取材リポート 春を感じる
茶道交流会を実施

春を感じる茶道交流会を実施

4月1日、佐賀県を代表する観光名所の一つである、佐賀城公園は満開の桜であふれていた。爽やかな春の陽気に誘われ、多くの家族連れや観光客が訪れる。この日、公園内の茶室「清恵庵」とその前の広場で佐賀ドリーム ライオンズクラブが主催する第14回児童・生徒との茶道交流会が実施された。裏千家の齋藤宗智先生の指導で、佐賀北高校の茶道部の部員も手伝いにきてくれる。例年、清恵庵内の薄茶席と野点席を設け、希望する子どもは野点の体験も可能だ。子どもが点てたお茶は保護者が味わう。毎年150〜200人ほどが来場する人気事業となっている。

佐賀ドリーム ライオンズクラブは、60歳以上のメンバーで構成する「シニアクラブ」として2003年に結成された。当初からクラブでは青少年を対象とした事業を大きなテーマとして扱おうと考えていた。その時に出てきたのが茶道交流会だ。当時、メンバーの中に元小学校校長の茶道師範がいたことがきっかけだった。こうして結成翌年に実施した初めての茶道交流会は大変だったが、成功に終わる。その直後、04年8月。佐賀城公園内に城の本丸御殿を忠実に復元した歴史博物館がオープンした。クラブでは記念イベントとしてこの茶道交流会を実施。好評を博した。

その後、茶道交流会は継続事業に移行。毎年、桜が満開になる3月末から4月初旬の開催としている。当初は小学生を対象とした事業にしようと考えていたが、この時期は先生の異動があるなど学校側が忙しいため、現在のスタイルになった。新聞などのメディアに働き掛けて宣伝するなど、人集めはなかなか大変だったが、結果として、ライオンズクラブ自体の知名度が上がるなど、思わぬ効果も生んでいる。また、メンバーの石井二三夫さんが佐賀県佐賀市のボーイスカウトの役員をやっていることから、ライオンズの事業に合わせてイベントを実施。ボーイスカウトの子どもたちも茶道交流会に来てくれるようになった。

指導者の齋藤先生も毎回、積極的に参加してくれる。掛け軸など茶室内のしつらえに関しても茶道の大事な一部として思いを込めている。今回は「三級浪高魚化龍」の掛け軸を選んだ。これは、中国の故事をもとにした言葉。かつて黄河の氾濫対策として治水事業を行った男が失敗したが、男の息子が堰(せき)を作ることによって成功した。その後、堰を魚が登って行き、上まで登ることの出来た魚が龍と化したという話があり、端午の節句や、登竜門をテーマとした茶会で用いられる言葉である。今回は進級・卒業と新たな生活が始まる時期の開催のため、この言葉を選んだ。香を入れる香合も端午の節句を意識したカブトの形をしたものに。茶道を体験するのが初めての子どもたちは見落としがちな部分ではあるが、斎藤先生が脇に座り、分かりやすく意味を解説していた。

一方、クラブと先生が意識しているのは、堅苦しくならないこと。「茶道」と聞くと大人でも高尚なイメージを持ち、敷居が高く感じてしまう。しかし本来、茶道はお茶を通してコミュニケーションをとるためのもの。そこで茶道交流会ではお茶に気楽に触れられる機会として、ざっくばらんに楽しめる雰囲気作りを重視している。希望する子どもには自分でお茶を点ててもらい、それを保護者の方に飲んでもらう。こうした経験はすぐに効果が出るようなものではないが、大きくなった時、茶道や伝統文化に対して持つ印象が変わってくるだろう。

茶道交流会を重ねるにつれて、メンバーも先生からさまざまなことを学んできた。最初は初めての茶席運営にとまどうメンバーもいたが、今では主体的に動けるようになっている。湯を沸かしたり、受付をしたりといったことに加え、茶道の作法にかなったお運びや茶碗下げ、点て出し(水屋で茶を点てて運び出すこと)など、水屋の手伝いも少しずつ担当するようになってきた。先生の決めたテーマに沿って、その真意を伝えるようなお茶会にしようと一丸となって動いている。

2018.06更新(取材・動画/井原一樹 写真/関根則夫)