トピックス
西日本豪雨被災地
に対する支援活動
日本ライオンズ
広島、岡山、愛媛の3県を始め、未曾有の豪雨災害に見舞われた西日本。気象庁は7月6日夕方に長崎、福岡、佐賀の3県に、続いて同日深夜までに広島、岡山、鳥取、京都、兵庫、翌7日には岐阜、更に8日に高知、愛媛と、実に11府県に大雨特別警報を発表。「これまでに経験したことのないような大雨」「重大な危険が差し迫った異常事態」「重大な災害が既に発生していてもおかしくない状態」と、繰り返し警戒を呼び掛けた。
しかも西日本豪雨では、大雨による増水や浸水ばかりではなく、山の斜面崩壊による土石流や、河川の堤防決壊による洪水、貯水の限界に達したダムからの放流量の増加による下流域の氾濫など、あらゆるタイプの災害が広範囲で多発。警察庁のまとめでは、亡くなられた方は14府県で223人に上り(7月19日現在)、平成に入ってから最悪の豪雨災害となってしまった。
今回の災害に対し、ライオンズクラブではさまざまなレベルにおいて対応を開始。これまで、多くの災害被災地の復興支援に取り組んでいるライオンズクラブ国際財団(LCIF)では、7月9日の時点でナレシュ・アガワル理事長が、被災した336複合地区に対する大規模災害交付金(MCAT)30万ドル(約3300万円)の拠出を決定した。またタイのライオンズがいち早く支援を表明し、11日にLCIFを通して7万ドルを寄付。日本では13日に開催された八複合地区ガバナー協議会議長連絡会議において、会員1人当たり1000円を集めLCIFを通して支援に充てることを申し合わせた。
議長連絡会議では併せて義援金や支援物資の送付先を一元化するため、336複合地区に対し早期に対策本部を設置することを依頼した。そのために会議終了後、同連絡会議世話人の識名安信337複合地区議長と、藤川清幸333複合地区議長の2人が岡山へ直行。夜遅くまで大谷博336複合地区元議長(岡山LC)や金礪毅336-B地区第2副地区ガバナー(岡山京山LC)らと意見を交換。翌14日には、今回の災害で特に被害が大きかった、岡山県倉敷市真備町を訪問した。
真備町は7日朝までに小田川と支流の末政川の堤防が決壊し広範囲で冠水。国土地理院の推定によると、浸水の深さは広い範囲において3~4m、最大5mに達したという。浸水面積は真備町の約4分の1とされるが、中心街の有井地区や官公庁が集まる箭田(やた)地区など、住宅や事業所が集中する地域が水に浸かっており、世帯数で見ると半数以上の4600戸が被災。市町村単位では最も多い50人の死亡が確認されている。
識名議長と藤川議長がまず訪問したのは、倉敷真備ライオンズクラブに所属する小野宗次336-B地区第1副地区ガバナーだった。小野副地区ガバナーの自宅兼事業所は真備町の有井地区にあり、隣には同じクラブの会員・諏訪光弘氏宅の敷地内に建つ倉敷真備ライオンズクラブの事務局がある。ここは末政川の堤防決壊現場から近く、しかも越流水の通り道に当たってしまい、真備の中でも特にひどい被害となってしまった。決壊現場は14日の時点でも修復が終わっておらず、議長2人が訪問した時は川からあふれ出す水で周辺が冠水、クラブ事務局もまだ水没していた。
「6日の夜11時半ぐらいに、すさまじい爆発音と共に家が大きく揺れました。後で分かったのですが、我が家から3kmほど離れた、総社市下原地区のアルミ工場の爆発でした。あまりの衝撃に家の被害を確認したところ、1階の窓ガラスが爆風で割れており、その補修をしている時、大雨により家の周囲が冠水していることに気付きました。そこで大事なものを2階に移し、自分たちは高台に避難しました。それがたぶん夜中の12時半ぐらいだったと思います。その後1時半ぐらいに近くの堤防が決壊したらしく、この辺は2階まで水に浸かることになってしまいました。避難が遅れた人のうち、2階の天井を破って屋根に上がった人は助かっていますが、それが出来なかった人は亡くなりました。我が家はご覧の通り1階が完全に破壊されているんですが、決壊現場近くのお宅が2軒流されており、それらの家屋がぶつかって1階部分が何も無くなってしまったんだろうと思います。隣にあるクラブの事務局も同じです」
