取材リポート 野外に連れ出して
共に楽しむ春の訪れ

野外に連れ出して共に楽しむ春の訪れ

長野県松本市の北東、四賀地区に春の訪れを告げる福寿草まつりが今年も開催された。例年3月初旬から春の彼岸頃までの期間(今年は3月10日から21日まで)、全国有数の群生地として知られる赤怒田福寿草公園で開かれる催しで、今年で26回目を数える。明科ライオンズクラブ(宮園幸男会長/34人)では期間中の一日、身体の不自由なお年寄りの車いすを押して園内を散策しながら、福寿草の花を鑑賞してもらう奉仕活動を継続している。今年は寒波などの影響で生育が半月ほど遅れたが、3月15日の活動当日には可憐な黄色い花びらを吹く風になびかせていた。

「元旦草(がんたんそう)」とも呼ばれ、昔から正月の床飾りに用いられてきた福寿草。花は日が照れば開き、陰れば閉じることを繰り返し、2〜3週間咲き続ける。江戸時代から栽培されていて多くの園芸品種があるが、赤怒田の福寿草は日本に自生する原種。北向きの約1.5ヘクタールの斜面に群生する約50万株からなる黄金色のじゅうたんは圧巻で、福寿草まつりの期間中は多くの人出でにぎわう。

明科ライオンズクラブは、1983年に特別養護老人ホーム四賀福寿荘が開所して以来、施設の掃除の他、月に2度ほど入居者のおしめなど洗濯物をたたむ取り組みを継続的に行ってきた。そんな中、施設の目と鼻の先に福寿草群生地があることに着目。普段外出の機会のほとんどない入居者に、屋外の新鮮な空気に触れ、春一番に咲く花を楽しんでもらう現在の事業を始めることにした。

福寿荘には短期の人も含めると120人が入所しており、この日は施設側が選んだ6人が福寿草まつりの会場を訪れた。施設の車で会場に到着すると、ライオンズのメンバーは車いすを降ろすのを手伝い、福寿草が近くで見られる場所まで平坦な小道をゆっくりと車いすを押していく。昨年は、雪をかき分けなくては福寿草が見られないほどの積雪だったが、今年は雪が全く残っておらず、たくさんの福寿草が出迎えてくれた。

「雪が多過ぎて花があまり見られない年もありましたが、今年はそんな心配もなく、晴天に恵まれる中、花を楽しんでもらうことが出来ました。もっとも、福寿草の場合は少しくらい雪が残っていた方が、力強さが感じられて風情があるんですがね」と、宮園会長は話す。

福寿草の開花時期はその年の天候によって前後にずれるため、活動日の選定はなかなか難しい。配慮しなくてはならないことは他にもある。一つはインフルエンザ。地域でインフルエンザが流行した場合は、活動を中止しなければならない。もう一つは、お年寄りに風邪を引かせないように注意すること。だから、車いすを押しながらなるべく声を掛けて、お年寄りの様子をよくうかがうようにしている。寒い時には、ひざかけをかけて「寒くないか?」と尋ねるが、中には「もういい」と音を上げるお年寄りも。そういう時は鑑賞を早めに切り上げて休憩所へと急ぐ。ストーブが完備された休憩所で過ごす時間も、お年寄りの楽しみの一つ。地元の食材や食料品などを並べた売店があり、ここで買い物をすることも楽しいひと時だ。ここでもメンバーはなるべくお年寄りに話し掛けて、外出を楽しんでもらっている。

「こうした場所に来るとよく知り合いに出くわして声を掛けられるのですが、ライオンズの活動を説明する度にやりがいを感じます。この活動は家族会員も参加しやすいという利点もあります。施設に関わる支援は先輩たちが35年間続けてきた取り組みですので、今後も続けていきたいと考えています」(宮園会長)

明科ライオンズクラブのある旧明科町は平成の大合併で安曇野市の一部となり、同じ東筑摩郡に属していた旧四賀村は松本市に編入されたが、その後もクラブは四賀福寿荘への支援を続けてきた。安曇野市への東の玄関口である明科のみならず旧東筑摩郡を拠点として、明科ライオンズクラブは地域の人たちに喜ばれる奉仕活動に取り組んでいる。

2018.05更新(取材・動画/砂山幹博 写真/宮坂恵津子)