取材リポート 県立盲学校の体育祭を支援

県立盲学校の体育祭を支援

県内唯一の盲学校である香川県立盲学校は、高松市の中心部にある。1910年に香川県盲唖教育会という名で開校し、24年に県の管轄下になった。その後、48年に県立盲学校と県立聾学校に分かれたものだ。幼稚部から高等部までがあり、男女共学。通学困難な生徒のために寄宿舎もある。

5月19日、その香川県立盲学校で、生徒たちが毎年楽しみにしている体育祭が行われた。体育祭では一般的な種目に加えて、盲学校ならではの種目も多く実施される。

選手宣誓の後はラジオ体操。ガイドアナウンスが英語で流れるユニークなスタイルに、観客の雰囲気も一気に和んでいた。

体育祭と言えば徒競走が花形競技。だが、盲学校では視力の関係で真っすぐ走ることが難しい子がほとんど。そのため、複数人が同時に走る徒競走ではなく、一人ひとりが走り、タイムを競う形で行われた。視力の程度は生徒によって違うため、実際に走ったタイムと設定された目標タイムとを比較して、その差が小さいほど高い得点が入るシステムになっている。競技名は音源走・直線走。最大の特徴は、ゴールの後ろから先生が走る生徒を呼んだり、音楽を流したりしてゴールの位置が分かるようにしていることだ。そのため競技前には「ゴールの位置が分からなくなるので大きな音は立てないでください」というアナウンスが流れる。静寂の中、ピストルの音が響き、先生の声だけが聞こえてくる。だが、そんな静かなグラウンドも、生徒がゴールすると一気に盛り上がる。

次のTHE盲学校レースでは盲学校で学んだことや、視覚障害者ならではの種目をリレー形式で実施。白杖を使っての障害物走、鍼治療に必要な片手挿管、視覚障害の方のための野球であるグランドソフトボールのピッチング、マラソンなどのコースから外れないようにする伴走、点字の早読みなど、保護者や来賓にとっては、盲学校を取り巻く日常が垣間見えるような内容になっていた。

うたづライオンズクラブ(樋口隆仁会長/42人)は結成時のメンバーの子どもが在学していたこともあり、結成当初から香川県立盲学校と縁があった。文化祭や卒業式などに訪問していたが、その中でも注目したのが、盲学校の体育祭だ。

盲学校の体育祭は前述の通り、さまざまな種目を実施しており、道具も多い。それだけ準備に手間がかかるが、手伝える生徒は少ない。そのため、競技と競技の間に準備をする人員が必要だったのだ。そこでクラブで手伝うこととなった。他にも一般参加競技に出て場を盛り上げるのもクラブの役目。当初から出場しており、保護者以外の参加者として、競技に新しい風を吹かせていた。

うたづライオンズクラブが体育祭を手伝うようになり、徐々に周囲にも盲学校の体育祭の準備の大変さが知られていった。そして、現在はさまざまな団体が一緒に準備を手伝っている。こうして外部の人が多く来るようになったことで、種目にも変化が出てきた。前述のTHE盲学校レースのように盲学校に普段なじみのない人に視覚障害について知ってもらえる種目など、年を重ねるごとに変化している。

観客が多いと子どもたちのやる気も上がるもの。全力で声援に応える子どもたちの表情はどんどん豊かになっていく。それに応じて観客のボルテージも上がっていくのだ。最後のリレーもみんなが参加出来るように、大玉ころがしや二人三脚が用意され、大盛り上がり。本気でうれしがり、悔しがる子どもたちに観客からは大きな拍手が送られていた。

クラブでは、今後もこの事業を継続していきたいと考えている。体育祭に参加することで、新しいメンバーも意識が変わると言う。普段通っている道にある学校が、実は盲学校であること。そこで子どもたちが個性豊かに、元気良く学んでいること。こうしたことを実体験を通して学ぶことで、メンバーにとっての世界が広がるのだ。まだ具体的な計画は立っていないが、例えばLCIFの交付金を使って国内の盲学校などに支援をする事業があっても良いのではないかという意見もクラブでは出始めている。懸命に競技に取り組む子どもたちの姿を見て、クラブのメンバーは、奉仕への思いを更に強めている。

2018.07更新(取材・動画/井原一樹 写真/関根則夫)