこの事業。毎回、大変なことが多いが、参加者の評判はすこぶる良い。当日は佐野市の旧葛生町、旧田沼町の親子を中心に県内外から約20家族が集まった。リピーターも多い。ペットボトルロケットは飛ばすのが難しいため、昨年うまく飛ばせなかった悔しさを晴らしに来る人もいるという。
ペットボトルロケット製作打ち上げ大会は、親子で何かを作る機会が少ないのではないかとの思いから始めた。当初は5月に実施していたが、地域のイベントと重なることもあり、現在は夏休みに入った7月に実施している。当日、メンバーは大忙し。河川敷のロケット発射台の準備をするグループと、館内でロケット製作に付くグループとに分かれる。炎天下での活動が多いのと、熱中症対策のため、塩分が入ったタブレットを持って作業に臨む。これに加えて、スポーツドリンクも用意。メンバーも、参加者も、熱中症にならないように気を付けている。
時間が掛かるのが、発射台の準備だ。大事に保管しているとは言え、使用するのは1年ぶり。どうしても不具合が出てしまう。微妙な調整の狂いで飛び方が大きく変わってしまう繊細な面もあり、試行錯誤を繰り返す。
クラブのメンバーが中心となって実施している事業だが、地元の団体の協力も不可欠だ。佐野市で活動しており、メンバーの家族も参加している子育て支援サークル「エクボの会」には昼食のカレー作りをお願いしている。また、葛生の高校生が作る葛生ジュニアリーダースクラブにも受付や飛行距離の記録係などを手伝ってもらっている。地域の団体との交流の良い機会にもなっている大会だ。
クラブが気を付けているのは、ロケット作りに介入し過ぎないこと。どうしても先の行程に進めなくなってしまった時や、作り方を間違えてしまったり、足りないものがあったりする場合を除いて、親子で作り上げてもらうことをモットーとしている。ロケットのデザインコンテストも実施しているため、家族それぞれ、装飾に独自の工夫を施している。一所懸命作り上げた自分たちのロケット。愛着も自然と湧いてくる。
エクボの会で作っってくれたカレーを食べたら、いよいよ打ち上げ。皆意気揚々と河川敷に向かう。
ペットボトルロケットは、自転車の空気入れで空気を注入して飛ばす。空気を入れるのはお父さんたち。お母さんだけが参加している家族など、空気注入が大変な場合はメンバーが代わってくれる。これがなかなか重労働。暑い中、空気を入れていくが、ロケットの作りが甘かったり、空気入れの調子が悪かったりすると、余計に時間が掛かる。
一方、ロケットの回収と飛距離の測定も大変な作業だ。発射台から離れた所に立ったメンバーは、ロケットが発射されると落下地点に向かう。また、メンバーの1人はウェットスーツを着込み、川に落ちたロケットを回収している。飛んでいく方向は一定ではないため、体力に加えて集中力も必要だ。
大変な事業だが、ロケットが飛んだ時の参加者の表情を見ると、その苦労も報われる。子どもだけでなく、大人も一緒に目を輝かせ、他人のロケットでも飛べば歓声が上がる。飛距離が100mを超えた時などはどよめく声が巻き起こった。
クラブでは今後、正式な記録を付けられるようにすることも視野に入れている。また、年々暑さが厳しくなっているため、時期を再度変更することも検討している。どれだけ楽しいイベントでも、参加者やメンバーに何かがあってはいけないからだ。
2018.09更新(取材・動画/井原一樹 写真/関根則夫)