と、小野第1副地区ガバナーは当時の様子を話してくれた。
倉敷市内のライオンズクラブ(336-B地区5リジョン)は小野副地区ガバナーを中心に、有井地区の山陽道沿いにある諏訪氏所有の建物を整備し、対策本部を設置。会員が交代で本部に詰め、支援の受け入れ窓口として被災者のニーズを探り、それに対応した支援活動を実施していくと共に、ボランティアの休息所としても利用してもらうことにしている。
「倉敷真備ライオンズクラブは現在27人の会員がおり、真備町に住んでいる23人全員が被災しました。しかし、ライオンズクラブの中で、この町について一番詳しいのは私たちですし人脈もある。自分たちが被災している中で、全ての時間を町の復旧、復興や被災者への支援に注ぐことは出来ませんが、市内の他のクラブの協力を仰ぎながら、地元クラブという地の利を生かした活動をしていきたいと思っています」(小野第1副地区ガバナー)
この5リジョン対策本部の近くには、岡山ライオンズクラブと岡山みらいライオンズクラブが、被災地支援活動の拠点としてプレハブの事務所を設置。仮設トイレ4基を配備すると共に、支援物資の集積所として使い、主に在宅被災者への支援に絞り、活動を展開していくことを決めている。2人の議長はこちらも表敬訪問、汚泥の除去などの手伝いも行った。
その後、藤川議長はこの日午後、岡山市で開催された336-B地区の会議に出席。被災地でもある総社市在住の太田健一336複合地区議長と共に、議長連絡会議としての支援策の説明などを行った。一方の識名議長は、335複合地区の柿原勝彦議長及び坂本惠市アラート委員長と合流し、倉敷市玉島の中国職業能力開発大学校内に設置された倉敷市災害ボランティアセンターを視察。今後の支援方針などについて検討した。
倉敷市災害ボランティアセンターは、倉敷市社会福祉協議会により設営されており、同協議会の元会長で、倉敷西ライオンズクラブの渡部雅文元336複合地区議長も関係していることから、連携しての支援活動が期待される。倉敷市災害ボランティアセンターは、被災地の真備町にサテライトを2カ所設けており、1カ所は倉敷市役所真備支所に、もう1カ所はライオンズの二つの支援拠点の並びにあり、今後は現場での連携も必要となってくるだろう。
また17日には336複合地区ガバナー協議会、18日にはLCIF西日本豪雨災害支援対策本部が開催され、日本ライオンズとしての被災地支援方針が話し合われた。現在、既にそれぞれのクラブが自主的に街頭募金を実施したり、現地へ支援物資を運んだり、また個人的に泥出しのボランティアに参加したりといった活動を展開しているが、今後、議長連絡会議を中心に組織としての支援活動が本格化していくことになる。
「今まで我々はさまざまな災害を経験し、ライオンズとしての支援活動を行う中で、情報集約の在り方や近隣のクラブがすぐに動ける体制作りなどが、被災地区や被災地で活動した会員から提言されてきました。しかし、それがなかなか浸透せず、地区やクラブによって温度差があるのが現状。これをきちんと実践出来るような組織作りをすることが必要であり、そのために今回、議長連絡会議を終えた足で被災地を訪問させて頂きました。西日本豪雨の被災地支援にはもちろん全力で取り組みますが、ここで得た教訓を今度こそ、全国レベルで共通認識として持つために生かしていきたいと考えています」(識名議長)
2018.07更新(取材・写真/鈴木秀晃)